イボトゲガニ
Hapalogaster dentata (De Haan, 1849)
レア度:いつでも見られる
形態:体はつぶれたように扁平。はさみ脚や歩脚はやや硬い短毛に覆われる。またはさみ脚は右側の方が大きく、掌部にはいぼ状の突起が散在し、歩脚の前縁には鋸歯が列をなして密生する。腹部はかなり柔らかい。
生息域:全国に分布。岩礁の潮間帯以深の転石の下などに棲むとされ、葛登支でも平磯の水路につかっている石などをひっくり返すと、裏側に隠れている個体が大抵見つかる。
生態:葛登支では10~11月が産卵期で、オスのガード行動が見られる。メスの産卵は各繁殖期に1度だけ。産卵前には必ず脱皮を行い、交尾後は4か月ほど抱卵する(Goshima et al., 1995)。生態的な類似性からタラバガニ科のモデル生物に用いられ、オスを選択的に漁獲したときに起こりうる「精子制限 (Sperm limitation)」という現象が、本講座の先達によって実証された(佐藤, 2008; Sato & Goshima, 2006)。
その他:「ヒラトゲガニ」と言及されることもある。はさみ脚や歩脚は、背甲の下にしまうスペース(溝)があり、足をすべて閉じた様子は一つの石のよう。
引用文献:
Goshima, S., Ito, K., Wada, S., Shimizu, M., & Nakao, S., 1995. Reproductive biology of the stone crab Hapalogaster dentata (Anomura: Lithodidae). Crustacean Research 24: 8-18.
佐藤琢, 2008. 雄選択的漁獲が大型甲殻類資源に与える影響. 日本水産学会誌 74 (4): 584-587.
Sato, T., & Goshima, S., 2006. Impacts of male-only fishing and sperm limitation in manipulated populations of an unfished crab, Hapalogaster dentata. Mar. Ecol. Prog. Ser. 313: 193-204.