『蓬莱学園の冒険!』回想録
根強いファンの多い『蓬莱学園』ワールド。その原点はネットゲーム90『蓬莱学園の冒険!』にあります。PBMプレイヤーの間では伝説とまで言われるこのゲームを、当時一参加者であったきりのともあきが資料を元に振り返ってみたいと思います。
第1回 蓬莱学園の冒険!スタート(1989年)
ネットゲーム90『蓬莱学園の冒険!』のオフィシャル誌「蓬莱タイムズ1月号」が発送されたのは、暮れも押し迫った12月26日のことでした。「蓬莱学園の復刻」に所収されている柳川GMの回想によると、本来1月頭に届くはずのタイムズが早く発送され過ぎたために、一部プレイヤーの間で「これは12月頭に届くのが送れたに違いない!」と噂になり、スタッフ一同頭を抱えたとあります。
残念ながら私は、お金を振り込むのが遅れたために2月期からの参加になりました。なので、白い表紙の1月号は持っていません。バックナンバーもあれよあれよという間に売り切れてしまい、入手できなかったのは痛恨の極みです(後に入手)。
それはさておき、ここでゲームスタートまでの流れを簡単に説明しておくことにしましょう。
『冒険!』の場合、パンフレットを請求するとキャラクターの作り方や学園の簡単な紹介が載ったB5、8Pのパンフレット(※1)が届きます。
プレイヤーはそれを見て自分の分身であるキャラクターを作り、参加費を払い込むと共にそれを遊演体に送るのです。
そうすると、その参加月のタイムズとルールなどが書かれた生徒手帳などが送られてくる(※2)ので、そこからゲームに参加出来ます。
今は、お金を振り込んでから分厚いスタートブックが送られてきて、そこに掲載されている情報を元にキャラクターを作るのがほとんどですが、『冒険!』の場合、ごく限られたヒントを除けば殆どの情報がゲームスタート後に提供されるので、むしろ今よりも公平だった様な気がします。
加えて、広大なワールドの大部分は空白でしたから、プレイヤーはそこに自分なりの冒険物語を書き込むことが出来たのです。
さて、『蓬莱学園の冒険!』は始まりました。いったいこれからどんな物語が書き込まれていくのでしょうか?それは次回の講釈で。
※1)平成2年度私立蓬莱学園高等学校新・転入生募集要項というパンフです。
※2)スタート時に送られて来たのは、
蓬莱タイムズ
生徒手帳
謎の断片(いわゆる南極文書)
キャラクター情報(裏面にプロローグ)
リプライはがき
なんでもはがき
以上でした。
第2回 はじめてのリアクション到着(1990年2月)
年が明けて1990年の2月15日。プレイヤーのところに遊演体のロゴが入った封筒が届きました。封を切ってみると、そこには蓬莱タイムズと共にはじめてのリアクションが!『冒険!』は今各社で行われているメイルゲームとは違い、予め決まった選択肢を選択する「定番行動」と、特定のキーワードを入れる必要がある「自由定番」、そして全く制約のない「フリーアクション」の三つがありました(※1)。
プレイヤーはそのどれかを選び、遊演体に送るわけです。もちろん、フリーアクションの方が定番行動よりも成功する確率が低いのは当たり前(しかも、フリーアクションが失敗すると1回分無駄になる)ですが、リスクが高い分成功したときに帰ってくるものは大きく、ゲームが進むにつれてフリーアクションを選ぶプレイヤーが多くなっていきました。
でも、それはまだ先の話。この段階ではまだ様子見がほとんどだった様です。
第2回目からの参加となった私の手元にはじめて封筒が届いたのもこのときでした。蓬莱タイムズと謎の断片を手にネットゲーム初参加の私は???になっていましたが、実はすでにこの段階である同人誌には初期断片の完全版と、それに隠された暗号の殆どが解かれていたのです(※2)。
そのことは『蓬莱学園の復刻!』にも書かれていますが、過日、はざま君(※3)の家でその同人誌を見せて貰い驚くと同時に興奮しました。
でも、ネットゲーム初参加の私はそんなこともつゆ知らず、友達と一緒に次回どうしようかうんうんうなっていたのでした。
結局、臨時講師試験を受けると共に、瓜生乙姫副会長(※4)に会いに行くという定番行動を選んだのですが、さてどうなることやら。
それは次回の講釈で。
