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Kamishibaist となみん
これは↑紙芝居をするときに使う枠(紙芝居舞台)です。一番ポピュラーなもので童心社製です。B4よりちょっと大きなサイズの紙芝居が入ります。入れる場所は一か所だけです。ここから、一枚抜き、それを一番後ろに差し込んでいくことで物語が進んでいきます。そのため、絵はこの【片方にだけ動く】特性を利用しが描かれ方をしており、抜き方のテクニックを駆使すると静止画とは思えない、動きのある物語になります。
絵は一枚一枚バラバラで、裏に縦書きで字が書いてあります。抜いた画面を一番後ろに差し込みますから、①場面の内容は一番最後の画面の裏に、②場面の内容は①場面の裏に書いてあります。
デフォルメしてある絵
ネパール人の描いた山
Q:紙芝居って、どこの国の人もみんな子どもの頃見たことがあるんじゃないですか?
A:いいえ!紙芝居というのは、1930年頃日本で開発された日本独自の形式です。ですから、学習者(外国人)はほとんどの人が初体験です。
Q:紙芝居独自の形式って何ですか?
A:一枚一枚の絵がバラバラになっていて、絵の後ろに文字(story)が書いてあります。演じる人が一枚一枚右に抜いていくことでお話が展開していきます。このような形は世界的にも珍しい形式だそうです。日本の引き戸の文化(襖や障子等)が関係あるのではないかとも言われています。
Q:紙芝居の良さってどこにあるのですか?
A:それは「作者の伝えたいこと(想い)に、見ている人を共感させる力」だと思います。掃除機のダイソン並みの強力な吸引力があります。そして、その場の空気を和やかにし見ている人の脳裏に同じ世界を描きます。違う文化の人たちも同じ世界観を持ってお話を理解していきますから、伝える内容に大きなズレは出てきにくいです。
Q:もう少し詳しく教えてください。
A:例えば、「昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがおりました。おばあさんは川へ洗濯におじいさんは山へ芝刈りに…」と聞いた時、日本人の思い浮かべる山は、里山でしょうがネパールの人が描く山は↑上に載せたような山でした。「おじいさん、おばあさん」という単語から連想する人も20歳前後の留学生が思い浮かべる自分の祖父母は50代くらいだったりしますし。ですから、同じ絵を見ながら聞くというのは言葉とイメージのズレが少ないのです。また紙芝居の絵は遠目が利き、見てすぐ理解できるよう大胆に処理され、余計なものは描かれていません(↑の絵)。ですからイメージがよりストレートに伝わります。文章も絵を見てわかることは省き文字化していませんから、言葉が端的でわかりやすく学習者(外国人)にも聞きやすいです。
Q:でも、方言とかこなれた日本語が多いですよね?
A:はい、その通りです。でも、ここも紙芝居の特性が生かされます。まず、絵があるので何となく理解できます。また、観客は文字は目にしないので演者の声に集中し、その声や表情からニュアンスを読み取ります。そして何より、紙芝居は読み手と観客がコミュニケーションが取れる双方向のメディアなのです。ですから、演者が観客に合わせて言葉を補ったりしながらすすめることができます。ここが学習者(外国人)に見せるのに使いやすいポイントです。こなれた日本語は、こちらが思っている以上にすんなりと受け入れてくれます。
Q:なるほど。では絵があってお話を伝えるのなら、絵本のでもよいのではないでしょうか?
A:もちろんです。でも絵本と紙芝居には、お話を伝える形式に違いがあります。絵本は個々が読むように作られていますが、紙芝居は大勢で見るように作られており、そもそも最初から作られ方が違っています。絵本では【個の感性】が育まれ、紙芝居では【共感の感性】が育まれると言われています。どちらも大切です。
Q:絵本の読み聞かせでもよいですか?
