【趣旨】
学術論文の学会誌への投稿と掲載において、査読は研究の質や信頼性を確保する上で極めて重要なプロセスです。専門性を共有する研究者によって投稿論文が公正で厳格に検討されることは、論文が学術雑誌に掲載されるための不可欠なステップと考えられています。
しかしながら、近年では若手研究者から査読のあり方に対する不安の声が高まっています。学会誌の編集担当より書き直しの指示を受け再投稿を繰り返しながらも掲載に至らない場合もあり、自分の原稿の何が問題なのか、自分の知らない論文投稿のルールやマナーがあるのかなどの不安に駆られる若手研究者は少なくありません。査読論文という研究業績の根幹となるものを積み重ねられないことで、場合によっては研究活動の断念に至るというケースもあります。一部の研究者は、査読プロセスが透明性を欠いており、主観的な評価が介入している可能性を指摘しています。また、査読者の選定や査読方法、評価基準が学会誌によって様々である現状が、若手研究者の研究活動を阻害する要因となっているとの意見も挙がっています。
そうした中、日本学術会議も、文部科学省の依頼を受けて「論文の査読に関する審議について」を2023年9月25日付で発出し、「国際的な潮流を十分に認識し、英文・和文を問わず、将来の国内学術誌の在り方とよりよい査読システムの構築に向けて検討し、行動を起こす必要がある」としています(https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-25-k353.pdf)。査読プロセスの透明性向上や公正な評価基準の確立と共有化が日本学術会議の呼びかける「よりよい査読システムの構築」を促し、若手研究者の研究活動の促進とキャリアアップへと繋がるのではないでしょうか。また、若手研究者が論文の投稿に積極的になれば、各学会ひいては研究の世界全体の活性化に繋がることが期待できます。
これらのことを踏まえ、日本歴史学協会若手研究者問題特別委員会は、歴史学系学会誌の査読の状況を把握するための取り組みを進めます。各学会・研究会に対してアンケートを行うことで、査読プロセスにおける課題や改善点を明らかにし、提言の発出なども含めた今後の方針を検討する予定です。これにより、若手研究者が安心して研究成果を発表しやすい環境を整え、学術界全体の信頼性向上に寄与していくことが期待されます。
つきましては、ご多用中誠に恐縮ですが、以下のアンケートにご協力いただければ幸いです。
回答いただいた内容につきまして、学会名および学会を特定させる情報を伏せた上で公開し、若手研究者の論文投稿を促すための提言などにおいて言及させていただく可能性がありますことをご了承ください。学会誌編集担当者による回答を想定しておりますが、それが必ずしも学会の総意である必要はありません。回答期間は 2025年11月1日から2026年3月31日までとします。
第32期日本歴史学協会若手研究者問題特別委員会