令和5年 著作権法改正
江尻 一夫行政書士事務所
改正事項
① 著作物等の利用に関する新たな裁定制度の創設等
〇一定の手続を経て、使用料相当額を支払うことにより、著作権者等から申出があるまでの間、その著作物等を利用することが可能となる新たな裁定制度が導入された。(著作隣接権にも準用)
〇 文化庁長官の指定を受けた民間の窓口組織が手続事務を担う。
*窓口組織
①(補償金の受領)や著作権者等への支払といった補償金管理業務(補償金の供託)を行う「指定補償金管理機関」、②申請の受付や未管理公表著
作物等の該当性の確認、使用料相当額の算出といった確認等事務を行う「登録確認機関」の2種類。指定補償金管理機関と登録確認機関とを同一
の組織が兼ねることも認められている
新たに構築される著作権探索システムで検索の結果、著作権者不明(未管理公表著作物等 )⇒利用
者が申請窓口に申請⇒ 確定・決定(民間窓口組織)⇒利用者は著作権者判明するまで、窓口組織
に利用料支払い
改正月日 公布日から3年を超えない範囲で政令で定める日
② 立法・行政における著作物等の公衆送信等を可能とする措置
〇国会や役所の内部において、第三者の著作物を含む資料をメールやクラウドを利用して回覧したり、端末画面に表示し閲覧させたりするこ
とが許諾を得ずに可能となる。
* 現行法
立法・行政の目的のために内部資料として必要な著作物について、著作権者等の許諾を得ることなく複製(42条)や譲渡(47条の7)
を行うことを認めていますが、公衆送信等については認められていない。従前、立法や行政は「紙文化」でしたが、DX対応の推進が進む中、デ
ジタル・ネットワーク環境を活用した資料の授受等のニーズに対応。
改正月日 令和6年1月1日
③ 海賊版被害等の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直し
〇ライセンス機会の喪失による逸失利益の加算の計算方法
(販売等相応数量-特定数量)×権利者の単位数量当たりの利益の額 (現行法)
(譲渡等数量-販売等相応数量)+特定数量に応じたライセンス料相当額 (改正後)
「販売等相応数量」は、権利者の販売等の能力に応じた数量を、「特定数量」は、権利者が販売することができないとする事情に相当する数量。
〇ライセンス料相当額の考慮要素の明確化
現行法では侵害者に対するライセンスであるという事情を考慮できるかは明らかではなく、裁判実務においてもかかる事情が十分考慮されている
とは言い難い状況にありました。 そこで、本改正は、ライセンス料相当額の認定にあたって、かかる事情を考慮することができる旨を明記しま
した。
改正年月日 令和6年1月1日