計算のふるまい

データを並べ、処理の規則を決め、処理の手順を記述し、アルゴリズムをつくる。デタラメなアルゴリズムでなければ、それがいくつか組み合わさったときに、入力と出力の間に秩序が生じシステムとなる。 

《計算のふるまい 一》では、個体は秩序に従って動き、その軌跡が線として描画される。個体の動きは秩序によって規定されており、個体は自らの動きを定めない。ならば、新たな秩序の創出こそが、新たな線を描くことにつながると思った。また、部分と全体の調和が音にあるならば、そこから描かれる線もそうあるべきだと考えた。そのため群れのなかに新たな規則を加え、個と全体の関係に新しい秩序を発生させることを試みた。

 ”おにごっこ”などの子供の屋外遊びに着目した。鬼と逃げる者は、その位置関係によって、各自が状況に応じたふるまいをする。それでもって、各自のふるまいは遊びのルールに則って決められ、そこにはパターンが生じ、俯瞰して見れば群れを成す。なので、実在する遊びを参考に、五つのアルゴリズムをつくり、群れの秩序に組み込むことで新しい秩序を創出した。それぞれのアルゴリズムにより、個体のふるまいは群れのなかで変異し、新たな線が描かれた。 

変容する知覚情報の変換プロセスが、どのように音の変化を捉え、どのような線を描くのか、どんなふうに描画するのか、作者でありながら一人の鑑賞者でもあるような気持ちで、計算機の描画プロセスを探った。こうした計算機の他者性に魅せられながら、表現としてのシステムのありようを思索しつづけたい。


2024 - Lag-Log-Loop, グループ展, 新宿眼科画廊, 展示作品.