イシダイ

Oplegnathus fasciatus
(Temminck & Schlegel, 1844)

レア度:めったに見ない

形態:体は著しく側扁するため、非常に薄い。体側に7本の幅広い黒色横帯がある。この模様は成長に従って不鮮明になり、オスでは完全に消えてしまうが、メスでは名残が分かるくらいには残る。成魚は吻が黒いため、クチグロと呼ばれる(イシガキダイ O. punctatus はクチジロ)。両種は野外でも交雑し、イシダイのしましまとイシガキダイの斑点を併せ持つ雑種個体が稀に漁獲される(亀井・高間, 1981)。

生息域:稚魚期には流れ藻につくが、体長数㎝で底生に移行する。段階的には高校生くらいの個体は深場で見かけるが、浅場に出現するのはしましまの幼魚ばかりである。

生態:北海道沿岸では、季節来遊魚として8~10月くらいに出現。潮間帯の外側では、20匹程度が群れになっているところも見られる。成魚では歯が非常に発達し、ウニやフジツボをかみ砕いて食べる。

その他:イシガキダイとの交雑個体は「イシガキイシダイ」と呼ばれ、特に近畿大学のチームが作出した養殖の交雑個体は「キンダイ」と呼ばれる(村田・家戸、2012)。イシダイ♀×イシガキダイ♂の交雑個体は、イシダイの純粋種よりも成長が早く、生残率も高まることが知られる(「雑種強勢」と呼ばれる現象)(原田ら, 1986)。幼魚は好奇心旺盛で、ダイバーにもまとわりついてくるため、とてもかわいい。

2018年8月 山上
2013年10月@江差、かもめ島 大友複数で見られることも多い
2020年9月@奥尻島 大友
2020年9月@奥尻島 大友
2019年8月@静岡県伊東市 大友沖の根についていたオスの成魚
2020年3月@千葉県勝山 大友「イシガキイシダイ」っぽい野外個体
2021年9月7日 藤本岸近くの浅瀬にて

引用文献:

  1. 原田輝雄・熊井英水・村田修, 1986. イシダイとイシガキダイの人工交雑種. Bulletin of the Japanese SOciety of Scientific Fisheries 52: 613-621.

  2. 亀井正法・高間浩, 1981. 相模湾で採集したイシダイとイシガキダイの天然交雑種について. 神奈川県水産試験場研究報告 3: 15-17.

  3. 村田修・家戸敬太郎, 2012. 海水養殖魚における交雑育種. 水産育種 41: 105-109.