認識の余白

大人になるにつれて視覚をイメージに置き換える行為が習慣化されていきます。統覚により習慣化されたモノの見方を体得する過程で、様々な姿で現れていた現実はふるいにかけられてしまいます。社会心理学者のハリー・スタック・サリヴァンはそれを「選択的無視」と呼びました。

《認識の余白》は鑑賞者と紙片の距離によって見える像が変化する作品です。作品に近づくと視覚が捉えるイメージは小さな紙片になります。小さな紙片には人が認識できるギリギリの解像度の写真が印刷されています。そこに何を見るかは鑑賞者によって異なるでしょう。鑑賞者は揺れる認識の体験により、型にはまりきっていない認識の余白と向き合います。これは存在する識閾下の認識を見つめるための装置です。

撮影: 石田駿太