※1)ここら辺の詳しいことは、ほぼ同じシステムを採用している『蓬莱学園の黄昏!』のルールを参照して下さい。
※2)後に生徒会長になる人や、副会長になる人や、外務委員長になる人などが関わっています。 13賢人同盟って奴ですね。
※3)体育祭の競技結果の集計を真面目に行い、十二階遊びを再発見した式典実行委員会副委員長(後に委員長)
※4)重要NPC。正体は九尾の狐。いろいろ思い入れがあるのですが、その訳は回が進むごとに明らかになるでしょう。
第3回 無名剣を捜せ!(1990年3月)
改めて当時のリアクションを読み返していると、前回書いた内容に一部間違いがあることに気づきました。瓜生副会長に面談に行くという定番行動を選択したのは、2月期ではなく4月期のこと。2月期に私が選択したのは、上旬「臨時講師試験を受ける」、中旬「クラブ活動に専念する」、下旬「無名剣を追いかける」という三つの定番行動でした。
「冒険!」が定番と自由定番、そしてフリーアクションの三つで成り立っていることは前回お話ししたとおりですが、定番は確実に何らかの情報を手に入れることが出来る代わりに、ストーリーに影響を与えることが出来ないというモノ。
大体300~400字程度の二人称で書かれたお話が帰ってくるのですが、これが意外と面白い。
体力をつけるという選択肢だけでも、心理学研で催眠術を掛けられたり、外科手術研に改造手術をされたり、人力飛行機部で猛特訓を受けたりするなど様々なバリエーションがあり、また後から読み直してみると様々な伏線が張り巡らされていたりして、読んでいて楽しくなります。
今のPBMは自分のキャラが出ている小説が帰ってくるということをウリにしているようですが、この定番はそんなものを吹き飛ばしてくれるぐらい魅力があります。
フリーアクションのリアクションは結構残っているのですが、定番は散逸が激しくほとんど残っていません。お手元に定番のある方、それは貴重な宝物ですよ。
さて、私の選んだ定番の結果ですが、 臨時講師試験は珍問奇問の山。取りあえず「本土からはほとんど見えないが、宇津帆島からならよく見える有名な星座を二つ記せ」の様な調べれば判る問題を解き、他の訳の分からない問題は適当に埋めましたが、結果はなんとか合格。「蓬莱学園の校歌を唄う(なんのメロディかを明記のこと)」で、「うちの学校の校歌」と書いたのが良かったのでしょうか(笑)。
クラブ活動に専念は、文化系・理科系・体育系に別れているクラブ会館に行って、そこで同じ定番を選択している人の中の何人かのデータが載っているというもの。この定番、「他の人に会いましたよー」というだけの遭遇定番で、クラブで何かをするというものじゃなかったので、 このあとかの六・四内戦の折に痛恨の失敗を起こす原因となります。
まあ、先の話はさておき、最後の無名剣。1月にアンヘラ・国東がリーデンブロック博物館から盗み出した無名剣は、アンヘラが土屋圭絵と幽霊塔で対決した際に、刀身と鞘、そして柄がバラバラになっいました。それを追って各団体が大騒動を繰り広げ、最終的に鞘と柄は当局の手に戻ったは良いのですが、「仮面の学生騎士」からそれをいただくとの予告状が。
他にも新空港反対デモで鷹月奇子と中村渠弓美が竜虎の対決を行い、論破ルームでアンネリ・ランツィラが京都風之助に捕らえられるなど、後に大きな役割を担うPC・NPCたちがこのころから顔を出し始めて来ました。
果たしてこれからどのような展開を見せるのか?それは次回の講釈で……。
第4回 定番の謎?(1990年4月)
「蓬莱学園の冒険!」も第3回目。あちこちで事件が起こり、徐々に学園中がヒートアップしてきました。
このころ一番学園を騒がせていたのは、先月も書いた『無名剣』。紆余曲折を経て学園当局の手に戻ったこの剣を、仮面の学生騎士が頂戴するとの予告状が届いたのが先月のこと。穂北眞八郎記念大講堂に置かれた『無名剣』を巡り、生徒会と学生騎士の戦いが起こります(余談ですが、「冒険!」最大の悪役、南豪君武がイラストになったのはこの月がはじめてのことです)。
結果、勝ったのは学生騎士。巧妙な陽動作戦を用い、大講堂の中央に置かれた『無名剣』は、仮面の学生騎士の手に入ることになりました。まあ、その正体があの人なのですから、当たり前といえば当たり前なのですが(苦笑)。
