伊東 潤平 (D.V.M., Ph.D.)

Jumpei Ito (D.V.M., Ph.D.)

jampei@g.ecc.u-tokyo.ac.jp

Last update: 2023/07/23

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プロフィール

東京大学 医科学研究所 システムウイルス学分野 准教授。獣医師、理学博士。さきがけ研究者。1989年生まれ。ビッグデータ解析を駆使したウイルス学「データ駆動ウイルス学」の創出に取り組んでいます。またウイルス学と生命情報学の分野融合を推進するための様々な活動を行なっています。ウイルス若手統計勉強会の主催。ウイルス学若手ネットワークの初期メンバー。

主な研究テーマ

1, ウイルスの進化と流行の法則の解明と予測法の開発

2, レトロウイルスと宿主の進化的相互作用の解明

3, 健常人ウイルス叢の網羅的描出

新型コロナウイルス次期流行株の超早期捕捉

新型コロナウイルスの流行の波は、既存の株よりも伝播力の高い「変異株」が出現することで引き起こされることが知られています。言い換えると、伝播力の高い変異株(=次期流行株)の出現を超早期に捕捉することで、次の流行の波がいつ頃立ち上がるか、予測することができると期待されます。さらに、実験を行うウイルス基礎研究者と連携し、次期流行株の性質を実験により明らかにすることができれば、次期流行株の性質(実験動物における病原性や治療薬への抵抗性等)を、この株が実際に流行するよりも前に明らかにすることができます。そこで私は、ウイルスゲノム配列データベースを監視し、伝播力の高い変異株(=次期流行株)の出現をいち早く捕捉するシステムを開発しました。さらに、新型コロナウイルス変異株の性質を迅速に解明することを目的としたG2P-Japanコンソーシアムと連携することで、捕捉した次期流行株(オミクロンBA.1株、BA.2株、BA.5株、BA.2.75株)の性質を流行前に明らかにしてきました。

レトロウイルスと宿主の進化的相互作用の解明

現代人が新型コロナウイルスの感染に晒されているように、ヒトの祖先も様々なウイルスの感染に曝露されてきました。私は、ウイルスと宿主の超長期的な共生関係・敵対関係(進化的軍拡競争関係)の解明を目指し研究を行っています。特に、古代のレトロウイルスが宿主祖先へ感染した結果生じた配列である「内在性レトロウイルス (ERV)」を詳細に解析することで、レトロウイルス侵略に伴い、宿主の免疫関連遺伝子が高度に重複、多様化してきたことを明らかにしてきました。また、宿主がERV由来配列を「家畜化」することで新たに獲得した遺伝子や転写調節配列(プロモーター、エンハンサー等)が、ウイルス防御、腫瘍の抑制、および生殖細胞の分化制御等において重要な役割を果たすことを明らかにしてきました。

健常人ウイルス叢の網羅的描出

一見健康にみれるヒトの体内にも、様々なウイルスが不顕性感染していることが知られています。このようなウイルスの不顕性感染がヒトの免疫状態や形質、さらには様々な疾患のリスクファクターとなる可能性が指摘されていますが、詳細は明らかでありません。さらに、健康なヒトの各組織において、どのようなウイルスが、どの程度の頻度で感染しているか、明らかでありませんでした。そこで、データベース上で公開されている、健常人の各組織から採取されたRNAのシーケンスデータ(約1万サンプル)を網羅的に解析することで、ヒトに感染しているウイルスをカタログ化しました。さらに、ウイルス感染の有無とヒトの遺伝子発現状態の関連解析を行うことで、ウイルスの不顕性感染がヒトの免疫状態や形質に与えるかもしれない影響を網羅的に明らかにしました。

本研究は当時修士課程学生として在籍していた熊田隆一君が主導してくれた仕事です。

経歴

学部時代

201210月 ~ 2015年3月

山口大学 農学部 獣医学科 感染免疫学研究室(西垣一男 研究室)

博士課程時代

2015年4月 ~ 2018年3月

総合研究大学院大学 生命科学研究科 遺伝学専攻 博士後期課程

国立遺伝学研究所 人類遺伝部門(井ノ上逸朗 研究室)

2016年4月 ~ 2018年3月

学術振興会特別研究員(学振PD)

ポスドク時代

2018年4月 ~ 2019年3月

京都大学 ウイルス・再生医科学研究所 システムウイルス学分野 (小柳義夫 研究室)

特定研究員

2019年4月 ~ 20214

東京大学 医科学研究所 感染・免疫部門 システムウイルス学分野(佐藤佳 研究室)

学術振興会特別研究員(学振PD)

特任助教・助教時代

2021年5月 ~ 2022年6月

東京大学 医科学研究所 感染・免疫部門 システムウイルス学分野(佐藤佳 研究室)

特任助教

2022年7月 ~

東京大学 医科学研究所 感染・免疫部門 システムウイルス学分野(佐藤佳 研究室)

助教

2022年10月 ~

さきがけ「パンデミックに対してレジリエントな社会・技術基盤の構築」

さきがけ研究者

論文

筆頭著者論文


その他共著論文

日本語総説

獲得研究費

1, 最適なワクチン株選定に資するウイルス流行株予測法の開発 (代表)

東京大学医科学研究所 2023年度MUFJ-FGワクチン開発支援 2023年10月 - 20259

2, タンパク質言語モデルを用いたウイルス適応度予測法の開発 (代表)

東京大学国際高等研究所新世代感染症センター2023年度 UTOPIA若手研究助成金 2023年8月 - 2024年3月

3, 新型コロナウイルス変異株の形質予測・進化予測手法の開発 (代表)

日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究 2023年4月 - 2025年3月

4, 変異株の超早期捕捉に基づく流行予測法の開発 (代表)

国立研究開発法人 科学技術振興機構 さきがけ研究「パンデミックに対してレジリエントな社会・技術基盤の構築 202210月 - 2026年3月

5, 内在性レトロウイルスが駆動する遺伝子発現制御ネットワークの生理機能の解明 (代表)

日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究 2020年4月 - 2023年3月

6, 内在性レトロウイルスを摂動とする遺伝子発現および腫瘍病態の変容メカニズムの解明 (代表) 

日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費 2019年4月 - 2022年3月

7, ヒト内在性レトロウイルスが発現調節ネットワークおよび組織がん化過程に与える影響 (代表) 

日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費 2016年4月 - 2018年3月