金沢トポロジーセミナー

金沢にて数学のセミナーを開催しています.題名の通りトポロジーの話題が中心ですが,その時々によって,基礎,応用を問わずセミナーの世話役の興味に基づいて様々な話題の講演を企画したいと思っています.基本的に1,2ヶ月に一度開催するようにしています.

金沢トポロジーセミナーでは講演者を募集しております.ご興味のおありの方は,世話役までお気軽にご連絡ください.


世話役:門上晃久,滝岡英雄,丸山修平,宮地秀樹

過去の世話役の皆様(敬称略):中村伊南沙(佐賀大,2021年度〜2022年度)



お問い合わせ先:宮地秀樹(miyachiあっとse.kanazawa-u.ac.jp)

2024年度

2024529日(

アブストラクト:Sullivanの辞書によれば, Mandelbrot集合の自己相似性とタイヒミュラー空間のBers境界の自己相似性が対応するようである. 宍倉がMandelbrot集合の自己相似性を, Hausdorff次元が2であることを証明することで解決したことに倣って, タイヒミュラー空間のBers境界のHausdorff次元を評価したい.

そのために, Bers境界上の, cuspに対応する点の近傍から他のcuspに対応する点への正則写像を構成し, その微分の評価の議論を紹介する. また時間があれば, このような操作が基本群の表現空間でどのような意味を持つのかについて考えたことを話す.


2024529日(

アブストラクト:双曲曲面間の調和写像を用いると,タイヒミュラー空間を正則2次微分の空間でパラメータ付けすることができる.ここでは,クラウン状の境界や閉測地境界をもつ双曲曲面をターゲットにするような調和写像を考える.近年,このような調和写像の存在性や一意性が整備され,対応するタイヒミュラー空間は,有理型2次微分の空間によりパラメータ付けされる.

本講演では,有理型2次微分の空間における半直線にそった双曲曲面の退化をGromov-Hausdorff収束の枠組みで記述する.またその応用として,半直線に沿った双曲曲面はThurston境界に収束することについて話す.


2024417日(

アブストラクト:量子タイヒミュラー理論の文脈において, タイヒミュラー空間のトレース写像の量子化の存在といくつかの性質が予想された. そのような量子化(量子双対写像)が穴あき曲面[Allegretti--Kim]とマーク付き円盤[Allegretti]に対して構成されている. Allegretti--Kimの構成法はスケイン代数におけるBonahon--Wongの量子トレース写像を用いており, 見通しの良い構成になっている. この量子化に対して期待される性質の1つは, 量子双対写像の像の構造定数の正値性, いわゆる正値性予想である. Mandel--Qinはテータ基底とそれらの量子双対写像が一致すること, その帰結として正値性予想が従うことを示したが,スケイン代数を用いた図式的な正値性の理解は未だ残された重要な問題である.本講演では, 被約状態付きスケイン代数を用いて構造定数の正値性の理解を試みる. 本講演は, 石橋典氏(東北大学)との共同研究に基づく.


2024410日(

アブストラクト:ナノワードとは,文字列(ワード)の組によって射影構造をもったワードであり,成分数を一般化するとナノフレーズと呼ぶ.これらはワードに対して,ある種のホモトピー構造を入れたものであり,ナノフレーズのホモトピー構造は無限個の圏を生み出す装置となっている.2005年頃にTuraevは,ナノフレーズ理論を導入するとともに,Jones多項式の定式化に必要な圏(pseudolinks)と標準的なlink quandleを定義する圏(quasilinks)それぞれを,統一的な視点から「より一般的なナノフレーズ(general nanophrases)の部分圏の一種」としてそれぞれ実現させた.Turaevは写像類群やTQFTへの寄与を念頭においていたと考えられ,Gauss phrases またはfree linksという「情報の少ないナノフレーズ」も導入しており,これについては「1成分のGauss phraseが非自明である」というGibson, Manturovの同時期の独立な結果がある.我々は,上に登場した圏たちを並べた列に注目した:

general nanophrases —> virtual links —> pseudolinks / quasilinks / virtual strings —> Gauss phrases

この射影列における圏の関係に着目すると,ある圏(例えばpseudolinks)で不変量を構成できれば,それをカバーする圏(例えばgeneral nanophrases)へと不変量を持ち上げられる(lifting).今回,liftingの非自明な方法を2つ見つけたので紹介する.このような道具は調べたい対象を被覆する対象の検出や,調べたい対象の射影による特徴付けに有効だと考えられる.講演では構成についてなるべく平易な説明を心がける.  

