朝一番。
店の郵便受けに一枚の葉書きが投函されている
朱色のあつらいがめでたげな、普通の年賀はがき。
表にはここの住所と店名が、達者な毛筆の字でしたためられている。
差出人は『一丁目七番地 高御電子サービス むすひ屋 高御██』。(文末の文字は達筆過ぎて読めない)
こちらは、同じ筆跡の筆文字が印刷で刷られている。
葉書きを裏返すと、寿ぎの趣深い金箔の雲の絵が目に入り、
その雲の上に浮かんでいるかのように、
見事な筆致の新年の挨拶が、墨痕鮮やかに艷めいている。
(よく見ると、印刷であった。)
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『袖ひぢて むすびし水の こぼれるを 春立つけふの 風やとくらむ』
『去にし年 一方ならぬ御心ざしを賜はりしこと 返す返すもかたじけなく 畏まりきこえさせ候ふ
御棚のいよいよ栄えゆかむこと 久しく念じ奉る
あらたまの年も 心を一つにして 家業に怠りなく勤しみ仕うまつり 御用を承らむと励み申すべく候ふ
なをなを 変わらぬ御情けを賜はらむこと ひとへに願い上げ奉る』
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裏面の隅に、『翻訳』の字の下に小さな2次元コードが配置されていた。
端末などで読み取るなら、以下の文章が画面に表示される。
『冒頭は、古今和歌集から紀貫之の和歌です。
昨年は並々ならぬご厚情を賜り、心より御礼申し上げます。
お店のご繁栄を心からお祈り申し上げますとともに
新年も社員一丸となってサービス向上に精励する所存です。
変わらぬご愛顧のほど よろしくお願い申し上げます。
高御電子サービス むすひ屋 タカミ カネヒサ』
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「お!なんだ!?またクーポンか!?」
「………」
「なんだタカミのとこの年賀状か。あいつも毎年よくやるなあ」
「あとで札の一枚でも送ってやるか」
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謹賀新年
昨年は菓子屋 ねんねみをご利用いただきまして誠にありがとうございました。
おかげさまで当店も無事に新しい年を迎える事ができ、
これもひとえに皆々様のご支援と賜物と深く感謝いたしております。
これからも良き幸福と夢を届けられるよう、店員一同日々努めさせていただきます。
本年も変わらぬご愛顧のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
この一年のご健康とご安全、益々のご繁栄を心からお祈り申し上げます。
禍電街一丁目 六番地
【菓子屋 ねんねみ】
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貴方のお店の郵便受けにカタン、と何かが投函された。そこには一枚の年賀はがきがある。
確認すれば【菓子屋 ねんねみ】からのものだとわかる。
……
年賀はがきを確認すると、小さな小箱も届けられている事に気が付く。
小箱は紅白カラーで、そこに金箔と薄紅色の梅の柄が散りばめられているものだ。
それが和紙製の紙帯と赤い紐で留められている。
よく見ると箱にもメッセージカードがついているようだ。
箱についたメッセージカードには
「ねんねみ店長から、ちょっとした甘味を贈らせていただきます。
是非皆様でお楽しみください。」
という一文があった。
蓋を開いて中を見れば、馬の形を象ったクッキーを真ん中に、周りにはプレーン、チョコ、紅茶のクッキー。
梅の形や、松の形をしたアイシングクッキーと、つぶつぶとしたメレンゲクッキー。
それからきらきらとした琥珀糖。それらが箱いっぱいに詰められていた。
どうやらねんねみからのお正月ギフトのようだ。貴方のお店の人達全員が全種類食べれるように、数も合わせてあったり量が入れてあったりする。
「おー、これかねんねみの奴らが言ってたのは」
元旦の、店の郵便受けを確認すれば一枚の年賀状が入っている。
冬の早朝を思わせる青みの雲、花結びに亀甲という縁起物に店の看板ロゴを添えたそれにはシンプルな新年の挨拶が綴られていた。
裏面を見れば「こちらをお持ち頂ければ一月中に限り時計の販売、または修理代金を10%オフで承ります」と流麗な手書きの字で書かれている。
「こっちは時間屋のか。まあこれはあとでいいや」
「それよりこの箱の中身よ」
包みを引き剥がす。バリバリ
「ウヒョー!菓子じゃん!今のうちに食っちまお」
送られてきたお菓子は全て鼠の腹へと収まったのだった。
送り主:むすひ屋(いのっち)、ねんねみ(餅之屋おとち)、剫威(霖猫)