ミズダコ

Paroctopus cf. dofleini (Wulker, 1910)

レア度:たまに見られる(冬の夜)

形態:腕を広げた大きさが3mにも達し、世界最大のタコといわれる。葛登支の磯では60~70㎝くらいのものがほとんど。生時は外套膜の背側(上に向けている側)に少し尖るしわが並び、また暗色の縦縞がある。体色は暗褐色~静脈血のような濃赤色。死ぬと白くなる。北海道ではヤナギダコ P. conispadiceus も生息し、地域によっては漁獲対象となっている(北海道ぎょれん)。ヤナギダコは外套膜にしわや縦線がなく、つるっとしていることで見分けられる。

生息域:北米西岸から、環北太平洋的な分布様態を示し、日本沿岸では相模湾や土佐湾くらいまで及ぶ。葛登支では冬の夜によく見られる。ヤドカリ探しをするような浅い水場で転石をひっくり返すと姿を現すことがあるので、なかなかに驚かされる。

生態:食性はジェネラリストで、巣の周囲のものを手あたり次第利用するらしい(Vincent et al., 1998)。津軽海峡周辺域では、産卵期は11~5月頃。一生に1度だけ繁殖に参加する。2歳くらいで成熟サイズに達し、その大きさは雌雄ともに体重10㎏前後。水温15℃くらいが生息可能な上限で、夏場は深場に移動するが水平方向の回遊は行わない(野呂・桜井, 2012; 野呂・桜井, 2014)。知能は高いとされ、水槽内で「遊び」行動が観察されていたり(Mather & Anderson, 1999)、ヒトを視覚的に見分けたりすることができる(Anderson et al., 2010)。こうした知能の高さから、無脊椎動物ではいち早く動物福祉に関するガイドラインが提案されている(Fiorito et al., 2015)。

その他:水産学部の某先生によると、津軽海峡のミズダコは冬場になると産卵のために深場から函館湾内にやってくるらしい。我々が見ているミズダコも産卵のために葛登支を訪れているのかもしれない。
 「タコ箱」で漁獲される。力は非常に強く、2mを超えるとモンスター級。ダイビング中に出会うと本当に危ないので、手を出してはいけない。

2020年10月 青木
2020年10月 大友
2018年11月 木戸素早くてなかなか写真がとれない
2014年10月@臼尻 大友
2020年6月@積丹 大友
2018年11月 山上岩陰に気配
2018年11月 山上小型の個体
2018年11月 山上漏斗から水を噴射し、進む!
2020年12月12日 りった
2021年3月@積丹 大友
2021年12月2日 藤本タコのまなこ
2021年12月2日 藤本お手本のような八本足

引用文献:

  1. Anderson, R.C., Mather, J.A., Monette, M.Q. & Zimsen, S.R.M., 2010. Octopuses (Enteroctopus dofleini) recognize individual humans. J. Appl. Anim. Welfare Sci. 13: 261-272.

  2. G. Fiorito, A. Affuso, J. Basil, A. Cole, P. de Girolamo, L. D' Angelo, L. Dickel, C. Gestal, F. Grasso, M. Kuba, F. Mark, D. Melillo, D. Osorio, K. Perkins, G. Ponte, N. Shashar, D. Smith, J. Smith, & P. LR Andrews, 2015. Guidelines for the Care and Welfare of Cephalopods in research - A consensus based on an initiative by CephRes, FELASA and the Boyd Group. Laboratory Animals Vol.49 [S2], pp. 1-90.

  3. 北海道ぎょれん. 北海道のタコ. (URL: https://www.gyoren.or.jp/hokkaidos_fish/tako/index.html, 2020年10月26日訪問).

  4. Mather, J.A. & Anderson, R.A., 1999. Exploration, play and habituation in Octopus dofleini. Journal of Comparative Psychology 113 pp.333-338.

  5. 野呂恭成・桜井泰憲, 2012. 津軽海峡周辺海域におけるミズダコの移動と分布および成長. 水産増殖 60(4): 429-443.

  6. 野呂恭成・桜井泰憲, 2014. 津軽海峡周辺海域におけるミズダコの性成熟と生殖周期. 水産増殖 62(3): 279-287.

  7. Vincent, T.L.S., D. Scheel & K. R. Hough, 1998. Some aspects of diet and foraging behavior of Octopus dofleini (Wulker, 1910) in its northernmost range. Marine Ecology 19(1): 13-29.