内容は福永知則氏(福岡工業大学) との共同研究(arXiv:2401.04506)に基づく.

2023年度

2024124日(

アブストラクト:有向双曲閉曲面上の平坦円周束について、その Euler 数の絶対値は底空間の Euler 標数により bound され (Milnor 1958、Wood 1971)、Euler 数が極値を取る時、平坦円周束のホロノミー表現は底空間の一意化より得られる標準的な表現と半共役となる(松元 1987)。Burger-Iozzi-Wienhard (2014) は、ホロノミー表現の有界Euler数を用いることで、これらの結果を有限型の双曲曲面に対して定式化・一般化した。

一方、オリジナルの Milnor-Wood の不等式・松元の剛性定理に関して、1990年代に Frankel と Thurston が葉層調和測度を用いた解析的な証明を提案した。この証明手法を精査することで、Burger-Iozzi-Wienhard の定理に対して解析的な別証明を与えられたので、本講演ではその解説をしたい。

本講演の内容は、松田能文氏、野澤啓氏との共同研究であり、プレプリント(arXiv:2207.08411)に基づく。  


2023126日(

アブストラクト:We prove that if the Futaki invariant of a polarized Bott manifold (X,L) for any ample line bundle L vanishes, then the Bott manifold X is isomorphic to the products of the projective lines. This talk is based on a work joint with Kento Fujita (algebro-geometrical approach), and another independent work joint with Hajime Ono and Yuji Sano (convex geometrical approach).



20231025日(

アブストラクト:種数gの閉双曲曲面上の閉測地線を写像類群の作用で動かしたもの全体において,長さL以下のものの個数はcL^{6g-6}(c>0)に漸近することが知られている(Mirzakhaniの結果).閉測地線は基本群の元の共役類に対応するので,一般化して"基本群の有限生成部分群の共役類"の個数の数え上げ問題を考える.この場合,有限生成部分群の共役類に対してその"長さ"の測り方が問題だが,重み付き有限生成部分群の共役類の完備化であるサブセットカレントを利用することで,ある種自然な測り方でMirzakhaniと同様の漸近公式が得られることが分かった.本講演では当該分野の専門知識をあまり仮定せず,上記結果を解説したい.



2023913日(

アブストラクト:平坦曲面上の点を錘点に関する一意最短性で分けて得られるセル分解をボロノイ分解という。平坦曲面の``自己アフィン相似性の群"であるVeech群の計算においては、ボロノイ分解に付随する組合せ構造を用いて基本領域を近似・特定するEdwards-Sanderson-Schmidt(2022)の結果が最近の進展として知られている。

この組合せ構造はサドル接続のベクトル・結ぶ錘点・通過するシートの情報からなる圏としてアフィン不変量になっており、これにはHaiden-Katzarkov-Kontsevich(2017)の結果による(平坦曲面 対 三角圏の安定性条件)の対応に基づきVeech群に対するアプローチの改善とより一般の設定への展開を期待する。

折り紙はシートとベクトルの情報を揃えて扱える特別な平坦曲面である。その組合せ構造について、アフィン変形・切り貼り操作に対応する変換式と圏としての具体的な構成方法を得た。これらのことについて紹介する。



2023913日(

アブストラクト:有限生成群の増大度とは、与えられた有限生成系に関する語距離について、単位元を中心とする距離球が半径に関して増大する早さを表す量である。Cannon,Floyd, Parry, Wagreichらにより、双曲平面の離散鏡映群の増大度がSalem数, Pisot数と呼ばれる実代数的整数となることが示された。

双曲空間の離散鏡映群はコクセター群の例であり、生成系である鏡映を定めている超平面により囲まれる領域はコクセター多面体と呼ばれる。

コクセター多面体の境界の双対多面体はコクセター群のナーブと呼ばれる単体複体に対応している。

本講演では、ナーブが2次元球面と同相であるコクセター群の増大度に関する結果を紹介する。



2023712日(

アブストラクト:ライデマイスタートーションとは、おおよそ複体の交代積で定義される。ここで複体は閉多様体Mのある局所系係数の胞体複体とする事がよくある。但しその複体が非輪状となる条件下での研究が多く、実際トーションの定義は容易である。輪状に関してはMの次元が偶数の場合にWittenやSozen等によりトーションが定義され研究されていた。

