レア度:頻繁に見られる
形態:体は花のように開いている「萼部」と、基質に付着する「柄部」から成る。蕚部には8本の腕があり、それぞれから有頭触手が伸びる。腕と腕の間にはアンカーと呼ばれる突起があり、基質への一時的な付着に使われる。本種のアンカーは横長で、潰れたハートのような形状。内傘表面には刺胞のつまった白い小嚢があり、生殖巣の間の8区間すべてにこの白斑が見られる。そのうち4区間では傘の縁のみに、もう4区間ではより内側にまで白斑が分布する。体色は褐色から緑色までさまざま。北海道では同属の近縁種がいくつか報告されているが、アンカーの形状や白斑の分布パターン、触手群の付け根の構造などで区別することができる。
生息域:北海道では日本海沿い・オホーツク海沿い・道南地方に分布。
生態:ホンダワラ類などの海藻や海草に付着する。主にワレカラ類やヨコエビなどの端脚類やソコミジンコ類を捕食する。
その他:北海道小樽市忍路湾をタイプ産地とする。古い図鑑や論文ではHaliclystus auriculaとして扱われてきたが、この2種は外部形態的にも区別でき、現在ではH. tenuisの学名が使われている。クラゲノナガレボシなどの二生吸虫の中間宿主になり得る(脇ら, 2025)。道南では初夏~夏あたりに多数の個体を見ることができる。長期飼育は比較的難しい。
引用文献:
1.脇司, 新田理人, 髙野剛史, 福森啓晶, 高野弘企 (2025) アサガオクラゲに寄生していた吸虫のメタセルカリア幼虫の種同定と終宿主. タクサ: 日本動物分類学会誌, 59, 34-41.