A:語学学習で、物語を丸ごと楽しむ、特に聞いて楽しむという機会はあまりありません。ですから、その意味ではとてもいいと思います。私もします。でも、絵本はそもそも大勢に向けて見せながら読むことを想定して作られていません。絵は繊細で細部にわたって作者の想いが込められ描かれているものも多いですから、大勢に向けて絵を見せながら読み聞かせるのは難しいです。プライベートレッスンなどで扱うには絵本はとてもいいと思います。
Q:紙芝居って、古臭くないですか?それに子供っぽく思えますが…
A:私も最初そう思いました。でも、百聞は一見に如かずです。やってみてください。使ってみればわかります。私が教えている20歳前後の学習者(外国人)にはとてもわかりやすく大人気です。子どもっぽいから嫌だという声はほとんど聞きません。
Q:見せるだけでいいのでしょうか?
A:もちろん、それでいいです。でも、そのうち見るだけでは飽き足らず、必ずやりたくなります。
Q:どうやって授業に取り入れればいいのしょうか?
A:それは、このあとをご覧ください。↓↓↓
紙芝居を日本語の授業に取り入れるには、提示する順序が大切です!
手順1:紙芝居を見る⇒物語、まとまった文を味わう
日本では図書館に行けば必ず紙芝居のコーナーがあり、リクエストすれば取り寄せてもくれます。まずは手に取って見てみてください。日本語教師の視点で見るとどれが使えそうかがわかります。例えば「七夕の時期に日本文化の紹介として見せる」という視点で探すといくつもあることがわかります。その中で自分にしっくりくるものを選んで授業の中に取り入れてください。見せるだけなら15分あれば十分です。また、読み方がうまいとか下手だとかはあまり関係ありません。自分の先生がやってくれることが新鮮だし嬉しいのです。きちんと下読みをして練習していけば拍手喝采間違いなしです。わからない単語、知らない文法があっても大丈夫です。絵が補ってくれますから、細かいところにとらわれずにお話の世界が楽しめます。お話を楽しむことに大人も子供もありません。10分から15分あればできますから、是非ここからやってみてください。たくさん観る(多観)先生の声(日本語)をたくさん聴く(多聴)がおすすめです。
手順2:紙芝居の練習
「教師の演じる紙芝居を見る」を何回か体験すると、必ず「自分もやってみたい!」という学習者が現れます。一人でも二人でもそういう学習者が出てきたら、すぐにやってもらいましょう。ここでやりたくない人(恥ずかしがりやさん)に無理強いしてはいけません。楽しそうにやっている人を見ると、その姿を見て必ず次に続く学生が現れます。うまく演じられなくてもかまいません。チャレンジしたことが大切で、楽しくやることを第一にします。細かい発音にとらわれず、どんな思いでその文を言うべきなのかを伝えてください。徐々に上達するクラスメートを見て「自分にもできるかも⁈」と後から一歩を踏み出す学習者も多いです。読みの練習は、一人で全編でもいいですし、何人かで分担するのもいいです。一人の場合は8枚くらいの短いお話がいいです。誰にも【演じてみたい】という気持ちがあります。日本のアニメが好きで声優さんの真似をして声を出したことのあるという学生も多いです。その気持ちが語学学習とマッチした時、本人も思ってもみないような力が発揮されます。
「子どもっぽい、お遊びっぽい」と思われるようなら、【発音指導】という名目で紙芝居を使うととても良いです。伝わるように話さなければなりませんから、言葉に命が吹き込まれます。また、自分の想像で話すのではなく絵による縛りがありますから「この絵の中の、この表情のこの人が、こんな場面で話しているから、そういう感じで言ってみてください」のように指導すると教師が言わんとすることがはっきり伝わります。これは、生身の人間が演じる演劇とは違うところです。ドラマメソッドのように、本人が演じる演劇の場合、脚本から掴む役のイメージは、演じる人も指導者も全てが脳内にありますから、どんな風に発話すればいいのかが共有しにくいです。