本研究はMの次元が奇数かつ輪状の場合に、トーションの定義の一案を紹介する。この定義とTuraev-Farberによる試みとの比較もする。応用例として、輪状アーベルトーション、絡み目のアレクサンダー多項式の拡張、SU(n)指標代数上の体積要素などが定義できる。Mが3次元の時には輪状トーションが具体的に計算できることも多々ある。

本講演では、輪状トーションの定義の難点と、その克服案としての定義を紹介する。また応用例も紹介する。なお本研究は柳田幸輝氏と脇條奈生子氏(東工大)との共同研究である。



2023628日(

アブストラクト:双曲的Riemann面SのTeichmüller空間T(S)は, S上の有界正則二次微分が成すBanach空間B(S)の有界領域に双正則に埋め込める. これをBers埋め込みといい, このとき得られるT(S)の境界はBers境界と呼ばれる. T(S)の境界は, Sの複素構造の退化したものが存在しているから, その意味で重要である. 

Bers-Maskitは, Sがcompacの場合, Bers境界には全退化かCuspのいずれかに限ることを示した. これは, 複素構造の退化は, Sの位相的な退化を引き起こしていることを意味する. (Sが有限型の場合も同様のことは示されている.) 一方で, Sが無限型の場合, Bers境界には,全退化でもcuspでもない, Sと同相な曲面が存在することを, 具体的な構成方法によって証明した. これを擬Fuchs b群と呼ぶことにする. 

 

本講演では. まず擬Fuchs b群の構成について紹介する. 次に, Sの部分領域 S’ から離れると漸近的等角になるBeltrami係数によって代表される点 X ¥in T(S)を考える. XをBers埋め込みした時に得られる正則二次微分のS^¥ast ¥setminus S’ ^¥ast における双曲L^inftyノルムは, 減衰していくことを証明する. (^¥ast は共軛Riemann面を表す)

この二つを用いることで, ある無限型Riemann面Sにおいては, 擬Fuchs b群の近傍には, Maximal cusp (Sのパンツ分解を与える本質的単純閉曲線を全てpinchしたもの)が存在しないことを証明する. これは, “Maximal cusps are not dense” であることを意味する. このことは, 有限次元におけるMcMullenの結果 “Maximal cusps are dense” とは相反する結果である.



2023628日(

アブストラクト:Teichmüller空間の研究において扱う曲面上の極値的写像にはいくつか種類がある.ここではエネルギーに対する極値的写像である調和写像を考える.このとき,Teichmüller空間上の大域座標を,各点にHopf微分と呼ばれる2次微分を与えることで構成できる.Wolfは,曲面がコンパクトな場合に,この座標を通じてTeichmüller空間のThurstonコンパクト化が復元できることを示した.本講演では,コンパクト性を外した有限型曲面の場合でも,同様の結果が成り立つことを話す.




202367日(

アブストラクト:本講演では, 計算機代数の手法を用いて, 多項式函数がtameであるか否かを判定する方法とbifurcation setを求める計算法を紹介する。

Broughton(1983年)はbifurcation setの概念を導入し, 多変数多項式が定める複素函数のトポロジーの研究を行った。多項式がtameであれば, そのbifurcation setはcritical valuesのなす集合と一致することを示している(1988年)。本講演では, comprehensive Groebner systemを用いることで, 多項式がtameであるか否かを判定するアルゴリズムを構成できることを紹介する。

Parusinski(1995年)は多項式が無限遠孤立特異点を持つ場合, そのbifurcation setを特徴付ける方法を与えている。パラメータ付きのlocal cohomologyを用いることで, Parusinskiの結果をアルゴリズムとして実現する方法について議論する。準素イデアルに対するNoether operatorsを用いることで, bifurcation setを求めるアルゴリズムを構成できることを紹介する。

2022年度

2023224日(

アブストラクト:It is known that there are deep analogies between algebraic number theory and low dimensional topology. Hillman-Matei-Morishita and Kadokami-Mizusawa proved an analogous theorem for links corresponding to Iwasawa’s class number formula. In this talk, as Cuoco-Monsky generalized Iwasawa’s formula to $\mathbb{Z}_p^d$-extensions, we will give two asymptotic formulae for the first homology groups of $\mathbb{Z}_p^d$-covers of links in rational homology $3$-spheres. Moreover, when $d=2$, we will explain that Iwasawa $\mu$-invariants can be arbitrary non-negative integers by giving the invariants of twisted Whitehead links. This is a joint work with Jun Ueki.


