第71回日本印度学仏教学会学術大会

(オンラインリモート会議システムによる開催

本サイトは、2020年7月4-5日にオンライン(リモート)会議システム を用いて開催された日本印度学仏教学会学術大会の記録です。参加者のITリテラシーが必ずしも高くない人文系学会が、どのような準備のもとに正式な大会としての開催に至ったか、ということについて、同様の取り組みをされる方々に情報提供をすることを目的として公開いたしました。

前提事項

開催校が現地開催できないことが3ヶ月前に確定していた。

すでに年次学術大会の発表申込を受け付けており、発表者を中心とする学会会員の権利保全のために、何らかの形での大会開催が不可欠であると学会役員が判断した 。(正式な大会としての開催となった)

開催校(創価大学)も学会事務局もオンライン開催に積極的であった。

オンライン授業が広く実施されるようになったため、オンライン会議システムに習熟している人が飛躍的に増加していた。(全員ではない)

以下のような先行する取り組みに関する情報を参照することができた

 

当日の状況

当日は、例年通り、テーマ別に分かれて10部会を並行して進行。オンライン発表者は218、オンデマンド発表者は16名、発表辞退は14であった。この発表者も含めた参加者数は、448 となった。各部会の運用体制は以下の通り。

  • 部会ホスト及び部会ホスト補助(計42人。主に、開催校教員及び学会会員が担当。半日1コマで総計30コマを2名ずつで担当)

  • 司会(各司会の担当は発表3回分。部会実施中に適宜交代)

  • 発表者(Zoomを通じ、パワーポイント・ワード等を用いて発表)

部会ホストがホスト権限を持ち、部会ホスト補助が共同ホスト権限を持ってこれを補助し、司会と発表者は細かな操作はせずになるべく話をするのみで済むようにし、極力例年と同様のことをすればよいという形を目指した。いずれも手順書に従えば発表・司会・部会を開始終了できるように、それぞれの手順書を作成・配布した。

オンライン(リモート)会議システム にはZoomを利用し、大会実行委員会がZoomのビジネスプランで10ホスト契約、補助用に2ホスト、さらに当日ホストを割り振るためのアカウントとして1ホストを 契約した。これ以外に学会事務局のZoomアカウントも適宜利用した。

オンライン発表に対応できない発表者に対しては、オンデマンド発表の場も提供した。発表資料学術大会での読み上げ原稿に相当するものを提出する形で 原則として、掲載する論文は発表時間15分程度に収まる分量(5,000字程度)とし、提出期限は開催前日(7/3)17時、配付グーグルドライブを利用 し、掲示期間は学会開催期間中とした。質疑応答は、掲載論文に対して参加者がコメントを行なう形とした。中国からの参加者はグーグルのサービスが利用できないため代替サービスを利用 した。

ここに至るまでの経緯・準備については以下の「当日までの準備」に記している。


当日の運営体制としては、5名の関係者が自宅から対応。各自、予備のレンタルWifiルータを用意し、携帯電話による連絡体制を確認した。

また、これを支援するため、モニター会場を設置し、ノートPC10台で各部会をモニタ。この10画面をビデオミキサーで1ストリームにまとめてYouTubeライブストリームを行ない、自宅接続の5名が10部会の状況を常時モニタできるようにした。(詳細は、以下の「10部会モニターのための技術情報」の項に記す)

モニター会場にはPCに詳しい3名が常駐し、自宅対応5名とともに適宜サポートを行なった。

対応に関しては、緊急対応の場合は携帯電話及びメーリングリストにて担当者同士で連絡。最新状況を共有するためにGoogle Documentを利用し、対応状況を逐次、対応時間とともに記載した。

したがって、自宅対応5名は、自宅において、10画面モニタのYouTubeライブストリームで全体を監視しつつ、適宜各部会に接続して状況を詳しく確認し、トラブルに接した場合、電話もしくはメールにて対応、あるいは対応しきれない場合はモニター会場に連絡し、対応状況はGoogle Documentで逐次確認できるようになっていた。


モニター会場の状況

ノートPC10台をレンタクルして10部会分のモニターを行ないつつ、常時巡回

モニター画面

正面大画面は10部会分のノートPCのHDMI出力のモニターをまとめたもの。左側大画面はトラブル対応メモを共有するためのGoogle Document を映している

当日までの準備

7/4-5の本番までに行なった会合及び作成した資料は以下の通りである。会合はすべてZoomによるオンラインで行なわれた。

4月

4/12 学会開催方法検討WG メーリングリスト開始

4/14 オンライン開催に向けての準備(案)(d-01)作成

4/19 開催校+学会担当者合同臨時WG会議@zoom

4/19 オンライン発表部会進行マニュアル案作成

4/19 オンデマンド発表用規定(素案)(d-02)作成

4/20 発表者向けオンライン対応についてのアンケート案内文案 作成

4/22 臨時理事会案内発信(学会オンライン開催について)

