タテスジホオズキガイ

Coptothyris grayi (Davidson, 1852)

レア度:たまに見られる

形態:二枚貝とよく似た貝殻をもつが、軟体動物ではなく、「腕足動物」という全く別のグループの生物。二枚貝との違いとして、(1)貝殻が体の背腹方向についている(二枚貝は左右方向)ことや、(2)触手冠という摂餌(呼吸)器官をもち、貝殻内部のはほとんど外套腔という空洞になっていることがる。

本種貝殻は鮮やかな朱色で、扇子を広げたような形をしている。表面はホタテガイを思わせる太いすじが立つ。背殻はつぶれたように扁平だが、腹殻はよく膨らむ。二枚の殻を合わせると頂点にまるい穴ができるが、これは基質に付着するための肉茎という器官を通す穴である。

生息域:日本列島周辺に分布し、潮間帯から水深300mの岩礁に生息する。葛登支では、ときどき転石の下面に付着しているが、1㎝程度の小型個体がほとんど。貝殻は七重浜にも打ちあがる。

生態:濾過食者であり、触手冠の繊毛運動で外套腔に水流を発生させ、粒子を捕獲・選別する (Kuzmina & Temereva 2018)。雌雄異体であり、放卵放精により体外受精する。浮遊幼生期をもつ (Kuzmina et al. 2019)。

その他:腕足動物は古生代に繁栄していた「生きている化石」であり (Carlson 2016)、本属の日本産現生種は本種のみである。6億年の間に自分たち以外の仲間がすべて死に絶えたと考えると、なんだか少し寂しい。(実際はいろいろと事情が違うと思うが)

2020年8月 山上
2020年8月 腹殻 大友
2020年8月 背殻 大友
2020年8月 背殻の成長線 大友
2022年4月 とみよし色白?

引用文献:

  1. Carlson, S. J. 2016. The evolution of Brachiopoda. Annual Review of Earth and Planetary Sciences, 44: 409–438.

  2. Kuzmina, T. V. & Temereva, E. N. 2018. Rejection mechanism of plectolophous lophophore of brachiopod Coptothyris grayi (Terebratulida, Rhynchonelliformea). Moscow University Biological Sciences Bulletin, 73: 136–141.

  3. Kuzmina, T. V., Malakhov, V. V. & Temereva, E. N. 2019. Larval development of the brachiopod Coptothyris grayi (Davidson, 1852)(Terebratulida: Rhynchonelliformea) and the evolution of brachiopod life cycles. Invertebrate Zoology, 16: 2740.