ご挨拶
三遊亭圓朝の『怪談牡丹燈籠』は大好きな作品です。なんと今回で六回目の演出。長かったり短かったりとその都度台本も違えば役者さんも会場も変わりましたが、そのどれもが僕にとってかけがえのない作品だったと思っています。この『牡丹燈籠』、怪談とは言いながら、圓朝は、実は人間の強欲こそ恐ろしいということを伝えようとしているような気がします。足のないはずの幽霊が「カランコロン」と音を立ててやってくるところはチャーミングな場面で恐ろしくはありません。それに比べ、欲にとりつかれた人間のなんとおぞましいことか。でも、そんな人間さえも魅力的に描いてしまうところに、圓朝の懐の深さがあるのかもしれません。
コロナ禍での演劇は、やる方もみる方も大変ですが、何とか幕があがりそうです。この作品に関わったすべての方に感謝します。
演出 篠本賢一