この度31回学術大会を私の大会長で開催することとなりました。今回の大会テーマは「睡眠環境と近接領域の課題」であります。
睡眠環境学は、本学会の初代会長の故鳥居鎮夫先生が「良い眠りをどのように作り出すか」をテーマとし、睡眠をとりまく環境と諸問題を解説した、1999年10月に朝倉書店より発刊した「睡眠環境学」により体系化されました。主な内容は睡眠の生理心理/生体リズム/眠りの質を高める/生活リズム/ストレス/高齢者の眠り/幼児の眠り/寝室/寝具/音楽/アルコール/入浴/香り等、多岐の領域に渡った内容を網羅した書物で、今でも多くの睡眠研究者のバイブルとなっています。
睡眠環境に関する様々な領域からの研究の取り組みを本大会で切り込み、さらなる良い眠りをどのように作り出すかについて追求していきたく考えております。特に今話題となっているスリープマネジメントによると、日々の生活を健やかに過ごすためには、生活習慣や眠りの環境を整え、しっかりとした睡眠をとる必要があります。睡眠の質は経済に大きな影響を与え、非営利研究団体RAND EUROPEが日本の睡眠時間に基づき経済損失を試算したところ、2030年に16.9兆円、GDPの3.3パーセントにもなるとの報告もあります。
今大会は1日の開催ですが、「主観的睡眠の評価」や「温熱環境と睡眠」をテーマに、そして、医療・看護の側面から攻めてみたいと考え、睡眠がもたらすメリットとしては「介護:生活習慣の改善・転倒予防・昼夜逆転による夜間徘徊の防止」「看護:生活習慣病(高血圧症・糖尿病・動脈硬化等)の予防・うつ病予防・感染症予防・医師との連携による睡眠障害の治療推進・機能訓練(リハビリ)の推進」が期待できます。その他「生活面」もありますが、多くの睡眠環境学、介護・医療の関係者の意見を集約して、日本の経済損失の改善に寄与できればと考えています。
2022年10月30日