最新作「マイ・エレメント」レビュー

執筆:Seira

皆さんこんにちは。Seiraです。8月4日に公開されたディズニーピクサー最新作「マイ・エレメント」(原題 : Elemental)、皆さんご覧になったでしょうか。私も、友人たちと吹き替え版で鑑賞してきました。今回は、約1年ぶりのピクサー最新作「マイ・エレメント」をネタバレありでレビューしていきたいと思います。(未鑑賞の方はお気をつけください)

まず、声を大にして言いたいのは、2020年以降のアニメーション映画の中で最高傑作では!?ということです。ストーリー、キャラクター、アニメーションの全てが過去最高レベルの作品だと感じました。

6月に「The Little Mermaid」を鑑賞した際、掲示されていたポスター

今作のポイント

なお、ここから先はネタバレを含みますのであらかじめご注意ください。

⚠️ネタバレ注意!⚠️

今作は火のエレメントであるエンバーと水のエレメント、ウェイドとの近くて遠いラブストーリーです。

近年のピクサー作品では友情や家族、自分自身のことをテーマに掲げていたものが多い中、ある意味この「マイ・エレメント」は異色の作品であるとも言えるでしょう。では、どんなところが素晴らしかったのか、上記の三つのポイントを元に解説していきたいと思います。

ピクサーといえば1995年公開の「トイ・ストーリー」で全編フルCG長編アニメーションという画期的なコンテンツを生み出し、以降も多くの作品を展開してきました。新作が公開される度に進化しているものの一つはその映像技術。今回の「マイ・エレメント」では火や水などがよりリアルに表現されていました。特に、洪水のシーンは多くの皆さんが「わぁ!」と思ったのではないでしょうか。あれは水道をひねれば出てくる水そのものでしたね。


リアルに火や水が表現されてる中で、今回のキャラクターデザインは個人的にクラシックの要素がある親しみやすいシンプルなデザインだなと思いました。ミッキーマウスやくまのプーさん、チェシャ猫などのクラシックキャラクターの多くの共通点として、複数の丸が合わさって構成されていることをご存知ですか?反対に、「ミスター・インクレディブル」や「インサイド・ヘッド」などのキャラクターは三角や四角が合わさって構成されています。

今回の「マイエレメント」に登場するキャラクターたちは比較的丸に近いもので構成されているように思います。特にウェイドや土のエレメント、ファーンなんかはまさに丸みを帯びたキャラクターですよね。主人公のエンバーは「インサイド・ヘッド」のヨロコビに近い、まん丸の顔と細長い楕円を組み合わせたディテールかなと思います。丸いデザインはディズニー以外にもアンパンマンやドラえもん、ミニオンなど小さい子供に人気なキャラクターの共通する部分でもありますね。優しく包み込むような温かい雰囲気がします。

「マイ・エレメント」はリアルな世界観の中に、昔ながらのクラッシック要素のあるキャラクターデザインが見事に素敵な化学反応を起こしていると言えるでしょう。

主人公の女の子、エンバーは火のエレメント。彼女は、大切に育ててくれた両親の店を継ぐために毎日頑張っていますが、時々店にやってくる”迷惑客”にカッとなって感情をキープできなくなってしまう性格を持っています。

そして、もう1人、水のエレメントのウェイド。彼は役所で水道を管理する職についている心優しい青年。水のエレメントなので排水溝に流されてしまったり、涙脆かったり、愛嬌が溢れるキャラクターです。


違う種族である2人はエンバーの家で起きた水漏れトラブルがきっかけで出会います。最初はお互い住人と役所の人の関係でしたが、それを機に何度か会うにつれて次第に仲良くなり、お互いに相手のことをもっと知りたいと思うようになります。


ですが、エンバーだけは素直にハッピーになれない別の問題がありました。両親のことです。

彼女の両親は若い頃エレメントシティに越してきましたが、当時そこは水や風などのエレメントたちが多く、火のエレメントである彼らは時に冷たい扱いを受けることがありました。そこから、一代で店を開き、そこを中心に火のエレメントたちの暮らす街ができました。エンバーの両親は自分たちと同じ苦しみを味わって欲しくないという思いから、特に水のエレメントとの交際はおろか、関わらないようにとまで言っていたのです。

そもそも、火と水は対照的な存在。火が強ければ水は消えてしまいますし、水が多ければ火は消えてしまいます。エンバーはウェイドに触れることすらできずにいたのです。隣にいるのに、触れられない。近くて遠い2人の距離は暖かくも切ないものでした。ですが、物語が進むにつれて、2人にある変化が訪れていくのです....。(この先は本編を見て確認してね!)


ディズニー作品の日本語吹き替え版には日本のアーティストが歌うエンドソングが流れます。「マイ・エレメント」では、Supereflyさんの楽曲「やさしい気持ちで」が特別バージョンで使用されました。原曲はイントロから元気よくスタートしますが、今回の方はタイトル通り優しく繊細な音で始まります。実は、原曲の方は映画が公開される前から聞いていたので、初見では全く違うアレンジに違和感しかなかったのですが、映画を見てエンドロールが始まり楽曲が流れると、「マイ・エレメント」の世界観をそのまま歌っているかのような感じがしました(個人の感想です)。

個人的に、日本語版エンドソングは当たり外れが多いと感じていて、もちろん作品にマッチしている楽曲もありますが、中には「いや、そうはならんやろ」と思ってしまう選曲もありました。

ところが、今回の「やさしい気持ちで」はストーリーにあまりにもマッチしすぎていました。


「手でさわれない心はいつも人と人が育て合うものさ」


この歌詞やばすぎませんか...?? エンバーとウェイドそのものなんですよね。本編見た後だと余計にそう感じてしまいます。私は今ではこちらの方を聞きすぎて、曲を聞くたびに2人のことを思い出します。

今回の記事の1番下から聞くことができますのでもしよければ聞いてみてください。

今作の監督、ピーター・ソーンさんはピクサー作品「アーロと少年」や「晴れときどきくもり」なども手がけてきたピクサーの中でも超有名なアーティストです。実は、「マイ・エレメント」のストーリーには彼の半生から大きく影響しているところがたくさんあります。

彼はアメリカ生まれ育ちですが両親は韓国系の移民でした。共働きだった両親は、限りある稼ぎの中でも幼い彼とその兄弟をよく映画館に連れて行っていたそうです。両親の存在こそ彼が現在アニメーションの制作に携わっている原点だと思います。エンバーの両親も移民と捉えることができ、監督の両親の姿と重なる部分があるかもしれません。

彼はメディアの様々なインタビューの中で両親への感謝をたくさん語っており、それだけ彼の中で大きな存在だったのだと思います。製作の裏側を覗いてみると、そこにはフィクションではない、本当にある家族の愛が隠れていました。

ここまでが、ネタバレありの内容でした。


改めて、私はこの作品が大好きになりました。ピクサーの歴代作品でランキングを上げるとすれば、1位が「トイ・ストーリー2」、2位が「ミスター・インクレディブル」、3位が「マイ・エレメント」という感じです(この記事を書いている時の気分で決めました)。ピクサーは神作しか生み出さない会社だと思っているので、今後公開される「Elio(原題)」なども気になりますね!

ぜひ、この「マイ・エレメント」、一度でも何度でも、鑑賞してみてください♪

日本語版エンドソングをYoutubeで聞いてみよう!!

ついでに英語のエンドソングも聞いてみよう!!

Sep 4 2023