2023/6/715:30 - 19:10

OS-8 移動系列のデータマイニングと機械学習

(JSAI2023のHP)https://www.ai-gakkai.or.jp/jsai2023/os#os-8

(プログラム1)https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2023/session/2H10-13/category

(プログラム2) https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2023/session/2H14-18/category

招待講演(15:30 〜 16:10)

モバイル空間統計の災害対応への活用

落合 桂一 (NTTドコモ)

キーワード:モバイル空間統計、リアルタイム人口、機械学習

携帯電話ネットワークの運用データをもとにから生成した人口データであるモバイル空間統計は商圏分析や防災計画など様々な分野で活用されている。本講演では、モバイル空間統計のデータに機械学習を組み合わせることで、災害発生時の各種対応へ活用する研究を紹介する。

研究発表(16:10 〜 19:10)

自己回帰型言語モデルによる個人の移動軌跡の生成 (16:10 〜 16:30)

〇水野 貴之1,2、 堀込 泰三2、藤本 祥二3、石川 温3 (1. 国立情報学研究所、2. 総合研究大学院大学、3. 金沢学院大学) 

キーワード:個人の移動軌跡、軌跡生成、移動モデル、GPT-2

2022年8月に浦安市を通過した延べ約68万台のスマートフォンの位置情報の履歴から,移動時間と移動場所を,自己回帰型言語モデルの1つであるGPT-2に入力することで,個人の日中の移動軌跡の事前学習モデルを構築する.さらに,各日の天候や新型コロナウイルス新規感染者数の環境状況と,各スマートフォンの保有者の属性情報とを追加学習する.学習時において,数値の情報は,ユニークな文字の組み合わせに変換する.このような変換を導入することで,地理情報を用いなくても,高精度の個人の移動軌跡が生成できることを示す.


一般化エントロピー正則化に基づくスパースな出力が可能な経路選択モデル (16:30 〜 16:50)

〇渡邉 葵1、日高 健1 (1. (株)豊田中央研究所) 

キーワード:経路選択モデル、交通量配分、一般化エントロピー正則化、Tsallisエントロピー、α-entmax

旅行者が目的地までどのような経路を選択し移動するかという経路選択行動のモデル化は,モビリティサービスの評価など様々な応用先を有する.だが,典型的な経路選択モデルは,経路コストを用いてソフトマックス関数で各経路の選択確率を求めるため,どれほど遠回りな経路にも正の流量が配分されるという課題がある.この課題を克服する既往モデルは,パラメータ設定がアドホックで,推定時に最尤法と最短経路探索を組み合わせる必要があり計算負荷が高い.そこで本研究では,ソフトマックス型のモデルを特殊解に含みつつ,流量ゼロを表現でき,かつ,計算負荷を削減した経路選択モデルの構築を目指す.具体的には,シャノンエントロピーを一般化した一般化エントロピーを用いて正則化を行うことでスパースな活性化関数を構築する方法論を,既存の交通理論と整合する形で経路選択モデルへと展開した.結果,ソフトマックス型のモデルから流量ゼロを表現可能なモデルまで,連続的に表現可能であることを数値計算と合わせて確認し,パラメータ推定が単純な線形回帰で可能なことを示した.これにより,ゼロ流量を表現可能な既往モデルよりも推定時の計算負荷を大きく削減し得る.

群知能メカニズムを用いた局在系列パタン抽出手法の提案 (16:50 〜 17:10)

〇高橋 泰平1、近藤 雄也1、栗原 聡1 (1. 慶應義塾大学) 

キーワード:データマイニング、群知能

近年のデジタル機器の普及により大量の情報が蓄積されているが,それらは人間では処理しきれていない.そこで情報から特徴的なパタンを抽出することで知見を得ようと試みる,パタンマイニングが注目されており,特に高頻出なパタンを抽出する手法が多数提案されている.一方で季節による消費者の購買行動の変化や投薬実験等での生体データの振る舞いといった一時的に出現するパタンの存在が想定され,そうしたパタンの抽出により新たな知見が得られる可能性は多分にある. 本研究では長大な単一系列データから頻出度,局在性の高いパタンを抽出する手法を構築することを目的としている.具体的には,群知能メカニズムを利用しパタンの分布に柔軟に適合しながらパタンを抽出する手法の提案を目指す. 頻出度,局在性の高いパタンを含む系列データを作成し,提案手法を適用した結果,そうしたパタンが抽出できることを確認した. 提案手法によって抽出されたパタンの頻出度や局在性を読み取ることで,パタンの特性を把握することができ,有益な知見の獲得につながると考えられる.