また、素の自分の照れが邪魔をして棒読みになってしまい、上達するまでに時間がかかりますし、暗記もしなければなりませんから、表現の練習より覚えることに力が割かれてしまいがちです。その点紙芝居脚本は読めばわけいいですし、絵という共通のものがありますから、文脈の持つイメージの共有が容易です。また、自分が話しているのではなく「この人が言っているのだ」と思えるからか、思いの外早く、照れずに言えるようになります。練習を見ている人もイメージを共有しますから「もっと怖そうに言った方がいいんじゃない?」「そんな感じ!よくなったね!」などと練習の成果を共に喜び、不思議な連帯感が生まれていきます。
しかしそうは言っても、クラス全員がやる気になるとは限りません。私は「やってみない?」「やってみようよ!」という声かけをずーっと続けますが、決して無理強いはしません。絵を見て場を共有し、聞いているだけでも間接的に発音指導になるからです。それは、見ている人たちがいつの間にかキーフレーズを口ずさんでいることがよくあるからです、何度も何度も繰り返し練習しているクラスメートを横目で見ているうちに、おそらく脳内でリピートしているのだと思います。「自分だったらこういうな。」「先生が言っているのと違う。こうじゃないの?」といったように。これも語学に紙芝居を使う効用の一つです。絵という共通認識が容易で、他者がどんな場面でどんな気持ちで、どんな風に言っている言葉なのかがはっきり共有出来ているからこそだと思います。
「自分はやりたくないけど、他の人のを見るのは好き」な人もいます。そいういう人には「観客役」をお願いします。ポイントは「これは大事な役どころなのだ」ということを伝えることです。「良い役者は良い観客が育てる」と言います。茶化すことなく、きちんと見てダメ出しをしてくれるクラスメートがいると演じる方もやりがいがあるのです。この時、ダメ出しは批判ではないこと、ダメ出しをする人もこの授業の中で大切な役割を担っているのだということを共通認識とします。ダメ出しの時、私は日本語以外もOKにしています。
手順3:紙芝居の実演
最初は楽しい練習も、そのうち必ず飽きが出てきます。そこで、最後は実演発表会です。時間が取れれば校内で、取れなければ他のクラスにお邪魔する形で行うのが一番やりやすいです。学期末、年度末のフリーな時間や文化祭的な時間を利用させてもらうといいです。私が勤務する日本語学校の場合、2年生で紙芝居授業をすることが多いのですが、校内でやると「来年は自分もやりたい!」と思ってくれる学習者が必ずいます。紙芝居は「実演が前提」に作られていますし、裏に書いてあるものを読めばいいのですから、どんなに恥ずかしくても、どんなに緊張しても、練習さえすれば失敗はありません。そこが理解できていると、発表の場が決まり、発表の日が近づくにつれ練習に熱が入ります。
また、この実演発表の場を校外【地域社会】に設定するとより効果的です。
日本語がぺらぺらならともかく、まだまだ日本語が流暢でない留学生(外国人)が、素の自分(丸腰)で地域社会という戦場(大げさですが)に入って何かをするのは本当に大変なことだと思いますがが、ここで彼らの武器になるのが、この紙芝居です。しかも、この武器は見ている人を笑顔にする魔法の武器です。これさえあれば、地域社会に入って行くことは簡単です。
地域社会を考えた時、外国人留学生も立派な地域社会の一員です。ですが、日本語がおぼつかない留学生は地域から「支援を受ける」ことはあっても、なかなか地域の一員として「貢献できる」機会がありません。留学生が自らの持つもので日本の地域社会に貢献出来たらどんなにいいでしょう。もちろん、アルバイト等で頑張ってくれていますが、多くは宅配便の荷物の仕分けや弁当工場での仕事などの裏方で、言葉を使わない作業を担っている人が多く一般の方々との交流はあまりありません。彼らは習った日本語を使って地域の日本人とコミュニケーションを取る機会が少ないのが現状です。でも大丈夫。練習した紙芝居は彼らの武器、使えるアイテムになります。この紙芝居という武器があれば、自分の力で、たちまちみんなを笑顔にさせられるのです!