ちなみに私も騎士が予告状を出した3月14日に合わせて、定番を選択していました。そしてそこで得たイメージが、「智」の文字と「吹雪と、ひげの大男と、古い運河に映るガス灯の列……」。終わってから思えば、これだけでも凄いヒントですが、その当時の私の頭では、そんなところまで想像もつきませんでした。
同じ月に土屋圭絵にも会いに行っているのですが、そこで得たイメージも「……螺旋、螺旋。桜美人。知里のおじいさま。昔むかしの恋物語。穴の中。晴彦にいさん。火事。傷跡。冷たい目。けして血はつながっていない。……」というもの凄いもの。え、何を言っているのかさっぱり判らない?それはTRPGサプリメント『蓬莱学園の秘密!!』の土屋家に関する記述を読んでみましょう。いやはや、こんなところまで考えられているとはと驚くことしかりです。
他にもこの月には、海洋冒険部の名艦『摩耶』が就役したり、同一FAへの最多PC参加記録を持つ第五次整頓隊が旧図書館から帰還したり、やっぱりいろいろなことが起こっています。
さてさて来月はどのような展開を迎えるのでしょうか?それは次回の講釈で……。
第5回 さて困った(1990年5~6月)
学園は大体育祭で盛り上がり、生徒会長選挙の立候補も開始され多くの候補者が立候補していましたが、リアル受験生で住所非公開(※1)プレイヤーだった私は他のプレイヤーとの交流もなく行き詰まっていました。
しかも私を「冒険!」に誘った友達は3ヶ月で辞めてしまい、本当のボッチプレイヤーに(涙)。
蓬莱タイムズを読んでいると、色々と面白そうな話は載っているのですが、フリーアクションを掛けると体力が無くなって死んでしまう(※2)という話だったので、フリーアクションは最後の武器だと毎月定番行動で体力を上げつつ、情報を集めていました。 成功した人たちはバンバン情報交換してフリーアクション掛けてたんですけどね。ええ。
さて、どうしたもんかと思っていたのですが、生徒会長選挙が始まると同時に、非常委員会生徒指導本部(SS)が演習を始めたり、学園探訪に軍事研究会が載ったり、「ああこれはクーデターが起きるな」と思わせる話があちこちに出始めたので、軍事研と航空部所属のキャラとしては「打倒クーデターだ」と意気込んで初めてフリーアクションに挑むことにしたのでした。
※1)ネットゲームは郵便を用いて情報交換をするために、他の参加者に住所を公表するかしないか選択することが出来ました。
公開にしているとアクティブな他のプレイヤーから連絡が来たりしてより情報を入手しやすくなったり、一緒に行動することが出来たのですが、なんせ初めてのネットゲームだしリアルな受験生でしたしねぇ。
※2)実際に死亡したキャラもいます。
第6回 内戦(1990年6~8月)
初のフリーアクションに挑み、届いた封筒を開けるとそこにはいつもの定番の他に長文のリアクションが。
そして蓬莱タイムスを開くとドドンと「内戦!」の文字が躍っています。
リアクションのタイトルは「~西は淵内湾から東は墨川まで~」。学防軍(※1)側から見た内戦についての公刊戦史の体裁をとった六行道士マスターの大作です(※2)。
私が掛けたFAは「クーデターを阻止するため戦う」みたいなものだったので、当然リアクションにも登場していないのですが(※3)、それでもこの戦いの片隅に自分のキャラクターがいるということだけで、すごく心を奮わされました。
このリアクションにより私の人生は大きく狂わされたと言って過言ではありません。
内戦は1か月で終わらず次回に続くことになったので、引き続き学防軍の一員として戦うぞ~と何を考えたのか私は定番行動を選んでしまい、「~西は淵内湾から東は墨川まで~」の続きを読みことが出来なかったのでした(※4)。ぎゃぼー💦
※1)軍事研、海洋冒険部、航空部(+銃火器研) S-NETで私がへまこいて、学防陸海空軍に再編されちゃいます。ごめんなさい!
※2)SS側から見た戦史や、他にも色々バリエーションがあることに気づくのはS-NETの折にリアクションを集め始めてからでした。どれだけバリエーションがあるのかは今もって不明です。
※3)蓬莱学園の冒険!のフリーアクションは成功しても自分のキャラの登場は約束されていませんでした。
※4)同じ失敗を私はもう一回やらかします。