Preliminary Investigation of predicting GPS satellite’s signal strength in indoor environments (17:30 〜 17:50)

〇Heng Zhou1, Takuya Maekawa1 (1. Osaka University) 

キーワード:AI

This study presents a method for predicting the GPS signal strength received by devices at each position inside a target floor in a building. The predicted signal strengths can be used as a rough indoor fingerprint localization system without extra infrastructure. Although it has been widely considered as a fact that the current GPS system is still unable to achieve high-precision indoor localization, we attempted to analyze the characteristics of indoor GPS reception by considerable factors. We employ a neural network based system which mainly uses floor plan including wall’s information and window information as well as shapes and heights of neighboring tall buildings. In addition, we integrate the GPS satellite information including its azimuthal angle and elevation angle to estimate line of sight (LOS) from each satellite to the target environment. We evaluate our framework using data obtained in different buildings from different areas in the city and campus.

グラフニューラルネットワークとデータ同化を統合したデータ駆動型避難者分布予測手法の検証 (17:50 〜 18:10)

〇樫山 武浩1、沖 拓弥2、小川 芳樹3、今泉 允聡3、大山 雄己4 (1. 大阪経済大学、2. 東京工業大学、3. 東京大学、4. 芝浦工業大学) 

キーワード:避難行動、物的被害、グラフニューラルネットワーク、データ同化、シミュレーション

大地震発生直後、人々の滞留や避難状況をリアルタイムに把握することは、二次被害を防止する上で重要である。前稿[高崎・小川・今泉・沖・大山2021]では、Gretel[Cordonnier et al. 2019]と呼ばれるグラフニューラルネットワーク(GNN)モデルと、データ同化手法の一つであるパーティクルフィルタを統合した、データ駆動型の避難者分布予測モデルを提案した。 本稿では、上述の提案手法に基づき、時間経過とともに変化する建物の延焼や倒壊による道路閉塞の状況を特徴量として組み込むことで、大局的な避難行動の傾向を考慮した避難者分布の予測を可能とするモデルを構築する。そして、擬似的な避難者分布の生成に用いるエージェントベースシミュレーションの結果と比較し、計算時間と予測精度の観点から構築モデルの有用性を検証する。

サッカーのイベント予測確率に基づく一般化された守備評価を用いた分析(18:10 〜 18:30)

〇梅基 陸平1、筒井 和詩1、藤井 慶輔1,2,3 (1. 名古屋大学、2. 理化学研究所、3. JSTさきがけ) 

キーワード:スポーツ、機械学習、データマイニング

チームスポーツにおける守備の解析は、イベントデータが限られているため、一般的に困難である。これまで、サッカーにおいては、全選手とボールの位置関係を用いて、ボール奪取と有効攻撃を予測することで、チーム守備を評価する方法が提案されている。しかし、先行研究はイベントの重要性を考慮せず、22人の選手全員の完全な観測を仮定し、国籍や性別などの多様性の影響を十分に調査していなかった。本研究では、イベントの予測確率を得失点でスケーリングすることで、守備チームの一般的な評価方法を提案する。UEFA EURO 2020とUEFA Women’s EURO 2022のサッカーの試合における放送映像フレーム内の全選手のオープンソースの位置データを用いて、選手数が予測に与える影響を調査し、試合分析により本手法を検証した。その結果、有効攻撃、得点、失点に関する予測では、全選手の情報は必要なかったが、ボール奪取に関する予測では、攻守それぞれ3〜4人の選手の情報が必要であることが判明した。ゲーム分析により、UEFA EURO 2020の決勝トーナメント進出チームの守備の優秀さを説明することができた。

複数スポーツの多物体追跡データセットの構築と競技間における汎用性の検証 (18:30 〜 18:50)

〇スコット アトム1,4、内田 郁真1,4、丁 寧2、梅基 陸平2、Bunker Rory2、小林 蓮2、小山 孟志 3、大西 正輝 4、亀田 能成1、藤井 慶輔2 (1. 筑波大学、2. 名古屋大学、3. 東海大学、4. 国立研究開発法人産業技術総合研究所) 

