計測技術の発展によって、様々な生物や人工物の移動の記録が可能になりました。これを背景に、多岐にわたる社会や科学分野への貢献、例えば、小型GPSを装着した野生の動物の行動データから動物の生態の理解、車両の移動データから様々なリソース配分の効率化、カメラから得られたスポーツ選手の行動データからスキルの評価などが期待されています。このように移動系列を解析する手法の重要性が高まっていますが、対象を越えて移動系列が持つ普遍的性質を扱う方法や、その性質を用いて高度な予測を行う人工知能技術は存在せず、従来の研究は対象毎に個別の領域で研究が行われるに留まっています。そこで、本OSでは、解析手法の1つであるデータマイニングや機械学習技術を軸足とし、対象間に共通する問題やその上で更に個別の議論を行うことで、各領域や共通の問題の解決を行っていきます。
本OSは、工学、コンピュータ科学、生物学、神経科学、スポーツ科学などを専門にする研究者が、記録されたヒト、動物、自動車などの軌跡・活動・行動データの解析方法について機械学習など人工知能分野の技術を用いた議論する場となることを期待しています。さらに単に手法や個別の領域の議論だけでなく、より大きな視点から、データ取得・公開や、政策などの意思決定、応用領域での活用、さらには領域をまたいだ議論の土台としたいと考えています。
本OSのオーガナイザには、科研費学術変革領域A「サイバー・フィジカル空間を融合した階層的生物ナビゲーション(階層的生物ナビ学)」への参画者も含まれており、ヒトや車両などの公開データだけでなく、様々な生物行動の貴重な計測データの研究も募集しています。関心のあるテーマとして、生物・人工物の軌跡・活動・行動データに関する以下の例がありますが、これらを超えた領域からの参加を期待しています。複数の領域で議論することにより、それぞれの領域の強みを知り、また関連問題への関心の提起や、自身の領域の未解決問題の発見などの、様々な発展を期待しています。
キーワード:
時空間データ
データマイニング
機械学習
生物モデル
軌跡・活動・行動データの情報処理