文章を書く時のお話をします。書きたいことをどんどん書いていくのですが、途中で詰まってしまいます。考えがまだちゃんとまとまっていないことに気付きます。どこまでわかっているか、どこがわからないのか、書いてみて初めてわかることがあります。そこでまた考えます。書いてみて、そうだった!と気付くこともあります。「文章を書く」のは単に情報を吐き出す一方通行ではありません。「文章を書く」ことで情報が手に入ります。考えが進み、整理され深まります。考えることと書くことは相互作業です。
ではなくて
なのです。数学での書く行為(=筆算する、答案を作る)にも同じことが言えます。
拍手してみましょう。右手と左手を合わせてパンと音を出します。右手が鳴りましたか。それとも左手ですか。右手が左手を鳴らしているわけではありません。その逆でもありません。右手と左手が出会うことで音が出ています。同じように「考える」行為と「書く」行為が出会うことによって数学が成り立ちます。著名な数学者岡潔は、散歩していてもひらめくと突然地べたにはいつくばり、落ちている枯れ枝を使って計算を始めたと言われています。
「いや、オレは頭の中だけで数学できる」
と言う人もいるでしょう。でもあなたは、それまでにたくさん「書く」行為を経験したためにその一部を頭の中に移すことができたのです。頭の中で「書く」行為と出会っているのです。書くことについてのヒントをあげてみます。
- 《考えながら書く》ノートしっかり取っているのに、成績が上がらない人。あなたは、ただ黒板の、教科書の、または模範解答のコピー機になり切っているだけで、「考える」と出会っていません。授業で、ゆっくりノートを取る時間が無い? それは先生が悪い。
- 《たくさん書く》数学の勉強は、書いた量で計測できる。一題問題を解くために、色々試し、たくさん間違えて、すごい量の計算をしてしまった。それでいいのです。あなたはたくさん数学をした。
- 《計算用紙を用意する》ノートの他に計算用紙を用意し、間違えてもよいからこころおきなく計算できるようにする。考えたことをどんどん計算する。正解にたどり着いたら、ノートに清書する。特に一問解く過程の長い高校数学では、計算用紙は「たくさん書く」を実現する必須アイテム。プリンター用コピー用紙、これを挟むクリップボードは百均で手に入ります。
- 《無理な暗算をしない》先ほど言いましたように、「書く」経験を重ねるとその一部を頭の中に移すことができます。それは、大量の「書く」経験を積んだ結果です。その経験が命です。暗算すると「賢そうに」見える?ので、つい暗算をしてしまう人。学力が伸びません。「書く」行為が足りないからです。目安は、“手が止まる暗算はするな”。書くスピードを頭の中が上回る分だけ暗算に回せば良いのです。数学の学力は筆算によって養われます。
- 《整理された計算》考える⇔書く ですから、式が乱雑な人は、頭の中も乱雑です。逆に頭の中を整理したかったら、頭の中に手を突っ込むわけにはいきませんから、整理して書くことから始めます。「きれいな字」を書くのは難しいかもしれませんが、整った式を書くことは意識すれば、誰にでもできる。大きさをそろえる。水平に並べる。これくらいは誰にでもできる。後から見直しのできる計算をする。定期試験のみならず、センター試験受験テクニックとしても大変重要です。
- 《消さない》数学の勉強で消しゴムは清書以外、不要です。書かれたものには、間違えていても考えながら書いたものには、それなりの意味があります。間違えたら、斜線でも引いて次の行に書き直せばよろしい。ボールペンで勉強するのも良い。消せません。少なくとも計算用紙に消しゴムは不要です。ノートでも使わない方が良い。提出用答案の作成練習をするときだけ、消しゴムを使いながら体裁を整えた答案作りの練習をします。
これが数学学習の極意。