キーワード:データセット、軌道予測、多物体追跡


あらゆるスポーツにおいて選手やボールを追跡するトラッキングシステムはチームのパフォーマンスにとって非常に重要である。本研究では、新たに複数のスポーツの多物体追跡データセットの構築に取り組む。提案するデータセットはサッカー、バスケットボール、ハンドボールという3つの異なるスポーツから構成されており、150分以上のビデオ映像に対しボウンディングボックスとID情報をアノテーションがされている。また魚眼レンズを装着した8Kカメラとドローンカメラを用いて、フィールド全体を捉えた二つのアングルから撮影することで全選手のデータを取得することができた。最後にデータセットの構築に加え、軌道予測のタスクでのアブレーションを行い、学習された特徴量の競技間における汎用性を検証した。

深層学習による高速かつラベルフリーなサッカーシーン検索 (18:50 〜 19:10)

〇内田 郁真1,2、スコット アトム1,2、大西 正輝2、藤井 慶輔3、亀田 能成1 (1. 筑波大学、2. 産業技術総合研究所、3. 名古屋大学) 

キーワード:深層学習、サッカー、シーン検索

トラッキング技術の発展に伴い、サッカーにおける選手やボールの軌道データはかつてないスピードで生成されており、高速なシーン検索への関心も同様に高まっている。しかし、現場ではアノテーションコストの高い、シーンのラベルに基づき検索が行われている。本研究では、サッカーの大規模な軌道データの集合に対して、高速かつラベルフリーな検索を行う深層学習手法を提案する。提案手法では、プレー間の類似性を軌道データから表現するための深層学習アーキテクチャを構築する。大規模トラッキングデータで実験を行い、幾何学的な類似度検索手法よりも効果的に動作することを検証した。

オーガナイザ

藤井 慶輔(名古屋大学大学院情報学研究科)

竹内 孝(京都大学大学院情報学研究科)

沖 拓弥(東京工業大学環境・社会理工学院)

西田 遼(東北大学大学院情報科学研究科)

田部井 靖生(理化学研究所革新知能統合研究センター)

前川 卓也(大阪大学大学院情報科学研究科)

本OS: 移動系列のデータマイニングと機械学習について

計測技術の発展によって、様々な生物や人工物の移動の記録が可能になりました。これを背景に、多岐にわたる社会や科学分野への貢献、例えば、小型GPSを装着した野生の動物の行動データから動物の生態の理解、車両の移動データから様々なリソース配分の効率化、カメラから得られたスポーツ選手の行動データからスキルの評価などが期待されています。このように移動系列を解析する手法の重要性が高まっていますが、対象を越えて移動系列が持つ普遍的性質を扱う方法や、その性質を用いて高度な予測を行う人工知能技術は存在せず、従来の研究は対象毎に個別の領域で研究が行われるに留まっています。そこで、本OSでは、解析手法の1つであるデータマイニングや機械学習技術を軸足とし、対象間に共通する問題やその上で更に個別の議論を行うことで、各領域や共通の問題の解決を行っていきます。

 本OSは、工学、コンピュータ科学、生物学、神経科学、スポーツ科学などを専門にする研究者が、記録されたヒト、動物、自動車などの軌跡・活動・行動データの解析方法について機械学習など人工知能分野の技術を用いた議論する場となることを期待しています。さらに単に手法や個別の領域の議論だけでなく、より大きな視点から、データ取得・公開や、政策などの意思決定、応用領域での活用、さらには領域をまたいだ議論の土台としたいと考えています。

 本OSのオーガナイザには、科研費学術変革領域A「サイバー・フィジカル空間を融合した階層的生物ナビゲーション(階層的生物ナビ学)」への参画者も含まれており、ヒトや車両などの公開データだけでなく、様々な生物行動の貴重な計測データの研究も募集しています。関心のあるテーマとして、生物・人工物の軌跡・活動・行動データに関する以下の例がありますが、これらを超えた領域からの参加を期待しています。複数の領域で議論することにより、それぞれの領域の強みを知り、また関連問題への関心の提起や、自身の領域の未解決問題の発見などの、様々な発展を期待しています。


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