ハオコゼ

Paracentropogon rubripinnis (Temminck and Schlegel, 1844)

レア度:めったに見ない

形態:大きくて全長9㎝ほどに達するが、磯で見かけるのは4~6㎝くらいの個体が多い。体は側扁し、表面に鱗はほとんどない。大きな背鰭が眼の直後から始まる。背鰭の第2・3棘条が長く、背鰭棘条部の鰭膜が深く切れ込むため、ノコギリの刃のようにギザギザして見える。背鰭の棘条の伸長は、体長4㎝以上のオスでより顕著になる (鈴木ら, 1981)。胸鰭は大きく、左右に開いてバランスをとる姿がかわいい。体色は変異に富み、全身赤褐色のもの、黒褐色にまだら模様を持つもの、頭部前面に白色帯を持つものなどが見られる。

生息域:北海道以南の日本各地、朝鮮半島南部、台湾北西部にも飛び地的に分布 (甲斐, 2018; 尼岡ら, 2020)。日本の太平洋岸では、臼尻で採集された個体が北限記録である (百田・宗原, 2017)。岩礁潮間帯やアマモ場などに生息する。

生態:夜行性の傾向が強く、夜間に活発に摂餌を行う。主なエサはヨコエビやワレカラといった小型甲殻類 (Baba & Sano, 1987)。産卵期は春~初夏。産卵はペアで行い、日没前~日没にかけて放卵放精を行う。またその際にペア以外のオスのスニーキングらしき行動が観察されている (櫻井ら, 2003)。孵化仔魚は浮遊生活を送り、22~30日程度で着底する (鈴木ら, 1981)。

その他:の毒魚として名高い魚種。背鰭棘の基部に毒腺を持つため、棘条に触れてはいけない。刺されると「非常に痛い」とのこと。

2021年10月21日 りった
2021年10月21日 りった

引用文献:

  1. 尼岡邦夫・仲谷一宏・矢部衞 (2020) 北海道の魚類 全種図鑑 (p.236). 北海道新聞社.

  2. Baba O. and Sano M. (1987) Diel feeding patterns of the Congiopodid fish Hypodytes rubripinnis in Aburatsubo Bay, Japan. 魚類学雑誌 34 (2): 209-214.

  3. 甲斐嘉晃 (2018) ハオコゼ in 中坊徹次編・監修 (2018) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 (p.217). 小学館..

  4. 百田和幸・宗原弘幸 (2017) 北海道函館市臼尻からSCUBA潜水によって採集された北限記録6種を含む初記録9種の魚類. 北大水産紀要 59 (1/2): 1-17.

  5. 櫻井真・広瀬純・四宮明彦 (2003) ハオコゼの求愛, 産卵行動. 魚類学雑誌 50 (2): 165-168.

  6. 鈴木克美・田中洋一・日置勝三・上野信平 (1981) 水槽内で観察されたハオコゼの産卵習性と初期生活史. 東海大学紀要海洋学部 14: 357-367.