ヤセカジカ

Radulinopsis derjavini
Soldatov&Lindberg, 1930

レア度:めったに見ない

形態:成魚の体長は4㎝程だが、葛登支では初夏に2~3㎝程の幼魚が見られる。大抵は体の前半部が乳白色で、後半部は白地に4本の灰色の横帯が入る。各鰭は透明~薄黄色だが、胸鰭は白色斑がある。吻が短めで、上から見るとほぼ二等辺三角形に見える。側線より上側は微小な鱗に覆われ、側線上に並ぶ鱗はやや大きい。側線より下方には鱗がなく、細長い皮弁が散在する。

生息域:波打ち際に近い砂地で一度見かけたが、通常は水深5~20mの砂礫底に多い。

生態:交尾をするカジカで、体内配偶子会合型(IGA)という特殊な受精様式を示す。ヤセカジカ属では、交尾前にオスがメスの上に乗り交尾を試みる「マウント行動」を行う。交尾後は雌がかいがいしく卵保護をする。卵塊は砂底から露出した石の窪みなどに産み付けられ、砂を表面につけてカモフラージュする。本種の雄は成熟が非常に早く、生後2か月程度で繁殖に参加するようになる。(阿部, 2011)

その他:少し前まで分類が混乱していたが、形態的な類縁関係が見直された結果、現在はキマダラヤセカジカ R. taranetzi とヤセカジカ属を構成する(Yabe & Maruyama, 2001)。どちらもダイビングで行けるような水深の砂底に生息するため、葛登支では稀かもしれない。

2020年6月@積丹 大友
2014年5月@臼尻 大友キマダラヤセカジカの交尾前のマウント行動。上に乗っているのがオス。

引用文献:

  1. 阿部拓三, 2011. 雌が卵を守る交尾型カジカ類の繁殖生態―堅気な母性と気ままな父性―. 宗原弘幸・後藤晃・矢部衞(編著), カジカ類の多様性―適応と進化―, pp.176-193. 東海大学出版会.

  2. Yabe, M. & Maruyama, S., 2001. Systematics of sculpins of the genus Radulinopsis (Scorpaeniformes: Cottidae), with the description of a new species from northern Japan and the Russian Far East. Ichthyological Research 48: 51-63.