情報教育
情報教育
教育の情報化
社会における情報化の急速な進展と教育の情報化
第4次産業革命ともいわれる,人工知能(AI: Artificial Intelligence),ビッグデータ,IoT(Internet of Things),ロボティクス等の技術の急速な進展に伴い,これらの先端技術が高度化してあらゆる産業や社会生活に取り入れられ,社会の在り方そのものが現在とは「非連続的」と言えるほど劇的に変わる「Society5.0」時代の到来が予測されています。
このように急激に変化し,将来の予測が難しい社会においては,情報や情報技術を受け身で捉えるのではなく,主体的に選択し活用していく力が求められるようになっています。
今の子供たちが活躍する頃の社会では,AI やロボット,IoT などをはじめとする情報技術は生活の中で当たり前のものとして存在していると考えられ,これらの情報技術を手段として効果的に活用していくことの重要性は一層高まっていくこととなります。
一方で,スマートフォンやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が急速に普及し,その利用も低年齢化する中,これらの利用を巡るトラブルなども増大しており,子供たちには,情報や情報技術を適切かつ安全に活用していくための情報モラルも身に付けさせていく必要があります。
このように,社会生活の中でICT を日常的に活用することが当たり前の世の中となる中で,社会で生きていくために必要な資質・能力を育むためには,学校の生活や学習においても日常的にICT を活用できる環境を整備し,活用していくことが不可欠である。さらにICT は,教師の働き方改革や特別な配慮が必要な児童生徒の状況に応じた支援の充実などの側面においても,欠かせないものとなっています。
これからの学びにとっては,ICT はマストアイテムであり,ICT 環境は鉛筆やノート等の文房具と同様に教育現場において不可欠なものとなっていることを強く認識し,その整備を推進していくとともに,学校における教育の情報化を推進していくことは極めて重要です。
教育の情報化ついて
「教育の情報化」とは,情報通信技術の,時間的・空間的制約を超える,双方向性を有する,カスタマイズを容易にするといった特長を生かして,教育の質の向上を目指すものであり,具体的には次の3つの側面から構成され,これらを通して教育の質の向上を図るものです。
① 情報教育 子供たちの情報活用能力の育成
② 教科指導におけるICT活用 ICTを効果的に活用した分かりやすく深まる授業の実現
③ 校務の情報化 教職員がICTを活用した情報共有によりきめ細かな指導を行うことや,校務の負担軽減等
あわせて,これらの教育の情報化の実現を支える基盤として,以下の3点を実現することが極めて重要です。
○ 教師のICT活用指導力等の向上
○ 学校のICT環境の整備
○ 教育情報セキュリティの確保
(令和2年6月 「教育の情報化に関する手引(追補版)」文部科学省より)
体系的な情報教育の推進
情報活用能力の定義
世の中の様々な事象を情報とその結び付きとして捉えて把握し,情報及び情報技術を適切かつ効果的に活用して,問題を発見・解決したり自分の考えを形成したりしていくために必要な資質・能力
情報や情報手段を主体的に選択し活用する,情報技術の基本的な操作,プログラミング的思考や情報モラル等を含む資質・能力です。より具体的に捉えれば,学習活動において必要に応じてコンピュータ等の情報手段を適切に用いて情報を得たり,情報を整理・比較したり,得られた情報を分かりやすく発信・伝達したり,必要に応じて保存・共有したりといったことができる力であり,さらに,このような学習活動を遂行する上で必要となる情報手段の基本的な操作の習得や,プログラミング的思考,情報モラル等に関する資質・能力等も含むものです。
このような情報活用能力を育成することは,将来の予測が難しい社会において,情報を主体的に捉えながら,何が重要かを主体的に考え,見いだした情報を活用しながら他者と協働し,新たな価値の創造に挑んでいくために重要である。また,情報技術は人々の生活にますます身近なものとなっていくと考えられるが,そうした情報技術を手段として学習や日常生活に活用できるようにしていくことも重要となります。
情報活用能力の育成に係る「3観点8要素」
平成20・21 年告示の学習指導要領において,各教科等の指導の中にコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用する学習活動や,情報活用能力を育成するために充実すべき学習活動が示されました。
平成22 年10 月に刊行された「教育の情報化に関する手引」では,「初等中等教育の情報教育に係る学習活動の具体的展開について」(平成18 年8 月)で整理した情報教育の目標の3 観点の定義に基づく8 要素に分類して整理され,その上で,各学校段階で期待される情報活用能力がまとめられました。
整理された3観点8要素を下に示します。
1 情報活用の実践力
○ 課題や目的に応じた情報手段の適切な活用
○ 必要な情報の主体的な収集・判断・表現・処理・創造
○ 受け手の状況などを踏まえた発信・伝達能力
2 情報の科学的な理解
○ 情報活用の基礎となる情報手段の特性の理解
○ 情報を適切に扱ったり,自らの情報活用を評価・改善するための基礎的な理論や方法の理解
3 情報社会に参画する態度
○ 社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている影響の理解
○ 情報モラルの必要性や情報に対する責任
○ 望ましい情報社会の創造に参画しようとする態度
3観点相互の関係を考え,児童生徒の発達段階に応じ,バランスよく身に付けさせることが重要です。
学習の基盤となる資質・能力の三つの柱と情報活用能力
平成29・30 年に告示された学習指導要領では,情報活用能力は以下のように言語能力,問題発見・解決能力と並ぶ「学習の基盤となる資質・能力」の一つと位置付けられ,教科等横断的な視点から教育課程の編成を図り,各学校のカリキュラム・マネジメントの実現を通じて育成することとしました。
○知識及び技能(何を理解しているか,何ができるか)
これまでの「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」の3観点8要素だけでなく,各教科等において育むことを目指す資質・能力と同様に,「知識及び技能」「思考力,判断力,表現力等」「学びに向かう力,人間性等」の三つの柱によって捉えていくことが提言され,以下のように整理されました。
○思考力,判断力,表現力等(理解していること,できることをどう使うか)
情報と情報技術を活用した問題の発見・解決等の方法や,情報化の進展が社会の中で果たす役割や影響や技術に関する法・制度やマナー,個人が果たす役割や責任等について,情報の科学的な理解に裏打ちされた形で理解し,情報と情報技術を適切に活用するために必要な技能を身に付けていること。
○学びに向かう力,人間性等(どのように社会・世界と関わりよりよい人生を送るか)
様々な事象を情報とその結びつきの視点から捉え,複数の情報を結びつけて新たな意味を見いだす力や問題の発見・解決等に向けて情報技術を適切かつ効果的に活用する力を身に付けていること。
情報や情報技術を適切かつ効果的に活用して情報社会に主体的に参画し,その発展に寄与しようとする態度等を身に付けていること。
(令和2年6月 「教育の情報化に関する手引(追補版)」文部科学省より抜粋)
資質・能力の三つの柱に沿った分類と,「想定される学習内容」を組み合わせた上で,これらの要素ごとに,発達の段階等を踏まえた5 段階の体系表例(平成31年3月IE-School報告書より)