マルシエン2さんにマルチバース形式で公式二次創作小説を執筆いただきましたので掲載します:)
・設定
名前:法泉レイリ
身長:160.4cm(日本最初の成文法である十七条憲法が成立された西暦604年に由来)※可変
誕生日:12/15(一番最初にイラストが投稿された日を参照)
・公式二次創作1
法泉レイリは悩んでいた。
目の前には品切れ続出で今まで手が出せずにいた新作のスイーツ。
しかしこれを買ってしまっては公共料金の支払いの為のお金が足りなくなってしまう。
また来ればいいだけの話ではある。しかし一度帰って再び外出するのは、出不精な彼女にとってはこうして頭を悩ませる程度には気力を必要とする行動である。
とはいえ、ここで買わなければ次に来た時には売り切れてしまっているかもしれない。
「金を出せ!!」
目の前の欲望とやるべきこと、その二つを天秤にかける作業は突然の怒声によって中断された。
何事かと彼女が声の出所であるレジの方を見やると覆面を付けた男が店員にナイフを突きつけ金を引き出させていた。
「おい、お前。それを今すぐ捨てなさい」
「あ?」
法泉に気付いた覆面の男は店員を抱き寄せ、ナイフの切先を店員の首筋に当てた。
「動くな!!動いたら店員の命はないぞ!!」
人質を取られ絶体絶命の状況。しかし法泉の様子は平静そのものであった。
「人質による強要行為等の処罰に関する法律」
「は?」
緊迫した状況とは裏腹に法泉の堂々とした声と予想だにしなかった言葉に覆面の男の思考が一瞬停止する。
「人を逮捕し、又は監禁し、これを人質にして、第三者に対し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求した者は、六月以上十年以下の懲役に処する。」
「わっ!!」
法泉が言い終わると同時に人質に取られていた店員が覆面の男から弾き出されるように前に射出された。その勢いは相当強く、スイングドアからカウンターを抜けて強盗と相対する彼女に倒れ込んだ。
「怪我はないか?」
「あ、はい」
あっけに取られて絶句している男をよそに法泉は抱き止めた店員の無事を確認し自身の後ろに下がらせた。
「なにをした!!」
「さぁ?雨でも降って濡れた地面で滑ったんじゃないか?」
ここ数日は快晴である。
「舐めてんじゃねえぞ!!」
その人を食ったような返答(本当のことを言ったところであまり変わらないのだが)に男は人質が自分の手から離れたことも相まって激昂してナイフを突き立てようと法泉の方へ走り出した。
「銃砲刀剣類所持等取締法」
数瞬後には自身に刃が突き立てられているだろう状況においても、先ほどと同じように落ち着き払った様子で法泉は条文を誦じ始めた。
「何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、銃砲若しくはクロスボウ(引いた弦を固定し、これを解放することによつて矢を発射する機構を有する弓のうち、内閣府令で定めるところにより測定した矢の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるものをいう。以下同じ。)(以下「銃砲等」という。)又は刀剣類を所持してはならない。」
刹那の間に明らかに人間の限界を超えた速度で条文を最後まで言い切ると、男が持っていたナイフがその手から弾き飛びあらぬ方向へと飛んでいった。
「っ!?」
覆面の男が動揺した一瞬の隙を利用して法泉は男に足払いをかけ、姿勢を崩したところを押さえ込んだ。
「何か縛るものは?」
法泉の問いかけに怒涛の展開にフリーズしていたところから再起動した店員が「あ、それなら!!」とバックヤードにあったビニール紐を持ってきて犯人を縛り上げた。
その後やってきた警察に犯人は連れて行かれ店は平和を取り戻すのであった。
「本当に助かりました!!私達にできることならなんでも言ってください!!」
警察が去った後店員一同から頭を下げられ法泉は困ったように頬をかく。
「いや、別に見返りを求めていたわけでは……」
「そういうわけにはいきません!!」
ずずいとさっき助けた店員から迫られ困り顔になる法泉。
さてどうしたものかと悩み始めたその時、視界の端にさっき買うかどうか悩んでいたスイーツが目に入った。
「それなら───」
ほくほくと帰路に着く法泉。その手には先程のスイーツと共に色とりどりのお菓子たちが入った袋。
これでしばらくは甘味には困らないな、と自然に口角が上がる。
ふと、何かを忘れているような気がして彼女は首を傾げた。
はて、私は一体何をしにコンビニに……と。
「あ」
法泉レイリは公共料金を払い忘れていることに気付いた。
・公式二次創作2
レイリさん、懺悔していいですか。
「なんだ藪から棒に」
実は昨日飲食店でつい食べ過ぎてしまいました。こんな私を許してくれるでしょうか?
