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脳内乳酸のイメージング
(平成5〜7年度)
1 生体内乳酸計測の意義
乳酸は生体組織内の嫌気性解糖の指標であるが、特に脳内の糖代謝は神経細胞の生理的状態を評価する上で重要と考えられている。特に、乳酸濃度は組織内のピルビン酸濃度をよく反映する事が知られており、組織の低酸素状態、その原因となる虚血やさまざまな原因による組織の損傷を知る手がかりとして注目されている。
2 MRIによる乳酸計測(背景)
乳酸(Fig. 2)は1H-MRS(プロトンNMRスペクトロスコピー)によって計測可能な代謝産物のひとつである。従来は、選択励起法により脳内の特定の容積からの信号を収集することにより、局所の乳酸ピーク(FIg. 1)を検出していたが、イメージング技術の進歩により2次元的な画像として乳酸の分布状態を知ることが出来るようになった。しかし、この化学シフト画像法では、S・Nの不良、脂質信号によるアーチファクト、長時間測定の必要性などの問題点があり、実用性に問題があった。
3 二量子遷移法による乳酸イメージング
我々は、乳酸の信号を選択的に検出する方法として二量子遷移法を応用し、脳内乳酸濃度の2次元計測に成功した。この方法では、1)水信号抑制パルスを別途加える必要が無い、2)乳酸信号を選択的に検出できる、3)従って、周波数エンコードが使用可能になるので、より高分解能でイメージングが可能になる、4)動作が安定である、などの利点がある。
Fig. 1 2D-NMRによる乳酸ピーク
Fig.2 乳酸分子
しかし、脂質信号の一部は乳酸と同じ量子遷移を示すため、質信号によるアーチファクトの問題は完全には解決しない。そこで、我々はさらに部分飽和法(STIR)を併用したより良好な乳酸検出法(Fig. 3)を開発した。Fig. 4に低酸素性虚血性ストレスモデルを使った脳内乳酸分布の例を示す。脂肪組織由来の信号が十分に抑制されており、このパルスシーケンスによって乳酸由来の信号が選択的に抽出できることが確認された。
Fig. 3 二量子遷移法のパルスシーケンス
Fig. 4
低酸素性虚血性ストレスによる脳内乳酸分布(ウサギ)
文献
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