渡辺一樹のサイト

自己紹介

東京大学で哲学・倫理学を研究している渡辺一樹です。主な研究分野は倫理学・道徳哲学です。とりわけ、20世紀英米圏の道徳哲学者であるバーナード・ウィリアムズ(Bernard Williams) のテクストをたよりに研究してきました。

研究関心

主な研究:道徳哲学(道徳の分析と批判・倫理学方法論)
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(研究の背景)
ニーチェのテクストにおいて顕著なように西洋哲学において道徳 (morality) は問題でありつづけていました。というのも、道徳は、一方で我々が他者と生きていくなかで中心的な規範であるように思われながら、他方で過剰なもののように思えるからです。道徳はいかなる特質を持つか? 道徳に従わなくてもよいのではないか? 道徳はいかに成立したのか? こういった問いが、ある種の西洋道徳哲学を規定してきました。

(研究の内容)
私は、道徳をめぐる哲学のなかでも、バーナード・ウィリアムズの思考に注目しています。ウィリアムズは、道徳哲学の歴史において特筆すべきほどに広範でそして独創的な道徳批判をおこなったからです。ウィリアムズのテクストとともに、道徳とは何か?道徳の何が問題なのか?道徳の代わりに何を構想するべきなのか?といった問題に取り組んでいます。現在までの研究で見えてきたのは、「近代の道徳は人間の生について過剰な想定をしている。我々は道徳とは異なる枠組みで倫理 (ethics) を考えるべきである」という立場です。ウィリアムズの立場は、彼の主著 Ethics and the Limits of Philosophy (『生き方について哲学は何が言えるか』)の最後の言葉に現れています。「道徳の哲学的誤謬は、人生についての誤った見解を、最も抽象的に表現したものにほかならない。人生についてのこの誤解は、私たちに深く根を下ろし、依然として影響力を保っている」(邦訳 p.380)。

(研究の構想)
このような破壊的な立場を擁護したうえで、倫理学には何ができるのか。このような問いへの積極的な提案もしたいと考えています。具体的には、ヒューム・ニーチェ・ウィリアムズに連なる系譜学 (genealogy) の方法に注目しています。また、近代道徳に代わる倫理を構想するなかで、支配を否定するアナキズムの思考にも注目しています。