ヨーロッパザラボヤ

Ascidiella cf. aspersa (Muller, 1776)

レア度:たまに見られる?

形態:ヨーロッパ沿岸産の単体ボヤで、日本では最近定着が確認された外来種。体長は13㎝程になる。単体ボヤの体は、基質に付着しているほうが前、出水孔のある方が背側とされる。筋膜が透明で消化管が透けて見え、消化管は体の左側にあり、成熟個体では出水孔に繋がる輸精管が見える。近縁種のザラボヤ Ascidia zara とは、第2腸環(腸が折れ曲がっているところ)の直角2等分線(軸)は胃よりも前方にあることで簡易的に識別できる(金森ら, 2012)。成熟個体を解剖できれば、本種は卵が大型の濾胞細胞で覆われることも大きな特徴となる。

生息域:原産地は北大西洋。葛登支では平磯の沖寄りで、石の下に張り付いていた。波辺りが弱く、比較的静穏な内湾や入り江を好むようである。

生態:単体ボヤだが複数個体が同じ場所に着底し、コロニーを形成する。船や水産物に付着して世界中に分布を拡大しているため、IUCNによって「侵略的外来種」に指定されている(Global Invasice Species Database)。噴火湾でも養殖ホタテや漁具に付着して漁業被害を出している(水産庁, 2017)。北海道沿岸では、苫小牧以西から遠別まで定着が確認されている(金森ら, 2014)。雌雄同体。繁殖期は夏~秋で、浮遊幼生を産出し、寿命は翌年の冬までとされる(Millar, 1952)。

その他:Ascidiella 属他種との識別にはやはり解剖が必要。しかし1㎝未満の個体になると、おとなしくDNAを見た方がいいくらいに同定は難しい。ただ本属他種は日本では稀なので、あまり気にする必要もないかも?

2020年8月 大友
2020年9月 大友解説付き
2020年11月 深澤淡赤色個体
2021年4月16日 りったこれも?

引用文献:

  1. Global Invasive Species Database (GISD), 2010. Ascidiella aspersa. URL: http://www.iucngisd.org/gisd/speciesname/Ascidiella+aspersa (2020年8月13日訪問)

  2. 金森誠・馬場勝寿・長谷川夏樹・西川輝昭, 2012. 外来種ヨーロッパザラボヤ Ascidiella aspersa (Muller, 1776) の生物学的特徴と簡易識別及び同定について(技術報告). 北水試 81: 151-156.

  3. 金森誠・馬場勝寿・近田靖子・五嶋聖治, 2014. 北海道における外来種ヨーロッパザラボヤ Ascidiella aspersa (Muller, 1776) の分布状況. 日本ベントス学会誌 69: 23-31.

  4. Millar, R.H., 1952. The annual growth and reproductive cycle in four ascidians. J. Mar. Biol. Assoc. U. K. Vol.31 No.1 pp.41-61.

  5. 水産庁, 2017. 有害生物による漁業被害の防止対策について(ザラボヤ). URL: https://www.jfa.maff.go.jp/j/sigen/yugaiseibutu.html (2020年8月13日訪問)