Guten Tag! ドイツマックスプランク生物学研究所の髙橋昂平と申します。JaLFiG 運営チームの一人で、本サイトの更新を行なっています。本ページでは、2025年8月16ー17日にドイツ・マクデブルクのオットー・フォン・ゲーリケ大学にて開催された、第2回ドイツ生命科学日本人の会交流会の模様をお届けします。
今回の交流会の開催地であるマクデブルクは、エルベ川沿いにある人口24万人ほどの街で、神聖ローマ帝国初期から歴史の表舞台に登場しています。科学史的にも、1654年に市長であり物理学者でもあったオットー・フォン・ゲーリケが、「マクデブルクの半球」と呼ばれる真空実験を行ったことで有名です。中学の教科書にも載っているようなので、ご存知の方も多いかもしれません。お恥ずかしながら、私は覚えていませんでした(汗)。
交流会は、大学附属病院キャンパス内のセミナー室で実施しました。キャンパスへは、旧市街からトラムで10分ほどのアクセスです。交流会の数日前は夏らしい陽気が続いていたのですが、当日の天気は少しあいにくの模様でした。まさにドイツといった天気でしたが、気温は暑すぎも寒すぎもせず、過ごしやすい日でした。今回の会では、ドイツおよび周辺国から28名の方に参加していただきました。受付をしている段階から、所属、立場、滞在国などが実に多様な方々が集まって下さったことを実感し、本交流会の盛り上がりを確信しました。
13時になり、JaLFiG 運営チームの代表でありオットー・フォン・ゲーリケ大学所属の陶山さんより開会の挨拶がなされ、交流会が始まりました。今回は6名の方にご発表いただきました。表現型ノイズの進化という生物学の根本的な謎に挑むような基礎研究から、培養ミルク生産という最先端の応用研究に至るまで、挑戦的な研究について発表していただきました。また、私自身はかなり基礎的な生物学を専門としており、服薬による抑うつ傾向への影響の評価や人工内耳技術という医学的なテーマについての発表は、門外漢ゆえに新鮮な気持ちでお聴きすることができました。さらに、マクロな話に留まらず、妊娠期における腸管上皮拡張を制御するシグナル同定やクライオ電子顕微鏡を用いた構造生物学のミクロな分子生物学の発表もあり、こうして振り返ってみると、実に多様な研究テーマを1日で聴くことができました。それぞれのご専門は異なるものの、ドイツの優れた研究環境を活かし、ご自身の学問的興味をとことん追及され、研究を楽しんでおられる様子が皆さまからひしひしと伝わってきて、私ももっと頑張らないといけないなといい刺激をいただけました。質問時間でも時間ギリギリ、時にはオーバーするほど質問が途切れず、活発に議論が行われました。
今回、研究発表に加えてJSPSボン研究連絡センターとJSTパリ事務所さんにもお話しいただき、それぞれの活動や在独研究者が申請可能な研究費について講演いただきました。私自身も、申請可能にも関わらず存在を知らなかった研究費について知ることができ、非常に参考になりました。休憩時間中も、コーヒーやお菓子を楽しみながら、研究の話のみならず、ドイツでの生活上での苦労を語り合ったりしながら、終始賑やかにお話しされているのが印象的でした。日本人同士だからこそ話せることも、色々あるのではないかと思います。
研究発表の後は、マクデブルクのアジア料理レストラン "Hyaku Mizu" にて懇親会を行いました。ドイツに住んでいると、普段なかなか美味しいアジア料理を食べられないので、こういった機会がありありがたかったです。このレストランが入っている建物は、オーストリア出身の芸術家 Friedensreich Hundertwasser がデザインしたもので、遠くから見てもそれと分かるほど異彩を放っています。勘の良い方ならお気づきかもしれませんが、Hundert は百、Wasser は水なので、合わせて百水、というわけです。レストランでも色々な話に花が咲き、交流を深めることができました。
翌日は、希望者でマクデブルク文化歴史博物館を訪問しました。本博物館では、マクデブルクの歴史と文化にまつわる数多くの展示品を見ることができました。本博物館は自然史博物館も兼ねており、マクデブルク周辺に生息する動植物の標本や化石も鑑賞することができます。個人的には、プロイセン時代の軍服に感銘を受けました。私の暮らすテュービンゲンも、プロイセン王家を輩出したホーエンツォレルン家の故郷の近くにある街なので、王家の歩みを辿ったような気分に浸ることができました。先述のマクデブルクの半球のレプリカもあり、皆さんが興味深い面持ちで眺めながらその構造について議論を深めておられました。まさに、研究者の集まりならではの光景でした。博物館を訪問した後はマクデブルク大聖堂を訪れ、その荘厳さに圧倒されました。色々な街の大聖堂に行けるのは、ドイツに滞在しているメリットの一つだと思います。最後に、再び昨日とは別のアジア料理屋にて昼食をいただきました。思えば、今回のマクデブルク滞在でアジア料理ばかり食べていたような…マクデブルクは美味しいアジア料理屋が沢山ある良い街でした。
自分自身、こういった研究交流会の運営が初めてだったということもあり、至らない点も多々あったなと反省している一方、JaLFiG主催チーム、JSPSボン研究連絡センター、そしてご参加いただいた皆さまに助けていただき、とても充実した交流会にできたのではないかと思います。今回参加していただいた皆さまに次回以降もお会いできるのを楽しみにしております。また、身近に日本人の研究者の方がいらっしゃいましたら、ぜひJaLFiGをご紹介ください。今後ともJaLFiGをよろしくお願いいたします!