当研究室では現在以下の現象について精力的に研究を行っています。
超伝導とは、物質をある一定温度以下まで冷やすと電気抵抗がなくなる現象で、1911年に発見されました。 超伝導はクーパー対と呼ばれる2つの電子がペアを組むことにより発現し、1950年代に提唱されたBCS理論が微視的理論の基礎となっています。 最初に超伝導体として発見された水銀は、超伝導に転移する温度が約4K(約マイナス269°C)と非常に低い値でしたが、 1980年代に発見された「銅酸化物高温超伝導体」でブレイクスルーが起こり、現在では常圧下で100Kを超えた物質も存在しています。 この銅酸化物高温超伝導体はBCS理論では理解することができないため、「非従来型超伝導体」と呼ばれています。 通常の超伝導体では格子振動(フォノン)を糊(のり)として電子がペアを組みますが、非従来型超伝導では格子振動ではなく電子と電子のクーロン反発力が糊の起源となります。 非従来型超伝導は、電子のペアを作るための糊の違いから、水銀のような転移温度の低い従来型の超伝導よりも高い転移温度を持ちうると考えられています。 2008年には新しい非従来型超伝導体である「鉄系超伝導体」が発見されました。
当研究室では、非従来型超伝導体の超伝導が発現する起源について研究を行っています。 我々の大きな目標は、非従来型超伝導体の超伝導発現機構を理解し、より高い転移温度を持つ超伝導体を理論的に予言することにあります。 そのために、様々な超伝導物質の電子状態の研究を行い、一つ一つの物質の特徴を把握する研究を行います。 現在では主に鉄系超伝導体に焦点を当てており、超伝導転移温度と結晶構造、そして電子状態の関係について様々な計算から考察を行っています。
熱電効果は熱と電気の相互変換現象を表し、ゼーベック効果、ペルチェ効果、トムソン効果の3つを指します。 ゼーベック効果とは、物体の片側を温めるなどして温度差をつけると、その温度差に比例した電圧が生じる現象です。 ペルチェ効果とは、物体に電流を流すとその電流の大きさに比例して吸熱、発熱が生じる現象です。 ゼーベック効果により温度差によって発電ができることから、体温と部屋の温度の温度差でも発電することが可能となります。 温度差発電により動くスマートウォッチも発売されており、ゼーベック効果は省エネルギーの観点から注目を集めています。 また、ペルチェ効果は電流を流すことで物体を冷やすことができるため、静音冷蔵庫(ペルチェ式冷蔵庫)として実用化されています。 熱電効果の各効果は関連性があるのですが、当研究室ではゼーベック効果に対しての理論研究を行っています。
ゼーベック効果にとって重要な要素として、ゼーベック係数、電気伝導率、熱伝導率があります。 ゼーベック係数は電圧と温度差の間の比例係数で、同じ温度差をかけた場合、この係数が大きいほど大きな電圧がかかります。 同じ電圧がかかった状態では、大きな電流が流れるほど大きな電力が得られますので、電流の流れやすさである電気伝導率は性能に大きく関わります。 また、温度差をかけても熱が移動してしまうと温度差が消えてしまうので、温度差をかけつづけやすいよう熱の伝わりやすさを表す熱伝導率が小さい必要があります。 これら3つの要素が絡み合うため、性能を高めることは大変難しい状況になっています。 例えば、ゼーベック係数が大きい場合は電気伝導率が小さくなってしまう、電気伝導率が大きい場合は熱伝導率も大きくなりやすい(ヴィーデマン・フランツ則)、などが存在します。
我々の大きな目標は、ゼーベック係数、電気伝導率、熱伝導率という3つの物理量によって決まる熱電効果の性能指数を、できるだけ最適化するような条件を探索することです。 その最適化条件を理解することができれば、それを利用して新しい高性能物質を提案することが可能となります。 現在は電子状態に着目し、ゼーベック係数、電気伝導率に主眼を置いています。 電子の輸送を理解するために、様々な物質の「エネルギーバンド」を計算し、理想的な電子の状態を探索しています。
2025年度
KKR-CPA法による高エントロピー熱電物質の構成元素選択性に関する研究
超伝導体MSi₂のSi面のバックリングに関する研究
pn共存型材料の熱電性能の研究
2024年度
第一原理計算による高エントロピー熱電物質に関する研究
pn共存型材料の熱電性能の研究
2023年度
第一原理計算によるトポロジカル絶縁体に関する研究
pn共存型材料の熱電性能の研究
2022年度
pn共存型材料の熱電性能の研究
CoO2層を持つ熱電材料に関する理論的研究
2021年度
pn共存型材料の熱電性能の研究
第一原理計算によるコバルタイト型化合物の熱電性能の研究
BiS2系超伝導体の結晶構造と電子状態の関係
2020年度
第⼀原理計算によるA2Zn3As2O2(A=Sr, Ba)の熱電性能の研究
MgAgSb系化合物における電⼒因⼦の第⼀原理計算による解析
第⼀原理計算を⽤いた122系ジントル相化合物SrZn2As2の熱電性能の解析
電⼦ドープ系鉄系超伝導体のバンド構造の解析
2019年度
第一原理バンド計算による鉄系超伝導体LaFe2As2のLaサイト置換効果の解析
熱電物質に対するスピン軌道相互作用とバンド構造の関係
高移動度物質PtCoO2の元素置換による熱電性能向上の可能性