トゲワレカラ

Caprella scaura Templeton, 1836

レア度:たまに見られる

形態:体長は最大で4㎝程度と、葛登支で見られる中では最大級のワレカラ。頭部に、和名の通りよく目立つトゲがある。第2咬脚の底節(一番体に近い節、「二の腕」みたいな部分)が長く、第2胸節と同じくらいの長さになる…とされるが、この形質はいまいち一貫しない気がする。第2咬脚の前節(はさみの掌)に、毛はほとんど生えない。第1触覚はの長さは体長のほぼ半分。その鞭節は初めの4~5節が癒合する。第5~7胸脚の前節の根元には、1対の把握棘を持つ。似た種類にトゲワレカラモドキ C. californica があるが、第2咬脚全体に短毛が生えることで識別できる。モドキの生息域は道南以南とされるため、葛登支にもいるかもしれない。

生息域:2月に葛登支で採集した海藻の中にまぎれていた。暖かくなってくる3月頃には、海藻群落の中でうごめくオスたちがよく見られる。世界中に広く分布。

生態:発生過程が詳細に報告されている稀有なワレカラ。ワレカラ類は第3,4胸節の付属肢がエラに変異しているが、肢の伸長に重要な Distal-less Dll)という遺伝子が働いてないことが本種で判明している(Ito et al., 2011)。

その他:「第4~7胸節の背面には突起がある」とされるが、ないものもいる。この形質の形態で3亜種に分かれるとされるが、正直区別がつけがたいとのこと。

2021年3月 大友
2021年3月 大友
2021年2月 大友この個体は、C. scaura typica という亜種に似ている
2021年3月 大友体に藻が生えているのか?ぽやぽやしている
2021年3月 大友
2021年3月 大友
2021年2月 大友 頭部のトゲ
2021年2月 大友 第1触覚の鞭部、柄部に近い数節が癒合して境界があいまい
2021年2月 大友 第2咬脚の前節と指節
2021年2月 大友 第7胸脚、前節の根元に把握棘がある
2021年2月 大友 水槽内でヨコエビの仲間を捕食する
2020年12月 大友おそらく成体のオス
2020年12月 大友オスの第2咬脚、前節の形が特徴的
2020年12月 大友オスの第7胸脚、前節の根元に把握棘がある
2020年12月 大友
2020年12月 大友これはおそらく幼体、オス?
2020年12月 大友解説付き

引用文献:

  1. Ito, A., Aoki, M.N., Yahata, K., & Wada, H., 2010. Embryonic development and expression analysis of Distal-less in Caprella scaura (Crustacea, Amphipoda, Caprellidea). Biology Bulletin 221: 206-214.