202321日(

アブストラクト:トーラス被覆結び目は、2つの可換なブレイドから定まるトーラス型の曲面結び目である。トーラス被覆結び目$F$について、$F$の結び目群の既約なメタベリアン$SU(2)$表現を考え、その個数を$F$のknot determinantを用いて表す。これは1次元の結び目の結び目群に対するLinの結果のアナローグである。


2023124日(

アブストラクト:ストーン空間と連続写像の圏はグロタンディーク位相を持ち,その上で定義される層のことをcondensed setと呼ぶ.一方,コンパクトハウスドルフ空間の圏も同様にグロタンディーク位相を持ち,その上で定義される層は,基礎論的な若干の修正を加えればpyknotic setと呼ばれる.BarwickとHaineが公開している文献では,condensed setのことをpyknotic setに対する``essentially the same notion"と述べている.実際,condensed setがコンパクトハウスドルフ空間の圏上の層を同型を除いてただ一つ定めることが証明できる.応用としてcondensed setの圏がモデル構造を持つことが示せる.


2022111日(

アブストラクト:本講演は東谷章弘氏(大阪大学)との共同研究に基づくものである。カンドルは結び目の操作や空間の点対称を公理化したような二項演算をもつ集合のことである。一方で我々のなじみのある二項演算といえば、群の演算が挙げられる。そのようななじみのある群(とその群の自己同型写像)から一般化アレキサンダーカンドルとよばれるカンドル演算を作ることができる。我々は有限群から得られる一般化アレキサンダーカンドルのカンドル構造が群の言葉でどのくらい翻訳できるかという視点で研究をすすめてきた。その結果、有限一般化アレキサンダーカンドルのある特別なクラスの中では、群の言葉でカンドル同型性の必要十分条件を得ることができた。

本講演では、上記の結果の解説および、その結果から得られるいくつかの系について紹介する。


20221019日(

アブストラクト:本講演は関口 昌由,鎌田 勝(国立木更津工業高等専門学校)との共同研究に基づくものである.

 Mercatは閉曲面上の4角形分割に離散複素構造を導入し,離散リーマン面を定義し,周期行列を導出するアルゴリズムを与えた.この離散複素構造は通常の複素構造と類似性があり,セル分割を細かくしていくと,閉曲面の複素構造に近づいていくものである.さらに,BobenkoとGüntherは,Mercatの離散リーマン面をより精密に扱い,新たな離散複素構造を定義した.O(3)シグマ模型とは,球面からそれ自身へのなめらかな写像から定まる汎関数によって記述され,この汎関数はエネルギーともみなせる.

 平面4角形グラフ上の離散リーマン面を考える.その頂点上の複素数値関数およびO(3)シグマ模型から定まる,重み付き離散ディリクレエネルギー(以降,離散エネルギー)と重み付き離散面積(以降,離散面積)を定義し,それらの間の不等式の導出について説明する.これはBelavinとPolyakovの不等式の離散版とも言える.対角線が直交する一般の4角形グラフに対して,離散(反)正則関数が,離散エネルギーから導かれるオイラー-ラグランジュ方程式を満たすことについても述べる.

 また,特別なひし形格子上において,離散面積は離散べき関数の写像度とみなすことができる.さらに,格子間隔を0に近づけた際に,離散エネルギー,離散面積,オイラー-ラグランジュ方程式がそれぞれ連続な対応物に近づくことについても紹介したい.


202288日(

アブストラクト:3次元球面内のリボン型特異点集合のみを持つ特異円板の境界となり得る結び目はリボン結び目と呼ばれる。Lammはリボン結び目である結び目の対称和の特徴づけをAlexander多項式や結び目群等を用いて行い,すべてのリボン結び目は対称和であるか,という問題を与えている。特に最小交点数が10以下の素なリボン結び目や2橋リボン結び目は対称和であることが知られている。本講演では,リボン結び目や対称和が合成結び目である場合に得られた結果について紹介する。

2022727日(

アブストラクト:4次元多様体上の完全不可積分な二次元分布をEngel構造と呼び,Engel構造を備えた4次元多様体をEngel多様体とよぶ.Engel多様体は,特性葉層と呼ばれる1次元葉層構造を持つ.特性葉層の葉空間は接触構造を持つ.逆に,3次元接触多様体は,Cartan延長と呼ばれるEngel多様体を持つ.これら双方向の構成はそれぞれ関手を与える.さらに,Engel多様体は,特性葉層の葉空間のCartan延長に値を持つ自然な局所Engel同相写像を備えている.これを展開写像と呼ぶ.