「いや別になにを食べようと構わないが……なぜ急に懺悔しようと?」
ほら、七つの大罪に暴食とかありますし……そういう戒律みたいなのに引っ掛かってるかなと思いまして。
「宗教が定める戒律と国家が制定する法律は違うからな、私は法律の方に抵触しなければとやかく言うつもりはないぞ」
そうなんですか?
「ああ、まあ場所によっては戒律が法律に組み込まれている場合もあるが……少なくともここではそんなことはないからな」
なるほど……じゃあこれからはガンガン暴飲暴食してもいいんですね!!
「いやそれは普通に節制したほうがいいだろ」
・公式二次創作3
「おや、随分疲れた顔じゃないか」
サークルの活動報告書を提出した帰りに寄ったサークル室に入るや否やその部屋の主、法泉レイリが読んでいた本から顔を上げそう言った。
白みがかった髪に頬には蛍光色の模様という出立はファッションストリートを歩いたとしても目立つだろう。それでいて法服を思わせる服装というなんともアンバランスな、しかしなぜか似合っている彼女はこの薄暗いサークル室の中でもとりわけ目立っているように見えた。
「誰かさんがやらない活動報告の書類を作ってましたからね」
「うむ、いつも助かってるよ。前は活動報告書なんて書かなかったから勝手が分からなくてね」
若干の呆れが入った言葉に対しても特に気にした様子もなく、ニコニコと笑いながらそう言う彼女。
「まったく、人使いが荒いんですから……」
彼女はこの法学研究サークルに所属する先輩……のはずである。一体何回生なのかは分からないが私が新入生の時からすでに"こう"だったのでおそらく先輩であろう。
入学後に構内を探索していた時にふと立ち寄った部屋で一人本を読んでいたところを見かけたのが先輩との出会いであった。
当時は先輩の人間性も知らなかったため私は彼女にうまく言いくるめられサークルに入部させられていた。そうして今ではこうして雑務を押し付けられている、というわけである。
……まあ課題やテスト前には随分と助けられているのでギリギリ許容範囲ではあるが。
そんな私の心境を知ってか知らずか先輩は「ああそうだ」と言いある提案をしてきた。
「そうだな、いつも頑張っている君にご褒美をあげようしゃないか」
「ご褒美、ですか?」
「うん、流石に私も君に書類を押し付けていることについての負い目があるからね。どうかな、今日は私がご馳走しよう」
突然の提案であったがわざわざ奢ってくれるというのだ。断る道理はなかった。
「……ではお言葉に甘えて」
「……なんだ」
私の視線に気付いたのか先輩が疑り深い目でこちらを見てくる。
「あ、いや、先輩もファストフードとか食べるんだなって……」
先輩から「ついてこい」と言われて着いた先は駅前にある某ファストフード店。店内の喧騒の中であっても彼女は一際目立っていたが、端の席を確保したおかげか効果の視線に晒されることを回避していた。
「人をなんだと思ってるんだ」
「そもそも先輩がご飯を食べているところを見たことがなかったので……」
「む……確かに言われてみればそうか」
初めて見る先輩の食事風景に思わず目線を向けてしまう。先輩といえばあの薄暗い部屋の中で本を読んでいる姿というのが相場だったので、こうしてハンバーガーを口いっぱい頬張っている姿はなんとも珍しいものだった。
つい見すぎてしまい私の視線に気づいた先輩に「これも欲しいのか? 遠慮するな、今日は『ご褒美』だからな」とそれまで食べていたハンバーガーを差し出されしまった。(流石に断った)