紙芝居を使った日本語の授業の一番の肝になるのが、この地域デビューです。発表の場を設けることで、「誰に向けてやるのか」「どんな風に話せば伝わるのか」「何が伝えたいのか」が明確になり、練習にしても、紙芝居製作にしてもどれもが一つの目標に向かって進んでいきます。保育園や小学校での発表は、子どもたちの素直な反応に刺激を受けますし、地域イベントでの発表は、地域の人々との笑顔の交流が実現します。練習の成果が手に取るようにわかるのです。
これまでの地域交流は、個人の持ったもの(素質)に依存していました。気の利いた学生がいるとスムーズにいき、そうでないと精彩を欠いたり、緊張のためうまくいかないことも多かったです。紙芝居という核になるものが一つあると交流はとてもスムーズで双方にとって実りの多いものになります。以下はこれまでしてきた紙芝居を使った交流例です。
発表先①:保育園
地域には公立の保育園~民間の保育園までたくさんの保育園があります。地域社会との交流を取り入れている保育園はたくさんあります。学生たちも、小さな子供たちに見せるというと心理的なハードルが低くなるようです。でも逆に小さな子供たちは遠慮がありませんから、面白くなければ騒ぎ出したり立ち上がったりします。そのことを伝えると学生たちはぎょっとします(笑)「発音が悪いとわかってもらえないこと。子供たちの反応をよく見て演じること。」を伝えます。保育園での実演の際は、最低でも2回交流時間を設定し、一回目は普通の交流、主に保育園主導で子どもと遊びます。そして2回目は「この前遊んだあの子たちを紙芝居で喜ばせよう!」と目標をはっきりさせています。
発表先②:小学校
小学校には「国際理解教育」最近では「総合授業」の中で、多文化共生について学ぶところも多いようです。私は1998年~小学校との交流活動をしていますが、交流に紙芝居を使ったのは2019年~です。留学生たちの母国の文化を描いた紙芝居を製作したことで、小学校の先生から「是非やって見せてほしい」と依頼がありました。
発表先③:地域イベント
子育て支援をしているサークルは地域にたくさんあります。また、子供向けのイベントも多数開催されています。多文化共生という視点からも、留学生の若者たちの活躍の場はたくさんあります。ここでも、彼らが製作した紙芝居を演じることで、留学生たちは母国の文化を伝える人となることができるのです。また「母国の文化を伝えられる紙芝居」というはっきりとしたものがあるため、行政の人にもわかりやすくイベントに声をかけてもらえました。
発表先
「社会福祉法人いろは保育園」
発表先
「HICプロジェクト」
発表先
「ちばサンタプロジェクト」
発表先
「墨田区立八広小学校」
発表先
「ちば伝統芸能まつり」
発表先
「自分の学校の文化祭」
発表先
「他のクラス」
製作時のようす
ネパール・バングラデシュチーム外国人留学生の誰もが持っている財産、それは【母国の文化】です。普段はあまり意識していないかもしれませんが、育つ中で耳にしたもの、目にしたもの、嗅いだにおい、食べたもの、触れた感触…これらは確実に心の中にあり、それが実はとても大切な母国の文化といえるのではないでしょうか。その文化を日本独自の紙芝居というツール(道具)を用いて見える化し、発信してもらいましょう。
紙芝居を作る
日本語教育の中で、作文を書いてもらったりスピーチコンテストの原稿を書いてもらったりするのに苦労した経験はありませんか?時間内に書き終わらず宿題にしても書いてこなかったり、書いてきたものは文法的間違いも多く何が言いたいのかわからない…。文法や漢字の間違いを訂正された赤ペンだらけの原稿用紙を見てやる気を失う学習者たち…。よくある光景だと思います。そんな彼らと「紙芝居の製作なんて無理でしょ?出来たとしても時間がかかりすぎるのでは?」と思う方も多いと思います。
