シマウミグモ

Ammothea hilgendorfi

(Bohm, 1879)

レア度:いつでも見られる

形態:体の部分は5㎜程度だが、足を広げると10~20㎜位になるウミグモ。体から前方やや下に伸びる肌色の部分は頭吻とよばれる器官。はさみ脚はほぼ完全に退化していて、短い突起くらいでしかない。歩行肢は4本。吻の付け根付近から「担卵肢」とよばれる脚が伸び、オスはこれを使って抱卵する。本種の担卵肢はオスのほうがやや長い。体の背面は濃い赤褐色。脚は全体に肌色だが、やや淡い褐色の縞模様が入る。体の地色は淡褐色で、歩行肢に赤い縞模様があることが特徴だが、模様が薄い、もしくはない個体もいる。歩行肢の指節先端に3本のツメがあることで、よく似たフタツメイソウミグモ Ammothella biunguiculata と識別できる (フタツメのツメは2本)。

生息域:葛登支では平磯の海藻の中や石の上に普通に見られる。日本沿岸で見ても、超普通種。

生態:基本的には海藻の中や石の上で自由生活をしている。しかし、時たまナマコやヒトデの体表から見つかり、その個体数は春~夏に多いようである。宿主とどんな関係かは不明だが、宿主の特異性はあるとされる(Nakamura & Fujita, 2004; Ohshima, 1927)。本種は乱婚型の生殖様式を持ち、他種のウミグモでも同様の報告がある(Nakamura & Sekiguchi, 1980)。本種ではメスのほうが胴が大きく脚が長い性的二型があることが知られる。オスは複数の卵塊を抱えるがそれぞれ別のメスのもので、孵化するたびに決まった順番で持ち変えるために、左の担卵肢につけている卵が新しいものと決まっているらしい(Barreto & Avise, 2008)。

その他:

2020年8月 大友
2020年8月 大友幼体?担卵肢が見えないのでメスかも
2021年3月 山上隠れ上手
2021年3月 山上抱卵中♂
2021年3月 山上

引用文献:

  1. Barreto, F.S., & Avise, J.C., 2008. Polygynandry and sexual size dimorphism in the sea spider Ammothea hilgendorfi (Pycnogonida: Ammotheidea), a marine arthropod with brood-carrying males. Molecular Ecology 17: 4164-4175.

  2. Nakamura K, & Fujita, T., 2004. Ammothea hilgendorfi (Pycnogonida: Ammotheidea) associated with a sea-star, Coscinasterias acutispina (Echinodermata: Asteroidea), from Sagami Bay, Japan. Species Diversity 9: 251-258.

  3. Nakamura K., & Sekiguchi, K., 1980. Mating behavior and oviposition in the Pycnogonid Propallene longiceps. Mar. Ecol. Prog. Ser. 2: 163-168.

  4. Ohshima, H., 1927. Notes on some Pycnogons living semiparasitic on Holothurians. Proceedings of the Imperial Academy 3 (9): 610-613.