【問題意識】
AとZが同乗していた車の事故で死亡の順序がわからないような場合(民法第32条の2によって同時に死亡したと推定される場合)、WはAの相続についてZを代襲するか。
【結論】
WはZを代襲してAを相続します。
【理由】
民法第887条第2項「相続開始以前に」と規定されていることから、AZ同時死亡の場合も同項に該当し、WはZを代襲してAを相続します。
【関連条文】
民法第32条の2 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。
【結論】
ならない。
【理由】
民法第887条第2項は、限定列挙と解されているからです。代襲原因は、死亡、欠格、廃除のみです。
【時系列】
① Xを養親、Zを養子とする養子縁組をする。
② Xが死亡。
③ Aが死亡。
【問題意識】
Zは、実子(第一順位)としてAを相続し、かつ、Xの代襲相続人(第一順位)としてAを相続するのか。
【結論】
重複を認める説が多数説ですが、認めない少数説もあります。(論点、20頁)同旨(注釈26、266頁)
【時系列】
①YZ婚姻、ABZ養子縁組(いわゆる婿養子)
②A死亡
③B死亡
④Y死亡
【問題意識】
Zは、Xとともに第3順位の相続人としてYを相続するほか、配偶者としても相続するのか。
【結論】
肯定される方向と考えられる。
【根拠】
平成27年9月2日民二第363号民事局民事第二課長通知
標記について、別紙甲号のとおり京都地方法務局長から当職宛てに照会があり、別紙乙号のとおり回答しましたので、貴管下登記官に周知方お取り計らい願います。
「別紙甲号」
今般、配偶者及び妹としての相続人の資格を併有する者から相続による所有権の移転の登記が申請され、相続を証する情報として、戸(除)籍の謄本及び相続放棄申述受理証明書のほか、配偶者として相続の放棄をしたことを確認することができる相続放棄申述書の謄本及び妹としては相続の放棄をしていない旨記載された印鑑証明書付きの上申書が提供されました。
相続人の資格を併有する者の相続の放棄は、いずれの相続人の資格にも及ぶものとして取り扱うものとされている(昭和32年1 月10日民事甲第61号民事局長回答)ところではありますが、昭和37年7 月1 日から施行された家事審判規則の一部を改正する規則(昭和37年最高裁判所規則第4 号)による改正前の家事審判規則(昭和22年最高裁判所規則第15号)は、相続の放棄の申述書の記載事項として、「被相続人との続柄」を要求していなかったことを踏まえると、上記民事局長回答は、いずれの相続人の資格をもって相続の放棄をしたものかが明らかではない場合における登記の取扱いを示したものであり、特定の相続人の資格をもって相続放棄をしたことが添付情報上明らかである場合とは事案を異にするものと考えられます。
したがって、当局としては、本件の申請については、配偶者としての相続の放棄の効果は、妹としての相続人の資格には及ばないものとして取り扱い、本件の申請を受理して差し支えないと考えていますが、本件のような事案の取扱いについて示されたものはなく、いささか疑義があることから、本件の申請を受理して差し支えないか照会します。
「別紙乙号」
本年7 月30日付け不第184号をもって照会のありました標記の件については、貴見のとおり取り扱って差し支えありません。
【関連情報】
従前は、昭和23年8月9日民事甲第2371号民事局長回答によって、配偶者としての相続分のみを取得し、兄弟姉妹としての相続分を取得しない、とされていた。(幸良、24頁)