コロナ禍で,熊本県の妖怪である「アマビエ」がネット上で脚光を浴びている.厚生労働省のホームページでは,若者向けの啓発アイコンに「アマビエ」の画像を使用している.
しかし,純粋な熊本人であることを自認する筆者はその存在を知らなかった.朝日新聞デジタルの記事に次の記載がある.
(前略)妖怪マンガの大家・水木しげるの作品でも、アマビエは熊本県の妖怪として紹介されている。地元では、アマビエはどれぐらい知られているのだろうか。妖怪に詳しい熊本大学の鈴木寛之准教授(民俗学)に聞くと、「熊本には、アマビエに結びつく伝承は残っていないようです」と意外な返事が返ってきた。肥後の海に現れたという話は、かわら版や新聞によって他地域で広まったという。
改めて調べてみると,アマビエの出現は肥後国から遠く江戸にまで伝えられ,挿図付きで瓦版(1845年)に載ったとのことである.地元より全国的に知られているのはそのような経緯があったからである.
肥後国海中え毎夜光物出る。所の役人行
見るに、づの如く者現す。私は海中に住、アマビヱと申す
者也。當年より六ヶ 年の間諸国豊作也。併し、
病流行、早々私写し人々に見せくれと
申て、海中へ入けり。右写し役人より江戸え
申来る写也。
弘化三年四月中旬
「疫病を沈静化させる」と伝えられる熊本ゆかりの妖怪である. 江戸時代後期の肥後国の海に現れたという.毎夜,海の中に光るものが出没するというので,役人が向かったところ,自分はアマビエだと名乗り,「病気が流行することがあれば,私の姿を絵に描いて人々に 見せよ」と告げたという記録が当時の瓦版に残されているとのことである.姿形の記述はないが,くちばし状の 口,長髪,ウロコに覆われた体,足は3本という姿が挿図として瓦版に添えられている. ウィキペディア
「アマビエ,菓子」でネット検索すると,九州から北海道に至るまで,多数の菓子店でアマビエ菓子があやかり販売されている.本家?の熊本の菓子店でも販売開始されたようである(熊本日日新聞4月24日記事).
崇城大学(熊本市西区)のホームページに掲載されている現在風アマビエのイラストを紹介しておきたい.
芸術学部デザイン学科マンガ表現コースの小川剛准教授が描いたアマビエのイラスト(4月9日)
筆者によると,数年前に「熊本城ミュージアムわくわく座」から依頼を受けて「アマビエ」を描いたものであり.当時はまさかこんな事態になるとは想像もせず描いたとのことである.
疫病退散に御利益があることを期待したい.