私もそう思っていました。しかし、やってみたら案外そうではありませんでした。どの作品も必ず完成しました。それはどうしてなのか?やった私も不思議に思っていましたが(笑)、彼らと一緒にやってきたことを一つ一つ思い返しながら検証していくと一つの結論に達しました。
それは、紙芝居には【明確な型(フォーム)明確な最終形】があったから出来たのだ…ということです。またもう一つ重要な要素だったのは、彼ら自身の中に【母国の文化の伝えたいこと=昔話やお祭り、風習】などがあり、それを彼らのフィルターを通して出てきたもので作っていったから出来たのだということです。
また紙芝居は、誰もが目で見てわかるように作っていくので、やるべき作業も一目瞭然ですし、一枚一枚バラバラという特性から分担作業もしやすいです。そのため、短期間でもクラスメート全員で分担作業をしながら出来ました。そのことも完成へつながったのだと思います。
「黄金とりんご」ベトナム。一人で黙々とやっていました。脚本にもこだわりをもってすすめてくれました。
「ソンティントゥイティン」ベトナム。みんなで相談し最後は数人で脚本化していました。
「チョコレートの丘」フィリピン一人でおそらく翻訳機能を使って書いたものだと思います。
紙芝居の型…制約が多いからことできること
①市販の紙芝居は8枚~12枚が一般的です。手作り紙芝居は何枚でも可能ですが大体この枚数内に場面割りをするように言います。
②絵は右から見えてきて左に抜けていきますから、その特性に合わせた構図にします。
③起承転結を考え、芝居のように【セリフ】で物語が進んでいくと躍動感が出ます。
この三点に合わせて作るので、個人でやる場合も何人かでやる場合もブレが出ません。脚本は、できるだけ彼らの言い方を残しますが、辞書を引いて書いてきた難しい単語等はこなれた日本語に直します。彼らは製作までに市販の紙芝居を何作品も見ているので、どんなものに仕上げればよいのかがわかっています。
製作過程…一枚一枚バラバラだからできること
場面割りが出来たら、絵の構図を検討します。脚本はやりながら直していきますから大体のところで先に進めます。小さく描いてストーリーに合わせて動かしてみたりしながら構図を決め、描き始めます。大きい絵で描ければその方がいいですが、A4コピー用紙に描いてもらい拡大カラーコピーをして八つ切り画用紙(270×380mm )に貼るのが簡単です。
絵は描ける人が描き、色は分担して塗ります。みんなで協力して色塗りをしているのは本当に楽しそうです。完成形が見えていますから、自分たちで改善しながら進められます。また勉強したい人はJLPTや漢字などの自習していてよいことにしていますが、最後の方は必ず手伝ってくれます。クラス総出です。
母国の手作り紙芝居製作の相乗効果
①心からのアウトプットがふえる
彼らの頭の中にある母国のお話(昔話等)、母国の文化風習を教師は知らないため何とかわかってもらうために必死になります。伝えたいことが明確にありますから、母語で理解していること(お話)を、とにかく日本語でアウトプットします。また紙芝居の形式に乗っとって伝える工夫をしなければならないので、知らず知らずのうちに「書く」「読む」「話す」を勉強することになります。
②他国の文化を知る
多国籍のクラスだと他の国のお話をそばで見聞きします。そのため、次第に母国を深く考えるきっかけになるようです。ミャンマーの学生は他国の絵を見て自分の絵を描き直しました。主人公の服装をミャンマーの伝統的な服にするためです。また、イソップのお話的なものを作り始めていたネパールの学生たちは自分たちも母国のことを紙芝居化したいと途中でやり直しました。学生たちへのアンケート調査では「他国の文化を知るよい機会である」と答えています。
③クラスが一つになる