同日 発表予定者に対する事前アンケートの実施

4/24 オンライン発表デモビデオ第一版(v-01)作成・関係者で共有

4/27 関係者でオンライン発表デモンストレーション実施

4/30 オンライン発表デモビデオ第二版(v-02)作成・部会ホスト候補者と共有

5月

5/6 オンライン学会開催に際しての実行委員会・学会事務局合同会議@Zoom

5/7 トラブル対応マニュアル案(d-03)作成

同日 オンライン・オンデマンド開催への変更についての理事会書面会議開催(5/13まで)

5/10 オンライン学会事前調査用グーグルフォーム(f-01) 作成

5/16 臨時理事会@Zoomにて学術大会のオンラインでの開催を正式に決定

5/17 オンライン開催Webサイト告知文案(d-04)作成

5/19 暫定版のプログラム公開

5/28 部会ホスト担当者への正式依頼

同日 部会ホスト向けレンタルWifiルータ調査開始

5/31 オンデマンド発表用グーグルドライブ試作

6月

6/1 代替手段(オンデマンド発表)投稿規定 (d-05) 完成

6/8 開催実行委員会がZoomのビジネスプランを契約

6/13 部会ホスト向け講習会11時~、発表者向け発表講習会13時30分~、16時~、 発表者向け講習会資料(d-06)配布

6/17 確定版のプログラム(d-09)公開

同日 部会立ち上げ手順書 、グーグルドライブの共有手順書原案作成

6/20 部会ホスト向け講習会11時~、発表者向け発表講習会13時30分~、16時~

6/22 部会ホスト・部会ホスト補助、発表者司会者参加者用ML作成(主に告知用)

6/24 参加者用案内ビデオ(v-03)公開

同日 部会立ち上げ手順書 (d-07)を部会ホスト・部会ホスト補助ML経由で送付

6/27 部会ホスト立ち上げ練習会

同日 発表者に当日発表資料共有のためのグーグルドライブの共有手順書(d-08) 送付

6/28 部会ホスト立ち上げ練習会

7月

7/1 発表者向け資料最終版 (d-10)を発表者にまとめて配布

7/2 部会ミーティングルームURL一覧 (d-11)を全参加者に配布

同日 部会ホスト・部会ホスト補助マニュアル・運営用資料最終配布 (d-12)をホスト・ホスト補助にまとめて配布

7/3 オンデマンド発表への参加方法 (d-13) を全参加者に配布

同日 17:00 オンデマンド発表資料提出締め切り

7/4 本番

7/5 本番

※準備の過程での留意事項

  • 参加者全員に講習会を行った。(初めてZoomを使う人に対しても講習会で手ほどきを行なった。)

  • オンラインやオンデマンドで発表する際のトラブルを極力避け、進行をスムーズにするために、Zoomの使用手順の確認とそれに基づくマニュアルを準した

  • iPadでのZoomの挙動の違いやホストとゲストの表示の違い等への対応には手間がかかった。

  • 一部大学(駒澤大学、創価大学)では個別に独自の予行演習を行い、運営マニュアルの検証と改善案の提供が行なわれた。

  • 部会ホストには開催実行委員会が契約したホスト権限を割り当てたが、実験段階で、すでに勤務校などでZoomのアカウントを有している場合に既存のアカウントとバッティングして不具合が生じることがあったため、部会ホストに注意喚起を行なうとともに、部会ホスト全員に対してこのホスト権限での立ち上げの練習を行なっていただいた。


作成した主な資料等



  • オンライン発表デモビデオ第一版(v-01)(公開検討中)

  • オンライン発表デモビデオ第二版(v-02)(公開検討中)

  • 参加者用案内ビデオ(v-03)(公開検討中)

10部会モニターのための技術情報

ノートPCは10台をレンタル。HDMIポート付き/メモリ16GB/SSD256GB/Win10で、送料込みで7万円未満。

ノートPCのネットワーク接続は無線LAN。無線LANアクセスポイントはArcher AX11000 、NAT/FWはSonicwall NSA250M経由で1Gbps帯域保証の商用回線。

ノートPCの画面はHDMIでビデオミキサー2台に接続。Roland V-8HDで8台、VR-1HDで2台を接続し、これをYouTube中継用ノートPCに接続。ただし、V-8HDはこのままでは中継用ノートPCに映像を入力できないため、HDMIキャプチャ ユニットを使用した。

V-8HDとVR-1HDの2つのビデオストリームをまとめてYouTubeのライブストリームに送り込む際には、OBS Studioを用いた。