数学の問題を『解く』とは、有効な情報を取りだし組み合わせる作業です。新しい問題は、過去の経験や知識の組み合わせで必ず解けます。「ヒラメキ」とか言われますが、単に組み合わせ上手のことをそう呼ぶのです。どこにも神秘的な要素はありません。
そのためには、様々な経験や知識が取り出しやすいように、整理されている必要があります。お出かけするために服を選ぶとき、いろいろなシャツやパンツがカゴの中に放り込んであっては、コーディネイトもできない。自分がどんな服持っていたか忘れてしまいます。そこで種類ごとにまとめて棚やヒキダシに取り出しやすいようにたたんでしまいます。おしゃれ上手な人は、よいクローゼットを持っているものです。
数学でこれにあたるのが、理解です。雑然と丸暗記するのではなく、他の項目と関連を付けて納めていく。衣装のしまい方が人によって違うように、理解の仕方は人によって違います。自分なりの、整理ができていればよい。
そのうち、しまうヒキダシを変えたり、増設したり、場所を変えたりします。衣装タンスと違い、頭の中は無限の広さがあり、必要に応じていくらでも増やせるし、場所を変えられる。ひとつのヒキダシは無限の広さを持っている。いくらでも整理可能。これが理解を深めることです。
問題を解くときは、ヒキダシから情報を取りだし組み合わせる。情報をひとつ取り出せば解けてしまうのが、基本問題。情報を何個か組み合わせて使うのが応用問題。難問は、遠くの棚から何個も情報を集めて組み合わせないと解けない。『考える』ことは、情報の検索と組み合わせの作業です。この作業を続ければ、どこにどういう情報がしまわれているか、どんな順序で並んでいるかわかるようになります。問題がひとつ解ければ、これも新しい『情報』として蓄積され、次に使えるようになります。解くために使った情報も、必要に応じて整理され場所を変えてしまい直されます。
言葉をかえれば、数学の勉強は、良質のデータベースを作り上げる作業です。情報量が多いことはもちろん、様々な検索が可能なように情報が整理され関連付けられていることが、良質なデータベースの条件です。
データベースの質を向上させるには、使い込むことが大切。使えば使うほど、情報の関連付けが自然に進みます。データベースを使い込む時間=『自分で考える時間』を増やす。問題が解ければ、使った情報は関連付けてしまい直されます。うまく解けなくても、「この情報はこの問題に使えない」という新たな情報が獲得できます。経験を積みながら、情報検索と組み合わせの経験を積むと、データベースの質も向上します。数学の勉強量は「解けた問題の数」ではなく「解くために行った情報検索の量」なのです。
これらを頭に置いて数学の勉強に臨みましょう。