目次
ー工事中ー
令和5年度 活動内容
高齢や障がいによる車いす生活者は,下肢の筋萎縮,筋力低下,関節拘縮,末梢循環不全など廃用症候群と呼ばれる2次障害を予防するため,定期的にリハビリ施設などに出向いて,理学療法士による運動療法を行っています.しかし,東北のような寒冷降雪地域では冬季に外出することは困難であり,普段生活している自宅や施設内で手軽に運動を行うことのできる機器が求められています.そこで,本研究グループが長年の治療実績を持つ機能的電気刺激(FES)の技術を機器開発に取り入れ,車いすに乗ったまま効果的なリハビリ運動ができる機器の開発を行っています.
車椅子装着型FEScyclingユニットの開発
FES cycling とは,運動能力を失った筋の再建法である機能的電気刺激(Functional Electrical Stimulation)を用いて下肢のペダリング運動を与えるリハビリ手法の一つです.本研究では脊椎損傷・脳卒中による下肢麻痺患者や高齢者など,自力での下肢の運動が困難な車いす使用者が廃用症候群の予防のために行うリハビリ運動を,日々の生活の中で効果的に行うための機器として,車いすに取付けて脚の伸展運動で駆動する「車いす取付け型 FES cycling ユニット」の構造試作機を製作しました.
『構造試作機の設計』
構造試作機の設計要件として,「運動効果の大きい大腿四頭筋による膝伸展運動で車いすを駆動する」,「踏込みペダルの位置と運動方向を調整できる」,「軽量・小型」,「標準型車いすに,加工を必要とせず取付けることができる」,「車いすの操作性と運動性を損なわない」と定め,これらを満たすような機構の設計に取り組みました.機構のアライメントや,想定される使用者の体形に合わせた調整範囲の設定など,人間工学に基づく機器のデザインと設計には,筋骨格モデリングソフトAnyBody Modeling Systemによる運動解析とシミュレーションを用いました.
『運動解析とシミュレーション』
3次元筋骨格モデルによる運動解析とシミュレーションを行い,踏込み機構の調整範囲について最適な寸法の検討を行いました.ユニットの車いすからの距離,座面に対する高さ,運動軌道の角度の3点を検討する寸法とし,計120パターンの寸法の組み合わせを解析対象としました.その寸法の組み合わせでペダリング運動を行った際の筋張力を算出して評価し,筋張力を用いた評価により,寸法の組み合わせの候補を5パターンに絞りました.
『試作機の製作と評価』
設計した試作機モデルを基に加工を行った部品を組み立て,実物の1次試作機を製作しました.そして,附属病院のリハビリテーション科において医療従事者による使用評価を行い,動力伝達機構などに改良を加えた構造試作機を製作しました.
構造試作機3次元モデル
3次元筋骨格モデル
構造試作機
ベッドサイド型リハビリ機構の開発と身体負荷の評価
車いすの使用が難しい寝たきりの高齢者や入院患者が,ベッドの上やベッドサイドで使用する運動機器として,踏込みペダルやスライドレールなど最小限の要素で構成したシンプルで使いやすいベッドサイド型リハビリ機構を考案しました.本研究ではベッドサイド型リハビリ機構の開発と身体負荷に関する評価を行っています.
『ペダル型フォースセンサの開発』
従来歩行解析などに用いられるフォースプレートには4個の力センサが使用されています.しかしながら,自転車などペダルを用いた運動において,踏力の力学的作用点はペダル回転軸上に存在しています.ペダル反力作用点である足圧中心COP(Center of Pressure)座標を2個の力センサのみで推定可能であると研究仮説を立て,2個の力センサを用いたペダル型フォースセンサの新規開発を行いました.また開発したペダル型フォースセンサを基に,ペダル反力およびCOP座標に関する計算方法を考案しました.
『3次元筋骨格モデルによる解析と身体負荷の評価』
ペダル型フォースセンサ,モーションキャプチャシステム,3次元筋骨格モデル解析を用いた運動機器に関する評価を行っています.全身の所定の位置に光学式マーカーを貼り,モーションキャプチャ装置を使用して,運動時の全身動作を計測します.マーカーデータを基に,3次元筋骨格モデルを用いた運動学解析を行います.運動学解析結果に対して,ペダル型フォースセンサから得られたペダル反力等を外部環境反力として外部環境反力を付加し,逆運動力学解析を行うことで,各関節間力および筋活動量などを推定し,身体負荷の評価を行っています.
ベッドサイド型リハビリ機構
医療従事者による機能評価の様子
3次元筋骨格モデルによる生体力学的解析
関節間力推定に基づく身体負荷の評価
3次元筋骨格モデルによる生体力学的解析と身体負荷に関する評価
発表実績
小林 義和、巖見 武裕、畠山 和利、斉藤 公男、粕川 雄司、宮腰 尚久:フレイルのための車いす取付け型自転車の下肢両脚筋張力解析,第50回日本臨床バイオメカニクス学会 (2023).(2023. 11. 10 )
未来へのステップ:あきたイノベーションフォーラム,秋田大学地方創生センター地域産業研究部門医理工連携産業研究開発事業:フレイル予防を目的とした機器開発,合同開催 第1回 産学官交流プラザ (2023. 12. 5)
この研究は、競輪の補助を受けて実施しました。
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