コンボウシリス

Exogone naidina Öersted, 1845

レア度：いつでも見られる？

形態：体長2～3㎜程度の小型のシリス。体は30節前後から成る。体は頭部と前部の5節くらいが透明で、中部はやや濃い黄褐色、後部は焦げ茶色を呈している。前口葉は前後方向につぶれた長方形で、3対（うち2対は互いに半分ほど重なり合っている）のオレンジの眼点がある。眼の前に3本のこん棒状の感触手が生えるが、短くて透明。頭部先端の副感触手は左右両葉がほとんど癒合して半円状。疣足の背触糸は短くて目立たない。シリス科では珍しく、疣足の腹側にも「腹触糸」という突起があるらしい。体の後端には2本の短い肛触糸がある。ちなみに、第2～4節に透けて見える白い器官は「素嚢（そのう＝嗉嚢）」といい、食物を消化する前に一時的に貯蔵しておくところである。

生息域：葛登支では海藻をいじくりまわすと出現。本種は砂礫中や海藻の根元によく見つかるとされる。分布は世界中にわたる。

生態：シリス科の中でも本種やホソテシリスが属する Exogoninae 亜科の種は、すべて母親が幼体の哺育をすることが知られており（Franke, 1999）、初めて文献に載ったのは本種の観察からである（Oersted, 1845）。Exogoninae 亜科の哺育は、背側、腹側で行う種が混在しているが、本種は腹側で行う。幼体は体の後端で母親にくっつくが、対して母親の疣足の腹触糸の下には、付属用の特別な器官があることがわかっている（観察にはSEMが必要）（Mastrodonato et al., 2003）。おそらく単年生であり、地中海での繁殖期は春～秋と長いが、特に4月頃と9月頃に集中する（Gherardi et al., 2005）。

その他：

2020年11月　大友
2020年11月　山上

引用文献：

  1. Franke, H., 1999. Reproduction of the Syllidae (Annelida: Polychaeta). Hydrobiologia 402: 39-55.

  2. Gherardi, M., Mastrodonato, M., Sion, L., Musco, L., Lepore, E., Sciscioli, M., & Giangrande, A., 2005. Reproduction activity of Exogone naidina (Polychaeta: Exogoninae) in a population from the Apulian coast (Adriatic Sea). Marine Biology 147: 197-203.

  3. Mastrodonato, M., Sciscioli, M., Lepore, E., Gherardi, M., Giangrande, A., Mercati, D., Dallai, R. & Lupetti, P., 2003. External gestation of Exogone naidina Öersted 1845 (Polychaeta, Syllidae): ventral attachment of eggs and embryos. Tissue & Cell 35: 297-305.

  4. Oersted, M., 1845. Ueber die Entwicklung der Jungen bei einder Annelide und ueber aeusseren Unterscheide zwischen beiden Geschlechten. Archiv für Naturgeschichte 11 (1): 20-23. （ドイツ語…だがスケッチがある）