- 中井敏晴、守谷哲郎
- 再生医療におけるバイオイメージング
- 再生医療という分野が出現して、バイオイイメージングの新たな適応が広がった。再生医療における画像計測は大きく2つの分野に分けられる。一つは個体の計測である。治療前の診断や治療後の経過観察には従来型の画像計測法が応用できよう。また、組織の採取や移植には、MR等の画像誘導による処置技術(IVR)が有力な手段となる。神経系においては、再生組織の局所的な修復だけでなく、中枢神経系の制御機構全体と整合性のとれた機能回復を実現する必要がある。その意味で、磁気共鳴機能画像法(fMRI)は認知・運動機能の回復過程を評定するための有力な手段となろう。 IVRとfMRIは、近年進歩の著しい分野である。もうひとつの分野は、組織工学的手法により培養生成された微小な組織の3次元構築や代謝機能などをインビトロで評価する画像計測技術である。微小な組織を評価する手法は、いずれのモダリティにおいても未開の部分が多いが、MRIを用いた組織のマイクロイメージング、陽電子断層撮像法(PET)による代謝計測、時間分解能に優れたCCDカメラを用いた光計測による神経活動の計測などが、組織レベルにおける有力な評価方法と考えられる。
- 村上卓道, 堀 雅敏, 濱田星紀, 中村仁信
- IVR技術による組織デリバリー
- デジタルサブトラクション血管造影(DSA)、X線コンピュータ断層画像(CT)や磁気共鳴画像(MRI)など、近年の画像診断装置の進歩は目覚しいものがあり、これらを利用することによって、低侵襲性に病気の描出、鑑別および進展度診断がを正確にできるようになってきた。さらに画像診断装置を用いて病変の位置を正確に把握することによって、細いカテーテルや針を正確に、しかも安全な経路でに病変に到達させることが可能となったため、腫瘍を直接焼いたり、腫瘍に栄養する血管を塞栓したり、逆に腫瘍によって細くなった血管や管腔臓器を広げたりして、手術のように大きく切ることなく、病変に有効な治療(IVR)を施すことができようになってきている。このようなIVR技術は、再生医療において、病態を把握するだけでなく、組織を採取すると共に、再生組織を安全にしかも正確に目的部に送り込むことに応用できると考えられる。ここでは、近年行われているIVRの手技を紹介(何ができるか)する。
- 山下貴司
- ポジトロン放出核種による小動物イメージング
- 2 mm x 2 mmの断面を有する長さ20 mmのBGOシンチレータで二次元アレイを構成し、位置検出型光電子増倍管に結合した検出器を製作した。それぞれ4x6個の検出器を対向配列したプラナーイメージング装置を試作し、ラットやマウスなどの小動物を測定した。イメージプレーン上で約2.0 mm空間解像力が得られている。感度を向上するためにシンチレータの長さやガンマ線の受光立体角を増加すると、視差誤差のために解像力は劣化する。これを解決するためにシンチレータ中の発光深さ位置情報を検出するDOI検出器の開発を行っている。ポジトロン放出トレーサーのイメージングにおける限界解像力は、ポジトロンの飛程と消滅ガンマ線対の角度遥動によって決められる。小動物のイメージングでは、対向する検出器間距離を短くして消滅ガンマ線の角度遥動による誤差を減少できるため、比較的低いエネルギーのポジトロンを放出するF-18、C-11などの核種では、検出器の改良により将来1mm程度の空間解像力が期待される。
- 拝師智之
- MR microimagingのパフォーマンス「摘出マウス海馬の微小体積測定」
