Q 補助人の権限について教えてください。
Q 補助人の権限について教えてください。
補助人だから当然付与される権限というのは、実は何もありません。
保佐人であれば民法第13条第1項の同意権、後見人であれば民法第859条の代理権(条文では「代表する」となっているものの、これは親権の財産管理権限を規定した民法第829条と同一の書き振りであって、代理権と解釈されています(我妻、注釈民法等))が当然に付与されることとは、大きな違いです。
これは、補助開始の審判が、同意権付与の審判や代理権付与の審判と同時でしか審判されない(民法第15条第3項)ことと関係します。補助開始のパターンは、補助開始+同意権付与、補助開始+代理権付与、補助開始+同意権付与+代理権付与、という3つのパターンがあるのです。
ここから、同意権付与の審判と同時に補助が開始した場合と、代理権付与の審判と同時に補助が開始した場合とでは、補助人に付与される権限が当然に違うことがわかると思います(同意権なのか代理権なのか)。さらに、同意権と代理権の両方を付与されるケースもあります。
そして、同意権の内容も均一ではなく、本人が同意権付与の申立てをしていない場合に同意権付与の審判をするためには本人の同意が必要になることから(民法第17条第2項)わかるように、同意権の内容は案件ごと(本人ごと)に異なります。同意権付与の全案件に共通する唯一の点は、同意権が、民法第13条1項記載のうちのいずれかについてのみしか付与されない(民法第17条第1項)、ということです。
本人の同意が必要という点は、代理権付与の審判についても当てはまります(民法第876条の9第2項で準用する第876条の4第2項)。
まとめます。
補助は、オーダーメイド型の制度であり、補助人の権限を極めて限定的にすることが可能です。例えば、遺産分割等の相続の手続きについての代理権のみを補助人に付与するなどです。このケースにおいて、相続の手続きが終われば、代理権付与の審判の取消を請求することができ(民法第876条の9第2項で準用する民法第876条の4第3項)、すべての代理権付与の審判が取消されるときは、家庭裁判所は補助開始の審判も取り消さなければいけません(民法第18条第3項)。
このとき、本人の判断能力の回復具合は関係ありません(もちろん、回復を理由に補助開始の審判を取り消さなければならないケースもあります(民法第18条第1項))。
つまり、成年後見制度は、一度利用を始めたら本人の判断能力が回復しない限り終わることがないというのは、厳密には間違いです。私は、実際に代理権の消滅で終了した補助の案件の経験があります。
この結論になるのは、補助人には、保佐や後見のように自動的に必ず付与される権限がなく、すべて本人の意思に基づいて利用されているからにほかありませんので、補助は、本人の意思を最大限に尊重した制度と言っても過言ではないでしょう。