葉層構造の葉空間は一般に多様体とは限らないが,今回は展開写像の値域が多様体の場合を考える.上記の関手は,Engel同相群から接触同相群への群準同型を導く.今回の講演では,もしも展開写像が被覆写像でないならば,この群準同型は単射であることを示す.

展開写像を用いたEngel多様体の研究は,先駆者であるMontgomeryの研究にも既に現れている.MontgomeryはEngel同相群がある意味で``小さい"ようなEngel多様体を構成した.一方,Engel同相群が自明群であるようなEngel多様体の存在は未解決であった.最後に,主結果の応用として,Engel同相群が自明群となる例を構成する.


2022711日(

アブストラクト:2以上の自然数gに対し双曲4g角形P(g)をZieschang, Vogt, Coldeweyによる標準多角形とする。P(g)の向かい合う辺どうしを貼り合わせることで、種数gの標識付きリーマン面が得られ、標準多角形全体の集合は種数gの標識付きリーマン面の変形空間、つまりタイヒミュラー空間と同一視できる。SchmutzはP(g)から定まる6g-5(=6g-6+1)個の測地線の長さ関数を用いて、タイヒミュラー空間の大域的座標を構成した。また超楕円的リーマン面に対応するP(g)の特徴付けを与えた。 今回の講演では超楕円的リーマン面に対応するP(g)から定まる4g-2個の角度関数を用いて、超楕円的リーマン面がパラメータ付けできることを示す。ここで角度関数の個数4g-2は6g-6次元のタイヒミュラー空間における超楕円的リーマン面の変形空間の次元である。特にg=2の場合、6(=4×2-2)個の角度関数はタイヒミュラー空間の次元6(=6×2-6)に等しい個数の大域的座標になっている。7(=6+1)個の角度関数によるタイヒミュラー空間の大域的座標は奥村により構成されている。


2022628日(

アブストラクト:二つの内容について講演する。

前半:ある強い条件下では、与えられたannulus presemtaion を持つamphichiral knotにannulus twistを施したものは、再び、amphichiral knotになることを示す。

後半:最近、Agolはリボンコンコーダントが(向きづけられた)3次元球面内の結び目全体の集合に半順序を定めることを証明した。この半順序集合に関して、tight fibered knotが極小元となることを紹介する。特に、自明な結び目を含むトーラス結び目が極小元であることを紹介する。後半の研究は、田神慶士氏(広島修道大学)との共同研究である。

2022518日(

アブストラクト:2変数多項式不変量のHOMFLYPT多項式が一致する結び目の無限族は金信泰造氏によって発見されている。しかし、同じく2変数多項式不変量のKauffman多項式が一致する結び目の無限族は未だ知られていない。本研究では、これら2変数多項式不変量の一方の変数で整理したときの係数多項式に注目する。河内明夫氏の結果やそれとは異なる手法での宮澤康行氏の結果で、HOMFLYPT多項式に関しては、任意の絡み目の任意の次数までの係数多項式が一致する絡み目の無限族が構成されている。本講演では、HOMFLYPT多項式とKauffman多項式の両方の場合に、そのような絡み目の無限族が存在することを示す。

2022421日(

アブストラクト:多様体上の層に対し、その層の特異性を記述する超局所台とよばれるものが余接束の部分集合として定義される。この超局所台を介して余接束のシンプレクティック幾何を層を用いて研究することができる。本講演では、余接束の部分集合に対する分離エネルギーの評価を層理論的に与える方法について概説する。このために層の間の距離を導入するが、この距離は位相的データ解析の分野で重要な役割を果たすinterleaving距離から着想を得ているので、このことについても解説したい。本講演は池祐一氏との共同研究に基づく。

2021年度

2021年921日(


2021年77日(水)

2021年5月12日(水)