コノハエビ属の1種

Nebalia sp.

レア度:いつでも見られる

形態:体長1㎝弱で、ミジンコとエビの中間といった外見。背甲とよばれる左右2片の殻で体を覆っており、本種では第4腹節まで届いている。背甲はほぼ透明であるため内部の観察はある程度は可能だが、固定すると不透明化するようである。体の前端には、丸みを帯び下向きに尖る額片を持ち、その下に1対の、柄を持った赤い複眼がある。第1触覚の先端は楕円形。顎脚がなく、8対の胸肢はすべて同じ形をしているが、ふつうは背甲内部にしまわれていて観察は難しい。腹肢は6対あり、第1~4腹肢は二叉型で短毛が生え、遊泳に使われる。第5,6腹肢は退化的で目立たず、腹節の下に畳まれていることが多い。尾節は二叉して先端がよく尖る。

生息域:コノハエビ亜綱 Phyllocarida の仲間の化石は、古生代の地層からも知られる。現生種の多くは海産で分布は世界中に及び、熱水噴出孔からも新種が見つかっている(Hirata et al., 2019)。海底に浅く潜って生活しており、葛登支では少し泥を掬ってくれば多く採集できる。

生態:かなりすばしこく、かつ力強く泳ぎまわる。頭から小石の隙間に潜り込もうとする様子がかわいい。額角を突き刺し、触覚で地面を掘る。原始的な形態を持つため、甲殻類の化石種の行動を、コノハエビ N. bipes との比較から推察する研究もある(Vannier et al., 1996)。本亜綱の仲間は雌雄異体で、一部を除き、メスは胸肢から形成される育房を背甲内に持ち、この中で受精卵を保育する。幼生は自由生活できるようになるまで育房内にとどまる。年中繁殖できるが、冬の低水温では活動が鈍る(天野ら, 1985)。腐肉食者で、養殖いけすの下では特に優占するとのこと(Sasaki & Oshino, 2004)。

その他:顕微鏡サイズの生物だが、背甲と尾肢がよく目立つため、肉眼でも認識することはできる…はず。日本周辺海域には本属の数種が生息するようだが、詳細不明であるため種までの同定はしていない。

2020年10月 大友背甲の上部に透けて見える黒いものは、おそらく消化管内部につまった糞
2020年10月 大友

引用文献:

  1. 天野光孝・加戸隆介・橋高二郎, 1985. コノハエビの生態と飼育. 付着生物研究 5(2): 7-12.

  2. Hirata, T., Fujiwara, Y., & Kikuchi, T., 2019. A new species of Nebalia (Crustacea, Leptostraca) from a hydrothermal field in Kagoshima Bay, Japan. ZooKeys 897: 1-18.

  3. Sasaki, R., & Oshino, A., 2004. Environmental conditions relevant to aggregative distribution of macrobenthos below coho salmon culture cage. Bull. Fish. Res. Agen. supplement No.1, pp. 19-31.

  4. Vannier, J., Boissy, P., & Racheboeuf, P., 1996. Locomotion in Nebalia bipes: a possible model for Palaeozoic phyllocarid crustaceans. Lethaia Vol. 30, pp. 89-104.