構造物性研究とは
現代社会におけるテクノロジーの多くは、多様な機能をもつ基礎材料に支えられています。 未来に向けて持続可能な社会の発展を支えるためには、物質の機能のより効率的な利用や新機能の創出が必要です。こうした社会的要請に対して、 我々は物質の構造や機能を量子力学的に理解し新しい機能性物質のデザインを可能とする「構造物性研究」の立場から研究を行っています。 物性発現を担う電子状態の観測を通して、軌道とスピンの織り成すエキゾチックな基礎物性物理への新提案を行い、「温度を下げると大きくなる」負熱膨張材料の原理を電子密度レベルで追求します。その研究対象は基礎研究から応用的な要素の強いものまで多岐に渡ります。
放射光X線を使って「見えないものを見る」
我々の研究室の最大の強みは、大型放射光施設SPring-8をはじめとした量子ビームの活用です。我々の得意分野は、X線回折法を通じて結晶の平均構造を明らかにすることですが、これ自体は実はラボの装置でも可能です。ですが、高輝度・短波長など多くの特長をもつ放射光X線を利用することで、ラボよりもはるかに精確な構造情報を捉え、物質の新しい姿を知ることができます。例えば、物性の担い手である価電子の空間分布を明らかにしたり、結晶内部に存在する局所的な歪を調べたりするためには、放射光X線の力が不可欠です。「見えないものを見る」こと、そしてそれを見るための新しい技法を開発することは我々の研究室の大きなテーマです。
研究のターゲット
結晶中の電子が格子と絡み合うことで生み出される多彩な現象を、構造面から詳しく調べることが我々の仕事です。現在進行中の研究テーマとして、
高圧下/常圧下で生じる電子-格子の絡み合い現象の開拓
放射光X線の照射で構造を変化させる光誘起相転移の解明
分子ジャイロコマの回転機構の調査
負熱膨張材料の体積変化メカニズムの構造的理解
新しい局所構造観察法の開発
などがあります。ですが、これら既存のテーマに関わらず、面白そうなテーマはどんどん進めていくフットワークの軽さが我々の特徴です。
共同研究を通じて活動の幅を広げる
物性物理研究では、物質合成や物質探索、電気抵抗や磁化、比熱などの基礎物性測定、光電子分光や理論計算など、各分野の専門家が研究対象物質の性質を多角的に検証することで、その物質の素顔が明らかになっていきます。こうした中で、我々が得意とする『構造を明らかにすること』は研究の初手であり、基盤となる重要性があります。構造研究における最強のツールである大型放射光施設SPring-8が近隣にあるという恵まれた環境は、研究を強力に推進するための大きな強みです。最先端の研究成果を国内外の物性物理研究者と共有するとともに、自分たちの研究の幅を広げるために、国内外の様々な研究コミュニティーに積極的に参加しています。研究を通じた人材交流も行っており、学生は充実した研究生活を送っています。
片山研での研究に興味のある人たちへ
SPring-8をはじめとした放射光施設では、チームで実験を行います。割り当てられた貴重なマシンタイム中に最大限の成果を挙げるためには、全員が全力で実験に取り組む必要があります。我々がメンバーに求めるのは、こうした研究室の文化を理解し、研究に興味を持って真剣に取り組んでくれることです。研究は誰も踏み入れたことのない未開の原野を切り拓く刺激的な経験です。本気で取り組めばその魅力のとりこになるはずです。研究に全力で取り組もうとしている方が、充実した研究活動を行えるように、そして、将来的には研究室で得た経験や技術・知識を糧として、社会やアカデミックの分野で活躍できる人材になれるように、我々も全力でサポートします。