ムカシゴカイ

Saccocirrus uchidai Sasaki, 1981

レア度:よくわからない

形態:体長は伸びているときで2~3㎝程度。頭部から長い感触手が2本伸び、体の後端に1対の葉のような形をした突起がある。前口葉の先端、感触手の間に、1対の小さな黒い眼がある。感触手の根元にある左右の黒い部分は”Nuchal organ”という器官で、繊毛が密に生えており、感覚器と考えられている。体の疣足はとても小さく、疣足から伸びる剛毛がかろうじて見えるくらい。100~200体節から成る。体色は一様に淡い褐色で、色が濃い部分は消化管内容物が透けて見えている部分。生殖腺はふつう消化管の左側に発達する。

生息域:葛登支では、階段を降りてすぐの波打ち際で掬った、粗い砂利の中から出現。しかも大量に。

生態:振動にかなり敏感で、少し水が揺れただけでも体をくるくると丸める。頭をかなり小刻みに揺らしながら移動するので、ブルブルと震えているように見える。かわいい。発生と変態の過程は(S. major として)よく研究されていて、厚岸では7月下旬ごろに幼生が捕獲された記録がある(Uchida & Okuda, 1953)。繁殖期は初夏なのだろうか??体後端の葉状突起から粘液を出して、体を海底に固定して生きているとのこと。雌雄異体で、生殖腺の構造はかなり複雑に発達する(Blake & Ruff, 2007)。

その他:S. major という種と混同されていた(Uchida, 1933)が、忍路と厚岸の標本から新種として記載された(Sasaki, 1981)。本来は発達した生殖腺の位置と、疣足の剛毛の形態を参照して同定する必要があるので、暫定的な位置づけ。

2020年11月 大友
2020年11月 大友 体の後端
2020年11月 大友 ぐちゃぐちゃ
2020年6月 青木クロスジムシロと鉢合わせ
2020年6月 青木つぶらな眼が可愛らしい

引用文献:

  1. Blake, A.J. & Ruff, E.R., 2007. Annelida: Polychaeta, in Carton J. T. (Ed.), The Light and Smith Manual, Intertidal invertebrates from central California to Oregon, fourth edition, completely revised and expanded. University of California Press pp.545-618.

  2. Sasaki, S., 1981. A new species of the genus Saccocirrus (Archiannelida) from Hokkaido, Northern Japan. Annotationes Zoologicae Japonenses 54 (4): 259-266.

  3. Uchida, T., 1933. On the occurrence of the Archiannelid, Saccocirrus major Pierantoni in Japan. Proc. Imp. Acad. 9: 128-129.

  4. Uchida, T. & Okuda, S., 1953. Notes on an archiannelid, Saccocirrus major. 北海道大學理學部紀要 11 (2): 175-181.