トビ
Milvus migrans (Boddaert, 1783)

レア度:いつでも見られる

形態:全長60–70㎝ (雌のほうが大型) でカラスより大きく、翼開長にして160cmある。全体的に褐色でアクセントに欠けるが、飛翔時には翼先下面にある白いパッチがよく目立つ。翼上面にも逆八の字状に淡褐色のラインが浮かび上がる。尾は中央部が凹んでいて、"三味線のバチ" "サケの尾鰭" に似ている。この尾を左右にひねりながら風に乗っている姿はたいへん特徴的で、一目で本種とわかる。雌雄同色だが、幼鳥は羽縁が淡色で、星を散りばめたようにみえる。

生息域:日本各地に留鳥として分布 (沖縄諸島や先島諸島では稀) し、河川、湖沼、海岸およびその周辺林に生息する。海外では、ユーラシア大陸からアフリカ大陸、オーストラリアまで広く分布している。

生態:鳴き声はおなじみの「ピーヒョロロロロ」。長時間飛翔していることが多く、発見は容易。羽ばたきはゆっくりと深く、ほとんど羽ばたかずに帆翔している時間も長い。上空で餌を見つけると、翼をたたんで急降下する。肉食性で、餌は哺乳類、魚類、両生類、昆虫類など多岐にわたる (羽田ら 1966; 石沢・千羽 1967; 古賀・白石 1987; Shiraishi et al. 1990)。これらはハンティングによっても得るが、死骸を漁っていることのほうが多い。特に積雪期には、餌を求めて水産加工場や屠畜場に群れている (羽田ら 1966)。
繁殖期は求愛造巣期が始まる2月下旬から幼鳥が独立する8–9月頃まで。アカマツなどを営巣木として利用し、3月中には造巣を完了する (羽田・小泉 1965a)。巣は新たに造ることもあれば、何年も連続利用したり、古巣や他種の巣を修繕して使ったりもする。3月から5月上旬に雌は2–3個の卵を産み、30日程度抱卵を続ける (羽田・小泉 1965a; Koga et al. 1989a, b)。抱卵開始から雛が巣立つまで、餌の獲得はもっぱら雄の役割である。雛は孵化後50日程度で巣立つが、巣立ってからもしばらくは親から給餌を受ける(羽田・小泉 1965b; Koga et al. 1989a, b)。兄弟間にはしばしば成長速度の差があり、途中で死亡する雛もいる (羽田・小泉 1965b; 古賀・白石 1987; Koga et al. 1989b)。

その他:葛登支には、春から夏にミサゴが出現する。ミサゴをはじめ日本産の猛禽類は、トビと違って下面が白っぽい種類が多い。トビほど簡単には見つからないが、猛禽類が飛んでいたらトビかそれ以外かを確認するところからはじめよう。

2021年5月14日 とみよしかっけェ。
2021年5月14日 とみよし
2021年5月25日 藤本 

引用文献:

  1. 羽田健三・小泉光弘. 1965. トビの生活史に関する研究: I. 繁殖期. 日本生態学会誌, 15: 199–208.

  2. 羽田健三・小泉光弘. 1965. トビの生活史に関する研究: I. 繁殖期 (承前). 日本生態学会誌, 15: 221–228.

  3. 羽田健三・小泉光弘・小林建夫. 1966. トビの生活史に関する研究 II: 非繁殖期. 日本生態学会誌, 16: 71–78.

  4. 石沢慈鳥・千羽晋示. 1967. 日本産タカ類 12 種の食性. 山階鳥類研究所研究報告, 5: 13–33.

  5. 古賀公也・白石哲. 1987. トビ Milvus migrans の育雛行動. 日本鳥学会誌, 36: 87–97.

  6. Koga, K., Shiraishi, S. & Uchida, T. 1989a. Breeding ecology of the Black-eared Kite Milvus migrans lineatus in the Nagasaki Peninsula, Kyushu. Japanese Journal of Ornithology, 38: 57–66.

  7. Koga, K., Shiraishi, S. & Uchida, T. 1989b. Growth and development of the Black-eared Kite Milvus migrans lineatus. Japanese Journal of Ornithology, 38: 31–42.

  8. Shiraishi, S., Koga, K. & Kawaji, N. 1990. Food Habits of the Black-eared Kite, Milvus migrans Zineatus, in Nagasaki Airport and Its Adjacent Areas. Journal of the Faculty of Agriculture, Kyushu University, 37: 247–254.