計算のふるまい 一

音の重なりが個体をつくり、音の相互関係が色彩の調和や対比に、音の強さは個体の速度へ、さらに個体の動きには秩序をもたせ、運動の軌跡を曲線で結び、視覚表現のための描画アルゴリズムを制作した。そして、音を直接的に描画する規則をいくつか加え、聴覚情報を視覚情報へと変換するシステムとした。

音が個体を取り巻く調和を変え、環境によって計算された力に個体が従うことで、群れとしての秩序が生じている。描画へのアルゴリズムの関与は間接的に留まり、描画の構成要素は部分的に読み込んだ音に委ねられる。そのため音はプロポーションを保持したまま視覚情報へと変換され、残されたプロポーションは聴覚と視覚を結ぶための情報として痕跡を残す。これは、個体と環境の相互作用を基盤にした音の情報を視覚表現へと変換する試みである。

ここでの視覚像に意識はあるものの、思索している対象はアルゴリズムやシステムのありかたそのものである。外からの力に従いながらも自由にふるまう、そんな水のようなアルゴリズムが書けたとき、知覚情報は計算機でどのように捉えられ、どんなふうに変換できるのか、そこから発生する表現はどのようなものなのだろうか、そこに生じる人間との差異はどんなものだろうか。

その思索の一環として、音のデータの入力による計算のふるまいをつくった。


2024 - Lag-Log-Loop, グループ展, 新宿眼科画廊, 展示作品.

2024 - サイバーターン vol.4, VJ出演,  渋谷 Circus Tokyo.