そうして前と同じように先輩と振り回されながら過ごすこと数ヶ月、いつものようにサークルの活動報告書を顧問の教授に渡して帰ろうとしたところ教授に呼び止められた。
「いやぁ、改めて言わせてもらうけど助かったよ」
一瞬何のことかと思ったがおそらく活動報告書が滞りなく提出されたことに対する感謝だろう。
どうせ先輩は私が入部する前も活動報告書を書くのをサボっていたに違いない。それで困っていたところを私が入部してからしっかり提出されるようになって一安心、といったところか。
「まあ他にやってくれる人もいないので……」
「ん? いやいや、そうじゃなくて」
「?」
他に何か教授に感謝されるようなことをした覚えがなかったので私は頭を捻った。
「実はあそこのサークルは十年くらい前に所属者がいなくなっていてね、そろそろあそこのサークル室を他のサークルが入れるように中のものを運び出そうという話になってたんだ」
「……え?」
「いやぁ、あそこは随分本が溜まっていたからね、わざわざ運び出すなんてことをしなくて助かったよ」
はっはっはと笑いながら去っていく教授。
サークル室の扉を開けると、いつものように先輩が定位置に座って本を読んでいた。
「どうしたんだい、何か言いたげな顔だが」
「先輩、ここのサークルに所属してないですよね。というかそもそも生徒かも怪しいですよね」
私の言葉に先輩の目がいつもより少しだけ見開いたような気がした。
「なぜそう思うんだい?」
「教授から聞きましたよ。十年前から僕がこのサークルに入るまでは誰も所属してなかったって」
「……ふむ、確かに私はこのサークルに所属していることにはなっていない。しかし、生徒かも怪しいというのは?」
「以前は活動報告書なんて提出する必要がなかったとこの前言ってましたよね」
「ああ、確かに言ったね」
「これは調べてわかったんですけど活動報告書の提出が求められるようになったのは九年前、先輩がどれだけ留年していたとしても八年以上の在学は不可能なはずです。よって先輩が今現在在学しているとは考えにくい」
これを調べるのは大変だった。どこにも活動報告書の提出が求められるようになったのがいつかなんて書かれていなかったので、わざわざ教務部に出向いて調べてもらったのである(この時変な目で見られたのは言うまでもない)。
「ふむ……それで、私が生徒じゃないと分かったらどうする気かな?」
その質問に私は即答で返す。
「別にどうもしませんよ」
「……それはなぜかな?」
「まあ先輩が生徒じゃないってことは薄々気付いていましたからね」
先輩が講義を受けに行くところやレポートを書くところを見たことがないし、こちらから講義や単位の話を振ってものらりくらりとかわされるだけだったので前から疑問には思っていたのである。
「それに……」
「それに?」
ここまで言いかけて口を滑らせてしまった、と思ったがが先輩に聞かれてしまった以上気恥ずかしいが答えるしかなかった。
「……なんだかんだ先輩といるのは楽しいですからね」
先輩のおかげで振り回されることはあるがまあそれなりに楽しい大学生活を送れているのだ。この生活をわざわざ告発してまでなくそうという気にはなれなかった。
気恥ずかしさから逸らしていた目線を戻すと先輩は口を開けたまま固まっていた。
「どうしましたか先輩?」
「ああ、いや、なんでもないよ。それにしてもなかなか嬉しいことを言ってくれるじゃないか」
その言葉に再び顔に熱が籠るのを感じる。私は誤魔化すように口を開く。
「と、とにかく卒業までの付き合いですけど改めてよろしくお願いしますね、先輩」
「ふむ、卒業までと言わず卒業してからも一緒にいてやろうじゃないか」
「勘弁してください……」