ハリウッドのストについて

執筆:Huga

みなさんこんにちは。

みなさんは、普段ハリウッド映画を鑑賞する機会はあるでしょうか。ここ数年、CGやVFXと呼ばれるような特殊演出が驚くほどに進化を遂げており、宇宙空間だけでなく砂の惑星も量子世界も、実際には存在しない生物もそういった技術によって、本当にあるかのように映画を通して触れられるようになりました。

実は現在、ハリウッドを中心にアメリカ全土で2つのストライキが行われています。1つは全米脚本家組合(WAG)が行っているもの、もう1つ行われているのは全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)によるものです。これらのストライキが現在どのようなもので、なぜ行われているのか、そして私たちの生活にどんな影響を与えるのか、そして最後には私自身の考えを述べたいと思います。

まず、根本的にこの2つのストライキがどういうものなのかを簡潔に説明します。

全米脚本家組合(WAG)が行っているのは、脚本家たちの労働環境の改善を求め、映画・テレビ製作協会(AMPTP)に交渉したものの、決裂して起こったのが理由だそう。また、AIによってライターたちの仕事が失われる懸念もストライキの1つになっているようです。

一方、つい最近始まった全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)によるストライキは、多くの理由がありますが最も言われているのはストリーミング作品(NETFLIXやDisney +など)の出演報酬が不明確であることや、映画作品においても出演報酬の引き上げ、AIによる画像の不正使用に対する対応策などをAMTPTに求めたものの、交渉が決裂。

これにより、映画に欠かせない2つの組合が1つの協会に向け同時期にストライキを起こすこととなったのです。

続いて、このストライキをする意味について私の考えを含めながら解説します。

WAGにおいては、AIによる問題がメディアでも多く取り上げられていますが、これはみなさんが思うよりもとても重大な問題です。現在の職業のほとんどが今後100年間でAIに奪われていくという話を聞いたことはありませんか?脚本家というアーティストにおいてもこの問題は適応されます。最近日本でも、AI画像生成アプリなどが流行っており写真を読み込んだだけでスタジオ・ジブリ風のイラストができたりするようなものも登場しています。暇潰しや話題作りで楽しんでいる方が多く見受けられますが、これ実はイラストレーターの仕事を奪いかねないものでもあります。私のTwitterのTLで見たのですが、絵師Bさんのイラストを何枚かAIに学習させ、Bさん風のイラスト!として第三者が発信するという行為は果たして著作権侵害にあたるのか?という議論がありました。実際、これって法律ではなかなか制限が難しいんですよね。

脚本家も同様の問題が発生するケースがあります。例えば、既に他界されている脚本家の作品をいくつかAIに学習させることで、まるでその人が書いたような作品ができあがるかもしれません。でも、これをしてしまうと脚本家の仕事ってどんどん減ってしまうのだと思います。ハリウッドの脚本家(かなり売れている方)で、1本あたりの報酬の平均は大体数千万円〜数億円と言われていました。ですが、労働環境が良くない現時点ですから、これよりはるかに少ない数百万円だと思ってください。それに追い討ちをかけるようにAIに仕事を奪われてしまったら少ない賃金とはいえ、今ある仕事が徐々になくなってしまうわけです。お金がもらえないどころか、彼らの才能を発揮できる場所すらも奪われてしまうのです。

そして、SAG-AFTRAのストライキは、AIに関することや賃金の引き上げなどを組合が訴えています。組合に所属している俳優たちはそれぞれ関わってきたスタジオに対しての労働環境の酷さや、CEOに対する不満も明かしてきました。WAGよりもSAG-AFTRAの方が今では規模が拡大しているようにも思えます。今回のストライキでも私たちが知ることのなかった生々しい現場も明らかになってきています。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」などに出演している俳優、ショーン・ガンはインタビューでディズニー社CEOのボブ・アイガー氏に対する怒りを隠すことができませんでした。夢を売っている企業であるからこそ、労働者の生活や健康が考慮されないのはあり得ないわけです。

俳優という仕事も生身で演じるだけでなく「Avatar」や「Pirates of the Carribian」などのキャラクターのようにモーションキャプチャを用いたり、特殊メイクをせずともリアルな異生物を演じることができるようになりました。ですが、その技術が発展していくにつれて本物のアクションを見ることができない、本物のスタントが必要とされなくなるのではという意見も増えているのも事実です。いずれ、AIが演じるキャラクターが登場し、アカデミー賞を受賞する日がきてしまうかもしれません。AIに感情のこもった演技ができるかどうかは知りませんけども。


では、この2つの大規模なストライキは私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょうか。


具体的に以下があげられます。


もうすでにご存知の方も多いと思いますが7月21日公開の「Mission Impossible: Dead Reckoning Part1」の宣伝のために来日を予定していたトム・クルーズやサイモン・ペッグは今回のストライキ発生によりキャンセルしています。また「Barbie」の日本公開に合わせて来日予定だったマーゴット・ロビーも同様にキャンセルとなってしまいました。

また、マーベル・スタジオの映画「Deadpool 3」や「Captain America Brave New World」、スター・ウォーズのスピンオフドラマ「マンダロリアン」シーズン4などは撮影がストップになったことにより、公開が延期される可能性が高くなっています。また撮影がまだ始まっていないワイルド・スピード次回作「Fast X Part2」なども今後の撮影スケジュールが変更される可能性があるため、公開日も後ろ倒しになることでしょう。


これらの影響を考えると、私たち観客側は楽しみにしていた作品をもう少し待たなければならなくなります。流石に公開中止とまではならないにしても、ヒーローたちの活躍を見るまでに更に待たなくてはならないのは私自身も残念ではあります。でも、ここで起こったストライキを通して俳優や脚本家たちの労働環境が改善されなければ、いい作品が見れなくなるだけでなく彼らの生活もままならなくなってしまうのです。


ここからは、私個人の見解と考えを含めてお話しします。

今回のストライキは問題が解決するまでどれほど時間がかかってもいいので徹底的に行って欲しいと思っています。クリエイターたちの才能や生活を守ることは企業やメディアの責任ですし、どんなにAIや技術が発達してもそれらは変わるべきではないはずです。私自身も将来クリエイターという分野の仕事を目指しているので、自分がいざ働く時に仕事がなくなっていて欲しくありません。

現在、映像作品は従来の映画館やDVD Blue-rayだけではなくAmazon Prime VideoやNETFLIX, Disney+などのサブスクリプションを通じて楽しめるようになっています。パンデミックを機に人々の生活が大きく変化し、映画館の需要も右肩下がりになりつつあります。そういった時代の変換期に起こってしまうのがストライキです。でもストライキは決してマイナスなことだけはありません。むしろプラスになるように人々が一致団結して活動を行っていることは、今後の世界をより良いもに変えていくチャンスだと思います。みんなが大好きなコンテンツが終わらないためにも、そして全てのクリエイターの皆さんの生活や仕事を守るためにも、私は今回のストライキを支持していきたいです。

August 15 2023

参考記事

・VOGUE JAPAN

・民放Online

・SAG-AFTRA 公式インスタグラムアカウント

画像引用

SAG-AFTRA 公式HP