救急科について

Our Activity

はじめに

救急医療は冬の日本海の荒波にさらされる防波堤のごとく、世相の変化を最初に受け、常に大きな変化を

求められます。


未曽有の新型コロナウイルスパンデミック、医師の働き方改革、そして超高齢化社会…


大きな変化への対応に救急医療はしばしば翻弄され、時に迷走し、破綻へと追い込まれることもあります。


それを回避するためには

シンプルな基本姿勢を徹底する」

この戦略に尽きます。


この複雑な方程式に対して私たちの目指す解は、

立場を問わず、ただ困っている人に率先して手を差し伸べる義務を持つ」


私たちはnoblesse obligeの理念を診療・研究・教育の軸とします。

診療

「臓器」を救うから「人」を救うへ ―マエストロ的診療―

医学的知見が深くなるにつれ、各臓器別診療は加速度をもって進んでいます。

その各臓器の中でさえもセクショナリズムが浸透していく中、救急診療は臓器を横断的に診療する、全身を診る数少ない診療科となりつつあります。

救急患者は、多発外傷や敗血症など、臓器をまたぐ多臓器の機能障害を有する人が多く存在します。人全体を診て異常に速やかに対処し、その人に苦痛を与えている障害臓器を診ていく診療をいたします。

専門的な「臓器」治療を“繋いで”「人」全体を治す。

オーケストラの指揮者のような診療にこだわりたいと考えます。


多彩な救急診療に対応 ―型を持たないブルース・リー的診療―

救急医療システムには、集中治療型・ER型・各科相乗り型などがあります。

一方、必要とされる救急医療人材は、各病院の地域での位置づけやスタッフの内訳、地域住民の特性、世相などにより全く異なります。

困っている人に“率先して”手を差し伸べる“義務”をモットーとし、型を決めず、逆にいかなる型も操れて、与えられた状況・環境に柔軟に対応できる診療をしたいと考えます。

ドクターカーを含めた病院前診療から集中治療までをシームレスに行う一貫した救急診療を行います。


断ることは「いたしません」―Noと言わないドクターX的診療―

苦しむ患者さんとその方々を搬送する救急隊員にとって、一番の不幸は搬送する病院がないことです。

行き場を失い困り果てた患者と救急隊員のため、当院に救う機能が残されている限り、救急搬送を断ることは「いたしません」

私たちはPerfect Response of Ambulatory Demandを追求していきます。

研究

現場の声から拾い上げた疑問や困っていることを解決するために、我々は以下の研究を行います。


①救急隊の疑問・悩み解決

1.心肺蘇生患者搬送時の救急隊離脱のタイミングの検討

2.胸骨圧迫時の換気量と神経学的予後

3.超高齢化社会におけるDNARの取り扱いの検討


②看護師・医師の負担軽減

1.救急外来・災害での自動トリアージシステム


③研修医の不安解消

1.救急診療遠隔教育システム


④各診療科の働き方改革支援

1.救急患者の遠隔診療システム


⑤患者、患者家族のハッピーのために

1.非侵襲的交感神経活動測定と患者予後

2.心肺蘇生後症候群回避の研究

3.敗血症性心筋症の機序解明と介入方法の検討

教育

教科書で学べない「臨場感」重視

救急の醍醐味は、臨場感の一言だと思います。

臨場感は教科書ではなく、実際の症例でしか得られません。

実際の診察や治療は教科書のようにスムーズにいくことはほとんどありません。

スムーズにいかないことを反省し検討し、学ぶ毎日です。

とにかく、患者さんに触れることから始めましょう。

どんな患者さんからも、必ず学びが1つ以上あります。

raw caseを素材に、カンファレンスや論文をレビューしながら、教育をします。


「森」を診て、「土壌」を診て、「木」を診る

全身を診て、全身を管理できる教育をします。

バイタルサインの安定化のエキスパートとなれるような教育をします。

それは、単なる流れ作業であってはならないと思っています。

技術も重要ですが、救急医は「判断こそすべて」だと思います。

意識、呼吸、循環、体温の生理学的背景から、急性期患者を診療できる

教育を重視します。


専門医の速やかな取得

専門研修基幹施設認定を取得し、名ばかりではない実のある救急専門医を育てます。

一施設での経験に限界がある場合は多施設と連携し、速やかな専門医取得を約束します。


臨床に直結する大学院での研究姿勢

研究に従事すると、臨床における学習の機会が減ってしまうのではないかという不安があるかもしれません。

研究は本来の特性から、壁に直面することの連続です。

予測した結果が得られない場合、他のアプローチや違う解釈を考え、苦悩しながら進んでいきます。

この過程は、臨床に極めて重要で、臨床力・診療力をつけるうえで欠かせない経験です。

一度は研究にどっぷり浸かることは、救急医には必要だと考えます。


「柔軟」なオーダーメイド教育

一カ所で学ぶことには限界があります。

他の施設の空気を感じてくることは、仕事上も人格形成上も重要です。

人生には刺激が必要です。

その刺激の程度や種類は個人によって異なることでしょう。

私たちは、そんな個人の思いを最大限に尊重し、金沢大学内はもとより、県外や海外の教育連携施設に派遣して、その個人のキャリア形成の目指すところを常に共有しながら、オーダーメイド教育をしていきます。

以上のことは、患者さんにも医療スタッフにも研修医にも学生にも、困っているすべての人に率先して手を差し伸べて笑顔にする義務がある、という理念が根幹です。