研究内容
寺師研究室
寺師研究室
ノイズの影響を受ける現在の量子コンピュータ(NISQ)から誤り耐性量子計算コンピュータ(FTQC)へと移行していく中で、寺師研究室では、量子機械学習や量子シミュレーションなどの量子アルゴリズムの研究に加え、実デバイスへの実装技術、量子誤り訂正符号、誤り耐性量子計算に向けたアルゴリズム拡張などに取り組んでいます。また、超伝導量子ビットを量子センサーとして用いた暗黒物質探索や、量子アルゴリズムによる量子センシング感度の向上についても研究しています。
これらを通じて、量子技術・量子情報を素粒子物理・宇宙物理・重力へと応用していく土台を作り、基礎物理における理論計算・データ解析・実験手法の限界を超える新たなアプローチを探求していきます。
量子機械学習モデルの学習特性:量子モデルでは、量子ビット数とともに損失関数の勾配が指数減衰する「勾配消失(バレンプラトー)」問題が知られています。一方で、学習に用いるパラメータ数がデータ量を超える「過剰パラメータ領域」ではテストデータに対する予測性能(汎化性)が非連続的に向上する「二重降下現象」が起こることも示されています。学習性と汎化性を理論解析と数値計算の両面から調べています。
量子ダイナミクス・回路特性の学習:未知パラメータを含むハミルトニアンの時間発展から観測量の期待値を予測するタスクにおいて、古典学習が困難な領域での量子優位性の検証に取り組んでいます。
Near-Term量子計算での基底状態シミュレーション:量子超越の可能性として、格子ゲージ理論の基底エネルギー測定のシミュレーションに取り組んでいます。156量子ビットHeronプロセッサとクリロフ部分空間のサンプリングを用い、Miyabiスーパーコンピュータによるエラー補正を組み合わせて基底エネルギーの精密測定を進めています。
誤り耐性量子計算での基底状態シミュレーション:初期のFTQC向けに、複雑な制御ゲートや多数の補助量子ビットを必要としない、時間発展演算子を用いた基底状態準備の研究を進めています。
加えて、有限温度・有限密度系でのゲージ不変性を保った量子サンプリング手法の開発や、宇宙論的な物質・反物質非対称性に関するトポロジカル欠陥とフェルミオン散乱の量子シミュレーションにも取り組んでいます。
対称性を用いた誤り訂正アルゴリズム:ゲージ理論の特徴である局所ゲージ対称性を活用した量子誤り訂正の研究を進めています。
連接符号による誤り訂正:エラー推定精度の向上と量子コンピュータ実機への実装コストの削減を目指し、自律型誤り訂正符号とスタビライザー符号を組み合わせた連接符号の理論設計を行っています。
量子ノイズの推定:ノイズチャンネルの高精度推定は誤り訂正にとって重要ですが、推定精度を上げると計算コストも上がります。計算コストを抑えつつ、コヒーレントノイズなどの非パウリ成分を保持した高精度な推定手法を研究しています。
超伝導デバイスの活用:超伝導量子ビットは強くフォトンと結合し、かつμeVの極低エネルギー閾値での非破壊測定が可能であるため、暗黒物質に対する強力なプローブになります。超伝導量子ビットを使い、アクシオンや暗黒フォトンといった波状暗黒物質を探索する実験「DarQ」を進めています。
感度向上のための量子アルゴリズム:エンタングルした量子ビット群や、量子干渉を用いた信号増幅技術を導入することで、ハイゼンベルク限界に近い測定感度を目指しています。
#量子機械学習 / #量子シミュレーション / #量子誤り訂正 / #量子センサー
UChicago & UTokyo’s Quantum Initiative:Universe on a Chip(Co-PI、2025-27年)
IBM-UTokyo Lab.:Elucidating quantum dynamics in particle physics with quantum processor(Co-PI、2026-29年)
基盤研究(A):誤り耐性量子コンピュータに向けた誤り訂正技術の開発(研究代表者、2024-28年度)
先端国際共同研究推進事業(ASPIRE):先端量子技術プラットフォームと国際頭脳循環による量子ネイティブ人材育成拠点(主たる共同研究者、2023-28年度)
共創の場形成⽀援プログラム(COI-NEXT):量⼦ソフトウェアとHPC・シミュレーション技術の共創によるサスティナブルAI研究拠点(研究課題リーダー、2022-2031年度)
日米科学技術協力事業 高エネルギー物理学分野:Simulating Lattice Gauge Theories using a Qudit Quantum Computer(研究代表者、2024-25年度)
挑戦的研究(萌芽):量子状態制御と機械学習を用いた量子科学の変革(研究代表者、2021-24年度)
日米科学技術協力事業 高エネルギー物理学分野:Optimization of HEP Quantum Algorithms(研究代表者、2021-23年度)