コウダカマツムシ

Mitrella burchardi (Dunker, 1877)

レア度:めったに見ない

形態:小型の紡錘形巻貝。1.5~2㎝程度で成長が止まり、殻口の縁辺部が厚くなる(≒成熟)。貝殻表面はなめらか。色彩はバリエーションに富むが、暗色の個体が多い。ムシロガイ科同様、水管は長く伸びる。

生息域:北日本からロシア東部に分布し、潮間帯から水深20mの岩礁に生息する。葛登支では沖合の平磯でみられる。

生態:Luckens (1970) は、本種に生きたイガイ類などを与えてもそれを捕食しないことから、本種がスカベンジャーであると報告した。その後、タマキビ類の幼貝を捕食する本種が観察され、胃内容物にも普通に含まれることから、普段は小型の動物を襲う活発な捕食者であることが判明した (Kantor & Medinskaya 1991)。国後島では7月上旬から下旬、沿海州ポシェト湾では6上旬に卵嚢が観察されている (Golikov & Kussakin 1978)。卵塊は明るい黄色で、ほぼ円形のシャーレ状をなし、胚が数十個入っているとあるが、発生様式は不明 (Golikov & Kussakin 1978)。近縁種のムギガイ M. bicincta Gould, 1860 は同様の卵塊を産み、発生過程に浮遊幼生期を持つ (網尾 1957)。

20年6月@積丹 大友典型的な色彩
20年6月@積丹 大友
20年6月@積丹 大友
20年6月@積丹 大友

引用文献:

  1. Luckens, P. A. 1970. Predation and intertidal zonation at Asamushi. Bulletin of the Marine Biological Station of Asamushi, Tohoku University, 14: 3352.

  2. Golikov, A.N. & Kussakin, O.G. 1978. Rakovinnye briukhonogie molliuski litorati morei SSSR. Nauka, Leningrad Branch. (in Russian)

  3. Kantor, Y. I. & Medinskaya, A. I. 1991. Morphology and feeding of Mitrella burchardi (Dunker) (Gastropoda, Columbellidae). Asian Marine Biology, 8: 2533.

  4. 網尾勝. 1957. 海産腹足類の卵仔に関する研究 (I): カニモリガイ, カゴメガイ, シラゲガイ, ムギガイ, オハグロシヤジク. 水産大学校研究報告, 7: 107–116.