- 臨床用MRIでは通常1mm3程度の空間分解能で撮像がなされるが,特に100μmから1mm分解能の場合はMR microimagingと呼ばれ,被写体の三次元撮像を基本としている。このため,生体の体積計測には非常に有用な手法として期待されているが,実際に生態組織の体積計測に用いられた例は非常に少ない。これは,周囲の組織と,際だった画像コントラストを得ることが困難であり,三次元画像の体積計測を行うための画像処理手法が一般化していないためである。本研究では,出生前ストレスと生育環境が,マウスの海馬に与える影響を評価するために,40日飼育したコントロールを含む4つの群の摘出した海馬42個を,1%アガロースゲル固定(Gd-DTPA付加)により画像コントラスト強調をして,体積測定を行った。静磁場強度4.7Tの自製MRIシステムにより三次元SE法(TR/TE=100/12ms)で取得された画素サイズ(70μm)3の画像から,マーチングキューブス法により体積計測(平均値19.7μm3)された。この結果,出生前にストレスを負荷した群でも出生後に豊かな環境を供与した場合に優位差のある体積増加が観測できた。
- 高島一郎
- 光学測定による脳組織機能評価
- 中枢神経系分野の再生医療においては、神経幹細胞を目的のニューロンに分化誘導するだけでなく、将来的には、脱落した神経回路網の精緻な再構築までを目指す技術開発が必要となる。光学測定法は、構築された神経回路網の機能異常をイメージングすることができるため、当該分野での組織機能評価としての応用が期待される。近年、成体神経幹細胞の存在が実証され、海馬歯状回顆粒細胞層でのニューロン新生が注目されていることから、ここではラット海馬歯状回における神経活動の光学測定結果を紹介する。正常ラットとの比較において、側頭葉てんかんラット海馬スライス標本では、苔状線維の異常発芽により顆粒細胞に反回性回路が形成され、歯状回分子層に大きな脱分極応答が記録されることを示す。てんかん動物はキンドリング等により作成したものであるから、苔状線維の異常投射による神経回路は後天的に獲得されている。本実験/測定系は、内在性幹細胞を外界からの刺激により活性化させるメカニズムや、神経突起を正しく標的に誘導して神経回路を構築させる制御機構の解明等、今後の再生医療研究での1実験モデルとしての応用が考えられる。
- 當間 圭一郎
- 神経再生過程の非侵襲的機能計測(磁気共鳴機能画像法:fMRI)
- 神経再生過程のメカニズムを明らかにすることは、脳障害患者の運動・認知機能の回復にとって重要である。近年、磁気共鳴機能画像(fMRI)をはじめとする非侵襲的脳機能計測法が広く用いられるようになり、頭蓋外から脳の活動を視覚化出来るようになった。一方、脳障害患者に対して多くの理学療法(リハビリテーション)が用いられている。しかし、理学療法により惹起される脳の再構築過程の視覚化・定量的評価は充分に行われてこなかった。理学療法前後の脳活動をfMRIを用いて測定することにより、脳内で起こっている脳再構築過程のevidenceを示すことが可能である。例えば、一次運動野は感覚野と豊富な解剖学的結合を有しているため、末梢体性感覚刺激が脳障害患者の運動機能回復に有用である可能性が示唆されている。末梢体性感覚刺激により一次運動野の活動性が変化することをfMRIを用いて定量化することに成功した。このように、理学療法の効果を非侵襲的脳機能計測法によって評価することは、脳障害患者の機能回復を定量化する有力な手法に成り得る。
- 菊池 真、中井敏晴
- 提言(案
- これまでこれまで細胞・組織レベルでの機能計測やイメージングはもっぱら研究の道具として用いられて来た。再生医療の質を高めるためには、実用的な診断技術・治療技術としての画像計測法が不可欠であり、そのための技術開発は急務である。再生医療におけるバイオイメージングの課題は、計測のマイクロ化と機能回復過程の評価である。計測のマイクロ化は、測定精度の標準化と不可分である。計測工学の立場から、それぞれのモダリティにおける測定精度の標準化と、精度のより一層の向上が急務と考える。また、これまで生体機能計測の標準化は容易ではなかったが、治療の回復過程を評価するためには能な限り定量的な計測を行うことが必要であり、定量性の向上も重要課題である。