目我戯画 MegaGiga

《目我戯画》は鑑賞者に遊戯的な視覚体験をもたらす静止画です。

人間は成長するにつれて、視覚をイメージや言語に置き換える行為が習慣化されます。習慣化されたものの見方は、様々な姿で現れていた現実をふるいにかけ選択的に無視するようになります。例えば、一般的に子供の方が雲のなかに偶発的なイメージを見出す能力が高いでしょう。天井の染みから連想する動物や植物も同様です。 一方で、AIが認識できる世界は、私たちが暮らす世界のほんの一部分です。そのためAIは、ときどき人間と異なる認識をします。こうした認識の差異を単なる誤認として見離すのではなく、予想しえない新たな解釈を得るための幸運な出会いとして捉えました。そして私はこの想像力豊かな知性と共に「AIイラスト」に向き合いました。定まった確かな表層を解体し、自由な暗示と多様な解釈を可能にする静止画を再構築できると思ったからです。鑑賞者の想像や決断を要求する静止画が、能動的な鑑賞体験を誘発し、世の中に溢れかえった「AIイラスト」の短絡的な鑑賞体験とは異なる体験になると考えたからです。

はじめに、ベースとなるイラストを生成しました。この段階では主題が描かれているだけで、観る者に対してそれ以上に関与する余地を与えない単層的なイメージです。そこで、このイラストを複数の抽象的な断片へと分解しました。これらの特に意味をもたないイラストの断片を画像認識AIに見せ、なにかしらの対象を見出すように誤認させました。その後、画像認識AIが見出した対象へと断片を変化させるよう画像生成AIに指示しました。ここで生成された画像は、元の断片の特徴を残しつつも、AIが誤認した対象を表しています。最後に、個別に意味をもった断片を元のイラストに一枚づつ組み込みました。

出来上がった静止画は、観る者の認識をひとつの図像から別の図像へと変容させます。ただし、一歩引いてみると、全体としてひとつの図像が保たれています。この体験が観る者に能動的な鑑賞を誘発し、想像的な知覚を促します。 この静止画は、決定的なひとつの認識を与えるのではないのです。かけ離れたイメージ同士が、観る者の中でゆっくり結びつけられ、新たな認識や想像を生み出すことで成立します。つまり、遊戯的な視覚体験を創出するのです。この戯画は文脈や技術を知らずとも見て楽しめる作品です。専門的な界隈に限らず、より多くの人に鑑賞されることで、AIを取り巻く個人の考え方が少しでも創造的な道を歩めばそれに越したことはありません。


I embraced an unexpected outcome from the AI as serendipity. Using this imaginative intelligence, I confronted a single illustration, breaking it down into several pieces. Next, I had the AI generate new images from these fragments.The AI's creativity transformed the nonsensical fragments into unique iconography. These were then incorporated back into the original illustration. That tells a new story, creating a playful and immersive visual experience for anyone who sees it.

 This artwork doesn’t just have one meaning. Instead, its various elements connect with viewers over time, sparking new ideas and images in their minds. It's all about enjoying the visual journey, no need to understand the context or the techniques used. While experts might enjoy it, my hope is that a wider audience will too, encouraging them to think differently about AI. If this artwork, created with today’s cutting-edge technology, manages to leave even a modest footprint in the history of computer art, it would bring me unparalleled joy.

2023 - NeurIPS 2023 “Machine Learning for Creativity and Design" 採択