作業行動計測・支援
Sensing and supporting technologies for human activities
Sensing and supporting technologies for human activities
ドライバの安全運転支援を目的として,運転中の注意力低下や覚醒度低下の兆候を,小型・低コストな装備で,早期に精度よく検知する技術の開発に取り組んでいます.
交通死亡事故のうちヒューマンエラーによる事故が多くを占めており,これらの事故はドライバの不注意や運転への意識低下がその発生要因の一つとされます.そこで,ナビやスマホ操作などの運転操作以外にドライバの注意をそらす行動(不安全運転行動)の発生を検知しドライバに注意を促すことで,潜在的な事故リスクの把握や交通安全意識の向上に貢献することが期待されます.
本研究では,日常中の運転行動を安価かつ手軽に計測する方法として,運転中の手の動きに着目したドライバ行動計測の方法を提案します.具体的には,手の動きを手首装着型の加速度センサを用いて手先加速度として計測し,その変化パターンから機械学習の方法によって運転中のドライバの行動内容を推定します.
これまでに,「ナビ操作」や「飲食」などの非運転タスクを含む8種類の運転行動を計測する実験をドライビングシミュレータ上で行い,行動内容の推定モデルを作成してベースラインとなる推定精度を明らかにしました.その結果,加速度センサから取得した手先の動きのみで,運転中の行動内容を概ね把握できる可能性(ユーザ依存モデルの場合に,8種類のうち5種類の行動で推定精度の指標であるF値が70%以上)を示しました.現在は,深層学習を含めたより高度な推定モデルの導入や,実走行環境への適用に向けた改善方策の検討に取り組んでいます.
[Reference]
S. Kayashima, T. Akiduki, T. Arakawa, and H. Takahashi, ``Driver Activity Recognition Using Wrist-Worn Acceleration Sensors,'' J. of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics, Vol. 34, No. 2, pp.544-549, 2022 (in Japanese) https://doi.org/10.3156/jsoft.34.2_544
運転中の考え事や会話など,運転以外のタスクに注意が向けられると,いわゆる不注意(inattention)の状態を招きます.運転中のドライバの注意力状態を計測する方法には,車両の運転操作情報を用いる方法や,脳波などの生体情報を用いる方法が研究されています.本研究では,不注意によって生じる運転操作の乱れに着目し,考え事のような精神的な負荷がドライバの手先挙動に及ぼす影響を調査し,ドライバの注意力状態を定量化する指標を提案します.
これまでに,Nバック課題という認知的な作業課題をドライバに与えて,その際の手先加速度の変化を観察したところ,課題の難易度に応じて手首部の挙動が振動的になることを明らかにしました.さらに,手先加速度のデータを時間・周波数解析して得られるスペクトルの係数値から,ドライバの心的な負担の度合いを示す指標を提案しました.現在は,実環境への適用に向けて,ステアリングエントロピー(SE)法等の従来手法との比較や,走行中の車内振動,道路形状が提案指標に及ぼす影響等を調査・検討しています.
[Reference]
R. Tanaka, T. Akiduki and H. Takahashi, "Detection of Driver Workload Using Wrist-Worn Wearable Sensors: A Feasibility Study," 2020 IEEE International Conference on Systems, Man, and Cybernetics (SMC), Toronto, ON, Canada, 2020, pp. 1723-1730, doi:https://doi.org/10.1109/SMC42975.2020.9282860
T. Akiduki, J Nagasawa, Z. Zhang, Y. Omae, T. Arakawa, and H. Takahashi, ``Inattentive Driving Detection Using Body-Worn Sensors: Feasibility Study,'' Sensors, No. 22(1):352, 2022, doi: https://doi.org/10.3390/s22010352
日常中の多くの作業で「手」が基本的な役割を担っています.そこで,手先の動きと位置・姿勢を知ることで,作業者(の手)がどこで,なにを,どのように操作しているか,という作業内容の仔細把握や異常検出,技能評価等への応用が期待できます.本研究では,車内のドライバを対象として,運転中の手の動きを滑らかな到達運動(reaching movement)として捉えることで,ステレオカメラ等の外部センサを用いることなく,単一慣性センサの計測データのみから手先の移動量を精度良く推定する方法を提案します.
これまでに,カーナビ操作や片手運転を行う際の手先の移動量を提案手法を用いて推定しその精度を評価しました.その結果,目標値に対してそれぞれ誤差10%から20%程度で,手先の移動量を概ね把握できることを示しました.
[Reference]
畠山泰幸, 秋月拓磨, 荒川俊也, 高橋弘毅, ``単一慣性センサを用いたドライバの手先位置の推定,'' 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集, 2P3-J14, 2021