紙芝居を完成さるためには、お話を決め、日本語化し、絵を描き、色を付け、コピーして台紙に貼るなどのたくさんの工程があります。初めは自習を決め込んでいる学生も、次第に自分のできることを見つけ製作に加わってきます。最終的には演じる人に注目は集まりますが、そこまでの過程でクラスメートは自分のできることをやり、協力して仕上げたことに満足感を得、最後の発表を心から応援します。普段の授業では見せたことのない顔を見せてくれますし、秘めた能力が発揮されることも多いです。
④主従逆転がおこる
外国人留学生外国人が市販の紙芝居を練習し上手に実演できると、観客は拍手し喜んでくれます。しかし、あくまでもそこには「日本語が上手ですね」という感想になります。しかし、彼らが作った母国の紙芝居を実演するとそこには「日本語が上手ですね」という称賛は一番最初にくるものではなくなります。「モンゴルにはそんなお話が伝わっているのですか?」「ベトナムにも台風が多く来るのですね?」などという純粋な感想が最初に来ます。そのため、そこから始まる交流、コミュニケーションは外国人留学生たちが主体となって進んでいきます。日本人の意識が「日本語を勉強している外国人留学生」と話しているのではなく、「海外の文化を教えてくれる人」と話しているという位置付けになるのです。
2015年より、3H日本語学校の留学生たちと製作したオリジナルの紙芝居を紹介します。
1.「ないているのは だ~れかな?」ネパール編
日本の動物とは鳴き声がちょっと違います。擬音語を聞いて何の動物がやってきたかわかるでしょうか?
2.「ないているのは だ~れかな?」ベトナム編
こちらは、なぜか最後に日本のアニメで有名な動物が出てきます。
2.「母の愛」ミャンマー
小さい頃、お母さんが繰り返し聞かせてくれたお話だそうです。ミャンマー語のタイトルは「どこにもないもの」です。最後の最後にお母さんの服を全てミャンマーの伝統的な服に描き直しました。
3.「黄金とりんご」ベトナム
紙芝居がやってみたい!先生のように演じてみたい!と自ら志願して作った作品。ベトナムの昔話です。
4.「ハエとちょう」ネパール
ネパールの学生が子どもの頃聞いたお話だそうです。バングラデシュの学生と共同で作り上げました。
5.「七つの太陽」モンゴル
モンゴルの有名なお話だそうです。絵がどうしても描けないと言って他のクラスの後輩に頼んで描いてもらいました。
6.「かしこいうさぎ」モンゴル
彼女はこの作品を千葉の伝統芸能祭りでも披露しました。
7.「ソンティントゥイティン」 ベトナム
絵を描く人、色をつけるだけの人も作品を作り上げベトナムのことを知ってもらえたことがとても嬉しかったとのことです。
8.「アンダロおじさん」
スリランカ
スリランでは知らない人がいないほどのアンダロおじさん。エピソードはたくさんあるそうです。
9.「Teej(ティージ)」
ネパール
現代のネパールに受け継がれている女性だけのお祭りをわかりやすく伝えています。富山県紙芝居コンクールで審査員賞を取りました。
10.「チョコレートの丘」
フィリピン
フィリピンボホール島の観光名所「chocolate hills」に伝わる伝説。熱演賞を贈りたいほどです。
2015年より、3H日本語学校の留学生たちと製作したオリジナル紙芝居が外の世界に広がっています。
製作した作品は、富山県紙芝居コンクール、紙芝居文化推進協議会手作り紙芝居コンクールに出品しています。海外からの応募も可能です。
留学生の手作り紙芝居のことを知ったNPO法人語り手たちの会さまから「アジアの国の語りの現状」というテーマで取材を受けました。
紙芝居文化ネットワークさまより、紙芝居を日本語教育にどのように使っているかを教えてほしいと原稿依頼がありました。紙芝居の世界でも、語学に使うことに関心を寄せてくれています
2018年よりJCLI日本語教師養成講座で「コミュニケーション教育」という講座を担当。日本語教育に紙芝居を使った実践例を見てもらい、紙芝居の持つ双方向のコミュニケーション力を今後の日本語教育に使えないかを考えてもらっています。
養成科修了式に作ってくれた紙芝居