久保 樹里 先生(日本福祉大学)
日本福祉大学社会福祉学部准教授。大阪市の児童相談所に長年勤務した後、スクールソーシャルワーカーを経て、大学教員となる。家族を真ん中に、その声を聞き、強みを活かしてチームで支える支援「ラップアラウンド」や、社会的養護のケアから離れ自立した若者の支援など、幅広くご活躍されているほか、こども家庭庁の改正児童福祉法に基づく「親子再統合支援事業」「こども家庭福祉の認定資格」についての検討会メンバーも務められている。
(前半)吉村拓美さん(京都府宇治児童相談所京田辺支所)
北谷多樹子さん(堺市子ども相談所) をお招きして
虐待を取り巻く状況や対応について、業務の分業化やマニュアル化が進むことで、一定で迅速にこなす「工場」スタイルのようにも感じられる現状の中で、「援助者の方針」が主体ではなく、当事者家族が主体となり、その強みを引き出し活かせるよう関係機関等のチームでそれを支える「ラップアラウンド」の実践報告も交えながら、いまの児童福祉の現状について考えたいと思います。
(後半)菅野道英さん(そだちと臨床研究会)
三木馨さん(西日本こども研修センターあかし) をお招きして
前半の「ラップアラウンド」における支援や、その前提となる考え方、実践報告などを受けて、菅野さん、三木さんがこれまで第一線で対応されてきたご経験や実践についても伺いながら、虐待に関係するあらゆる機関が、子ども・家族への支援に多忙を極めるなか、「目の前のことに対応するのがやっと」といった先の見えない中でも、これからの児童福祉・家族援助に対してできる小さな1歩を、模索していけたらと思います。
村井 理子 先生(翻訳家、エッセイスト)
翻訳家として数多くの翻訳を手がける。エッセイストとしても、家族関係のねじれや子育ての悩み、介護の苦労について、簡潔で的確な描写力と少しスパイシーなユーモアを駆使して書かれた『兄の終い』『全員悪人』『家族』など多数。『兄の終い』では、実際に児童相談所も登場します。今回のご講演では、特に著書『家族』に描かれている、それぞれに個性的なご家族のもとで育った村井先生ご自身の体験やご自身が「子ども」であった当時の思い、またそのご家族から自立していく過程や、自立し「大人」となった現在から見たご家族に対しての思いなどお話しいただき、そのなかから私たち援助職者としての立場や配慮など、振り返るようなきっかけにできたらと思います。
千葉 晃央 先生(京都光華女子大学)
家族療法を学び、相談員として実践。障害者福祉施設(就労支援)、障害者ケアマネジメント等の現場で24年勤務。社会福祉士養成、行政ケースワーカー養成、大学保育士等養成の現場で15年従事。開催回数200回を超える「家族をテーマにした事例検討会」を主宰。今回の事例検討においても起きている症状にのみ焦点を当てるのではなく、家族全体としての「起きたこと」そして「起こらなかったこと」についても考えることで、家族のパターンを探っていくとともに、ケースを実際に担当していない参加者とのやりとりを通して、担当しているからこそ気づかなかった新たな発想や手立てが出てくることもあります。
虐待ケースなど、どうしても視野の狭くなりがちなケース検討となってしまう中、また少し違った視点の事例検討にふれていただきたいと思います。
中垣 真通 先生(子どもの虹情報研修センター)
静岡県に入庁後、精神科病院、児童相談所、情緒障害児短期治療施設、精神保健福祉センター、県庁等に勤務。2015年4月、子どもの虹情報研修センター研修課長、2019年4月から同研修部長。
加藤 俊造さん (新潟県南魚沼児童相談所)
山中 博喜さん (静岡県中央児童相談所)
本年度の日本家族療法学会での「児童虐待対応~家族療法を応用すると何が起きるのか~」ワークショップを、本研修会用に再構成していただいています。学会大会ホームページより、『児童虐待の対応には児童相談所だけでなく、市区町村、学校、児童福祉施設などがより広く関わるようになってきた半面、指導しても結局は虐待が繰り返されたり、関わりを遮断されたりするなど、対応の難しさを味わう関係者が増えているように思います。保護者が不適切な行為をやめることは必要ですが、いかにそれをやめさせるのか、という目標設定では行き詰まりやすいと感じている支援者が多いのではないでしょうか。そもそも保護者に対して、力に頼った躾をやめさせるために、法的権限で指導する構造が、矛盾を孕んでいるのかもしれません。このワークショップでは、行き詰まりや矛盾を抱えやすい児童虐待のケースワークにおいて、家族療法が蓄積してきた知見や技法を応用すると何が起きるのか、いっしょに考えてみたいと思います。』